chanuitei
DONE2022.1.15#墓囚版深夜の60分一本勝負
お題
甘いをお借りしました。
遅刻参加失礼しました💦
甘い深夜の珈琲は生存確認
お湯を沸かして珈琲をいれる。ルカが部屋にこもって出てこない時の決まり事だ。
僕は紅茶が好きだ。スプーン1杯の砂糖とミルクをたっぷりと入れる。
ルカは珈琲が好きだ。
砂糖もミルクも入れない熱い珈琲を啜る姿を見つめる。苦いお湯を飲んでいるというのに、ルカは美味しそうにほうっと息を吐いた。
僕はこの時間がとても好きだ。ルカの綺麗な横顔を見ながらぼんやりと思う。
ダークグレーの瞳。機械弄りに没頭しいる時はいつも垂れている目尻がキリリと吊り上がっている。
過集中がぷっつりと切れた時に、僕の存在に気が付いた時の申し訳なさそうに下がる眉尻。
「アンドルー。来てくれていたのか。すまない」
耳を優しく撫でるような僕よりも少し低い声。
773お湯を沸かして珈琲をいれる。ルカが部屋にこもって出てこない時の決まり事だ。
僕は紅茶が好きだ。スプーン1杯の砂糖とミルクをたっぷりと入れる。
ルカは珈琲が好きだ。
砂糖もミルクも入れない熱い珈琲を啜る姿を見つめる。苦いお湯を飲んでいるというのに、ルカは美味しそうにほうっと息を吐いた。
僕はこの時間がとても好きだ。ルカの綺麗な横顔を見ながらぼんやりと思う。
ダークグレーの瞳。機械弄りに没頭しいる時はいつも垂れている目尻がキリリと吊り上がっている。
過集中がぷっつりと切れた時に、僕の存在に気が付いた時の申し訳なさそうに下がる眉尻。
「アンドルー。来てくれていたのか。すまない」
耳を優しく撫でるような僕よりも少し低い声。
chanuitei
DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負2021.12.18
お題『横顔』
お借りしました。
荘園を出たあとのお話
横顔あれから、もう何度季節を見送っただろうか。
荘園でのゲームをクリアして、各々が自ら望む場所へと帰っていった。荘園で出会った一部の人間とはたまに手紙のやり取りをしている。中でも、ビクター・グランツとはよく連絡をとっている。手紙の内容は代わり映えのない近況報告。それでも、友人と呼べる人間なんていなかった僕からしたら、とても価値のあるものだ。
荘園でのゲームはクソッタレな内容だったが、大金以外にも僕に沢山のものを与えてくれた。
一つ目は他人との関わり方……いや、この言い方だとビクターに怒らてしまいそうだから
、友人、と言い変えよう。
ゲームは他サバイバーと協力、意思の疎通ができないと勝てない。これが僕にはとても難しかった。化け物の僕となんて、誰も話したがらない。ましてや、協力なんて無理な事だ。そんな僕に荘園のメンバーは根気よく付き合ってくれた。中でも、同じ頃に荘園に来たビクター、ルカは僕に寄り添ってくれた。ルカとは言い合いにもなった。ルカは柔らかそうな顔の裏でとても頑固で自分の意思を曲げない。一度火がつくと感情を面に出すくせに、ほとぼりが冷めると言い過ぎたとしょぼくれる。そんな僕達をビクターは呆れることなく、見守ってくれていた。
1413荘園でのゲームをクリアして、各々が自ら望む場所へと帰っていった。荘園で出会った一部の人間とはたまに手紙のやり取りをしている。中でも、ビクター・グランツとはよく連絡をとっている。手紙の内容は代わり映えのない近況報告。それでも、友人と呼べる人間なんていなかった僕からしたら、とても価値のあるものだ。
荘園でのゲームはクソッタレな内容だったが、大金以外にも僕に沢山のものを与えてくれた。
一つ目は他人との関わり方……いや、この言い方だとビクターに怒らてしまいそうだから
、友人、と言い変えよう。
ゲームは他サバイバーと協力、意思の疎通ができないと勝てない。これが僕にはとても難しかった。化け物の僕となんて、誰も話したがらない。ましてや、協力なんて無理な事だ。そんな僕に荘園のメンバーは根気よく付き合ってくれた。中でも、同じ頃に荘園に来たビクター、ルカは僕に寄り添ってくれた。ルカとは言い合いにもなった。ルカは柔らかそうな顔の裏でとても頑固で自分の意思を曲げない。一度火がつくと感情を面に出すくせに、ほとぼりが冷めると言い過ぎたとしょぼくれる。そんな僕達をビクターは呆れることなく、見守ってくれていた。
chanuitei
DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負2021.10.02
お題『読書』『重み』お借りしました。
私を呼ぶ声波間をたゆたう意識が、ぎい、ぎい、と音を立てて引き戻されていく。
呼吸をひとつする度に、指先に感覚が宿る。
どこかで雨の音がする。そして、火の爆ぜる音。
ぎい、ぎい、ぎい……
気づけば、私はロッキングチェアーに揺られていた。傍らには暖炉があり、薪がバチバチと音を立てながら火を踊らせている。
夢うつつで聞いた音はこの音だったらしい。室内は薄暗く、暖炉の灯り以外、頼れるものは無かった。
視線の先には窓があるが、木が打ち付けてあって何の灯りも見えない。ただ、雨が窓を叩くその音だけが聞こえてくる。
まるで、この部屋全体が暗闇に飲まれているようだ。
「やっと起きたのか」
声のした方に視線を下げると、声の主は傍らにしゃがみこみ、赤い瞳でこちらを見上げていた。
1397呼吸をひとつする度に、指先に感覚が宿る。
どこかで雨の音がする。そして、火の爆ぜる音。
ぎい、ぎい、ぎい……
気づけば、私はロッキングチェアーに揺られていた。傍らには暖炉があり、薪がバチバチと音を立てながら火を踊らせている。
夢うつつで聞いた音はこの音だったらしい。室内は薄暗く、暖炉の灯り以外、頼れるものは無かった。
視線の先には窓があるが、木が打ち付けてあって何の灯りも見えない。ただ、雨が窓を叩くその音だけが聞こえてくる。
まるで、この部屋全体が暗闇に飲まれているようだ。
「やっと起きたのか」
声のした方に視線を下げると、声の主は傍らにしゃがみこみ、赤い瞳でこちらを見上げていた。
chanuitei
DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負2021.09.11
お題「鮮やか」お借りしました。
花ざかりアンドルー・クレスのとある日の日記
++
荘園には鮮やかな花が咲いている。庭師の女……エマ・ウッズが手入れをして花を咲かせているらしい。風に乗って香る花の匂いを肺いっぱいに吸い込むと、心に暖かいものが灯る。
花は、好きだ。晴れた日の庭に出て、花を愛でたいが太陽は僕の肌を焼き尽くそうとしてくるので、それは叶わない。
若葉が育ち、蕾ができて、いのちにみちあふれていま開こうとするその瞬間をできるのであれば、僕は沢山見てみたい。青く澄んだ空の下で太陽の下でキラキラと光る色とりどりの花達。その花の周りを飛ぶ蜜蜂。花咲くことは命の誕生だ。その光り輝く命の中に僕はいられない事が凄く寂しくて、そして羨ましかった。
この荘園に来てからも、僕は隠遁とした生活を送っている。共に戦うサバイバーとは、ゲームをする上での最低限のコミュニケーションをするだけ。一部の奴等は、僕がテーブルに俯いて誰とも目を合わさないようにしているのに、そんなのお構い無しに話しかけくる。そいつらには真っ白で化け物と罵られてきたこの見た目が、普通の人間に見えているらしい。変な奴らだ。
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荘園には鮮やかな花が咲いている。庭師の女……エマ・ウッズが手入れをして花を咲かせているらしい。風に乗って香る花の匂いを肺いっぱいに吸い込むと、心に暖かいものが灯る。
花は、好きだ。晴れた日の庭に出て、花を愛でたいが太陽は僕の肌を焼き尽くそうとしてくるので、それは叶わない。
若葉が育ち、蕾ができて、いのちにみちあふれていま開こうとするその瞬間をできるのであれば、僕は沢山見てみたい。青く澄んだ空の下で太陽の下でキラキラと光る色とりどりの花達。その花の周りを飛ぶ蜜蜂。花咲くことは命の誕生だ。その光り輝く命の中に僕はいられない事が凄く寂しくて、そして羨ましかった。
この荘園に来てからも、僕は隠遁とした生活を送っている。共に戦うサバイバーとは、ゲームをする上での最低限のコミュニケーションをするだけ。一部の奴等は、僕がテーブルに俯いて誰とも目を合わさないようにしているのに、そんなのお構い無しに話しかけくる。そいつらには真っ白で化け物と罵られてきたこの見た目が、普通の人間に見えているらしい。変な奴らだ。
chanuitei
DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負2021.09.04
お題「青空」お借りしました。
荘園を出て、一緒に暮らす二人
晴れたら青い空が少しずつオレンジに傾く。それが混ざり合い、街を深い闇に沈めていく。
僕は一日の中でその時間が一番好きだった。
太陽の日差しは僕の肌と目を焼き、「お前は日陰の存在なのだ」と指を指す。だから、太陽が死ぬ夜が好きだ。
そう思っていたのに、いつからか、太陽は僕に指を指すどころか、日差しの下に連れ出すようになった。
「アンドルー!明日、晴れたら海に行かないか?」
ルカを見ていると、眩しくて目はチカチカと点滅するし、彼の視線は僕の肌をカッと赤く染めるからルカは僕にとって太陽と同じだ。
そして、荘園でルカと出会ってから、一番好きだった太陽の死ぬ時間……夕暮れが怖く感じるようになった。
ルカは、事故の後遺症の頭痛に苦しんでいる。発作が起こると、いつもは眩い瞳からは輝きが消え、ドロドロとしたものが体から染み出す。その染みが地を這って僕の心を暗闇へと引き摺り込む。
1189僕は一日の中でその時間が一番好きだった。
太陽の日差しは僕の肌と目を焼き、「お前は日陰の存在なのだ」と指を指す。だから、太陽が死ぬ夜が好きだ。
そう思っていたのに、いつからか、太陽は僕に指を指すどころか、日差しの下に連れ出すようになった。
「アンドルー!明日、晴れたら海に行かないか?」
ルカを見ていると、眩しくて目はチカチカと点滅するし、彼の視線は僕の肌をカッと赤く染めるからルカは僕にとって太陽と同じだ。
そして、荘園でルカと出会ってから、一番好きだった太陽の死ぬ時間……夕暮れが怖く感じるようになった。
ルカは、事故の後遺症の頭痛に苦しんでいる。発作が起こると、いつもは眩い瞳からは輝きが消え、ドロドロとしたものが体から染み出す。その染みが地を這って僕の心を暗闇へと引き摺り込む。
chanuitei
DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負第47回 お題『望遠鏡』お借りしました
telescope「今夜二人で星を見ないかい?」
ルカのその誘いにアンドルーは二つ返事で頷いた。
約束の時間、待ち合わせの庭へ行くと白くて長い筒を覗き込むルカの姿がある。
「なんだそれ」
「ああ、ちょうどいいところに来たね」
白い息を吐きながらこちらを振り返る。焦げ茶色のしっぽのような髪が揺れた。
「覗いてごらん」
上を見上げれば満天の星空があるというのに、筒を覗けとはどういう事なのか。頭の良い奴の考える事は僕にはわからない。
言われるがままに筒を覗き込むがぼんやりとしてよく分からない。
「ああ、違う違う。片目で見るんだ」
ルカは僕の背後に回って、筒を握る僕の手に手を重ねてこうやるんだと教えてくれた。
近い距離に跳ねる心臓の音が聞こえませんようにと祈りながら、言われた通りに筒を覗く。
940ルカのその誘いにアンドルーは二つ返事で頷いた。
約束の時間、待ち合わせの庭へ行くと白くて長い筒を覗き込むルカの姿がある。
「なんだそれ」
「ああ、ちょうどいいところに来たね」
白い息を吐きながらこちらを振り返る。焦げ茶色のしっぽのような髪が揺れた。
「覗いてごらん」
上を見上げれば満天の星空があるというのに、筒を覗けとはどういう事なのか。頭の良い奴の考える事は僕にはわからない。
言われるがままに筒を覗き込むがぼんやりとしてよく分からない。
「ああ、違う違う。片目で見るんだ」
ルカは僕の背後に回って、筒を握る僕の手に手を重ねてこうやるんだと教えてくれた。
近い距離に跳ねる心臓の音が聞こえませんようにと祈りながら、言われた通りに筒を覗く。
chanuitei
DONE20210807#墓囚版深夜の60分一本勝負
お題
声 誤解
7-38-55目を開けると、白い天井と真っ白い人物が見えた。
頭がぼうっとして、現状が把握出来ない。私はいつ眠ったのだろうか。
だんだんと視界がクリアになってきて、私の顔を覗き込んでいるアンドルーだとハッキリと認識できた。
「ルカ。具合はどうだ?」
じっとアンドルーの目を見つめていたら、彼は眉間に皺を寄せて、目をそらす様に俯いた。
「まだ寝起きで頭がぼうっとするが、特に問題はなさそうだよ」
手を布団の中から出して、握って開いたり、足も動かしてみたがどこも痛みは無い。
「あんた、なんでここにいるのかわかっているか?」
「いや……それが全く思い出せない」
「3日も部屋から出てこないから心配で部屋のドアを開けたら、倒れていたんだぞ」
1290頭がぼうっとして、現状が把握出来ない。私はいつ眠ったのだろうか。
だんだんと視界がクリアになってきて、私の顔を覗き込んでいるアンドルーだとハッキリと認識できた。
「ルカ。具合はどうだ?」
じっとアンドルーの目を見つめていたら、彼は眉間に皺を寄せて、目をそらす様に俯いた。
「まだ寝起きで頭がぼうっとするが、特に問題はなさそうだよ」
手を布団の中から出して、握って開いたり、足も動かしてみたがどこも痛みは無い。
「あんた、なんでここにいるのかわかっているか?」
「いや……それが全く思い出せない」
「3日も部屋から出てこないから心配で部屋のドアを開けたら、倒れていたんだぞ」