誰よりも賢く、誰よりも───「あかんかったな」
「なぁ」
ボクの返事に、相方────カースケは羽根を震わせる。
秋の夜。天気予報いわく、11月上旬にしては暖かいらしい風が、羽毛に刺さる。すっかり陽が沈むのが早くなった街角には、ちらちらと街灯が揺れる。ボクらは同居するアパートへ続く道を歩いていた。
「今年も3回戦落ちや」
「な」
「数字つかんとこ行きたい」
「な」
ボクはたった一音で返し続ける。漫才の頂上を決めるその大会。優勝者、或いは功績を残した者には人生の転機が訪れるというその大会。
ボクらは、今日、今年分のその階段を切り落とされた。
カースケは天を仰ぐ。ボクもその雰囲気を感じ取って、ちら、と上空を見た。すっかり暗くなった夜空にはビリビリウオの放つ光がちりちりと揺れている。
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