その魔法は、砂糖とスパイスと甘やかしからできている体重計を前にして、憂鬱にならなかったことがない。さすがに女子中学生ほど神経質とはいかなくても、自分の重さはそれなりに気になるものなのだ。
なかでも今夜の測定結果は、これまで以上に私の心に重く衝撃を与えたのだった。
「……太った」
誰にともなく呟いてみる。私以外だれもいない脱衣場で、その言葉は自分の耳に戻って来ただけだった。
私が打ちひしがれていた時に、とつぜん脱衣所の扉が開かれた。そちらを向くと、廊下には同居人が立っていた。
「オメー、いつまで風呂に入って……どうしたんだゾ、子分?」
「グリム」
同居人は青く丸い瞳で不思議そうにこちらを見ている。一緒に住んでいるのは学園時代からの相棒・グリムだ。私があまりに長く風呂場を使っているので、文句を言いに来たらしい。
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