おやすみマイ・ファミリー「おっと」
部屋に入ると、足元に僅かな温もり。胸につけた笛が体と当たる音を立てることさえ申し訳なくて、揺れないように紐を握る。
躓かないように踏ん張れば、そこにいたのは八男のアガレスだった。
言わずもがな、床の上なのだが、毛布にくるまってすぴすぴと寝息を立てている。
「どこでも寝るんだからな…」
小さくため息をついてから、ふと思う。
(毛布?)
アガレスの体にかかった柔らかな布。じっと見ていると、もぞ、と動いた。
「だ」
「アロケル」
毛布からたてがみが産まれた───というのは比喩で。
毛布の中に埋もれていたらしい末弟のアロケルが顔をひょっこりのぞかせる。
「暑かったろ」
「うー」
抱きかかえてやると、少しだけ汗をかいていた。ただでさえ赤ん坊の体温は高いのに、毛布の中にいては、否が応でもそうなるだろう。
1987