だから先に言え この不可思議に溢れた魔法の城にやってきてはや数か月のある日。スリザリンのテーブルを通りすがったフィンは、とあるものに目を引かれついつい足を止めた。
茶と白に塗り分けられた升目とその上に並べられた特徴的な形の駒。それを挟んでレオとヴィジャイが向かい合っている。だが、二人とも手ではそれぞれ別な事をしている様だ。そして時折盤に目を向けたかと思うと、
「ポーンをCの4へ」
と口で言う。すると、一体全体どういう仕組みなのか。駒がひとりでに動きだし、その指示に従っているではないか。
「……なにそれ?」
ついつい疑問が口から零れ落ちる。すると手元のレポートから顔を上げ、ヴィジャイが答えた。
「魔法界のチェスを見るのは初めてですか? ルークをAの6へ」
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