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    李丘@練習中

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    李丘@練習中

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    隼竜。教会の絵文字をいただいて考えついたもの(ありがとうございます!)。
    その後のふたり。
    20240611

    【11】めまい触れたと思ったら、そのままするりと絡んでくる指に、ずっと慣れない。
    人が見ていないと分かる場だけだが、隼人が自分と二人のときに手を伸ばしてくる回数は、確実に増えた。
    それがタワーのなかであっても。
    東のデッキでこっそり休んでいるときや。
    コーヒーのサーバーを置いている小さな部屋や。
    人の気配がないとわかると、何気ない感じで伸ばしてきて俺の指に触れる。
    指先だけ引っ掛けてみたり、しっかりと握ってみたり、それは嬉しくはあるけれど、やっぱり恥ずかしい気持ちのほうが強かった。
    「そういうのは、部屋でやれよ」
    何度かそう言ったけど、
    「別にいいだろう」
    とまったく気にせず隼人は俺の指を弄ぶ。
    ……いいけどよ。
    ほどけないのは、「やめろ」と言えないのは、俺もその熱を感じたいからで、こういうことが出来るようになったのが今の現実なのか、と考える。
    万が一、誰かに見られたとしても、たぶん目を逸らされてそのままの気がする。
    もちろん仲を見せびらかすようなことはしない。それは弁慶からも釘を刺されていて、タワーに不要な空気を自分たちが作るわけには絶対にいかない。
    ただ、俺たちがそういう関係なのだとみんなが知ってから、明らかに受け入れてもらえていると感じることは増えて、俺と隼人が司令室で憎まれ口の応酬なんかをやってると笑う所員も出てきた。
    堂々と二人一緒に引き上げるのが普通になって、二人で一緒にどちらかの部屋に入るのを見られても平気だし、ヤマザキは週末朝の隼人への報告をやめた。
    これが「公認」というのなら、それはありがたいことなのだと、素直に思う。
    その変化が、隼人に外でのスキンシップを思いつかせたのかもしれないが、いたずらに渡される熱に落ち着かないのも本当で、隼人が触れてくるたびに少し困る。
    どくどくと、小さな鼓動が全身を回る。
    こちらを見る目は、今まで部屋のなかで二人きりのときしか解放しなかった優しい色があって、唇はうっすらと笑みの形を作るし、表情はやわらかい。
    そんな顔を外でするのかと、向けられている自分を意識して心が揺れる。
    困るだろ。
    俺はどう応えればいいんだ。
    絡んでくる指を、弄ばれる自分の指を、いつも呆けたように見つめるばかりで。
    胸に溜まる熱を持て余す俺は。
    「竜馬」
    そんな声で呼ぶな。
    どくどくと、小さな鼓動が全身を回る。
    初めて知るお前のそんな姿が、少しだけ困惑を連れてくる。

    胸に溜まる熱は。
    ゆっくりと痛みに変わる。


    「何か元気ない?」
    食堂でぼうっと座っていたら、ゴウたちと一緒に出ていったはずの渓がそばに立っていた。
    「……」
    その顔を見上げて、返事ができずにいる竜馬に向かって、
    「平和ボケみたいな?」
    と、渓が明るい声で続ける。
    「ボケ・・・・・」
    何だそりゃ、とやっと反応することができて、竜馬は渓を睨んだ。
    「何でもねぇよ」
    そう言うと、渓は隣の椅子に腰を下ろして「そう?」と返した。
    「何でここに居るんだよ」
    水の入ったカップに手を伸ばしながら竜馬が言うと、
    「んー、何か気になっちゃった。
    さっきの竜馬さん、変だったし」
    と、渓はちらっと視線を流して答えた。
    神司令はもう行ったんだね、と独り言のように続ける。
    「……」
    女の勘か。
    女は注目するところが違うんだろうな、と以前の弁慶の言葉が蘇る。
    さり気なくよけたつもりだったんだがな。
    「神司令の隣が嫌なの?」
    ストレートに訊いてくるあたりが、渓だなと思う。
    「そうじゃねぇけどよ」
    答えてから水を飲み、息を吐いてカップをテーブルに戻した。
    「あんまり近いのは、好きじゃなくてな」
    そう言ってから、みんなが当然のように隼人と並んだ席を用意してくれている事実を思い出し、胸がちくりとした。
    「あー、竜馬さんはそういうタイプかも」
    渓がふふっと笑う。
    「……」
    「神司令のほうがくっついてるもんね」と続けるのを聞いて、やっぱりそう見えるのかと改めて渓に目をやった。
    こちらを見る竜馬に、
    「さっきもさ、竜馬さんが腕が当たらないようにって引いてるのを、神司令は平気で近付いていってたもんね。
    仲いいなって思ったけど、竜馬さんは避けてたから」
    と、向かい合わせの席で食べていた渓は思い出したように言った。
    「節度」
    「え?」
    「人前で見せるようなもんじゃねぇだろ」
    仲のよさなんてよ、と小さな声で呟く。
    「確かに……」
    そんな竜馬に首を傾げて、渓は
    「私も、前はゴウがいつもくっついてくるからイヤだったな」
    と言った。
    そうだったな、と常に渓の背後に立とうとしていたゴウの姿を思い出す。
    「お前しか見えてねぇって感じだったもんな、あいつは」
    「そうなのよ。親父にも注意してって言ったんだけどさ、ボディーガードさせとけって、相手にしてくれなかったんだよ。
    私が女だからゴウがいたほうが安心って親父は思ったのかもしれないけど、息苦しいじゃない」
    「ああ」
    分かる。
    嬉しい気持ちはもちろんあるが、常に関心を向けられるのは、居心地が悪いときもある。
    「プレッシャーでさ。
    ゴウに、私を自由にしてって言っちゃったの」
    「なに」
    女にそれを言われたのか。ゴウよ。
    目を見開く竜馬の反応を面白そうな表情で見て、「でもね」と渓は続ける。
    「それでゴウが変わったの、私が嬉しくないって気がついたみたいで。
    私たち、別に付き合ってもないんだけどね、みんながいるときはちゃんとするって、考えてくれたみたいで」
    あれが少しずつ大人しくなっていったのはこの目で見ているが、距離を取るようになっても向ける気持ちはまったく減っていないだろうことは、渓に何かあったときに真っ先に手を出す様子でわかる。
    「……」
    「言わないと分からないよね、結局」
    渓が上を向いて言った。
    「……そうだな」
    同じように視線を上げて竜馬が呟く。
    「だからさ。
    竜馬さんも話してみたら?
    ベタベタするなって」
    神司令、浮かれてるもんねと続けて、渓が立ち上がった。
    「……」
    そのまま手を振って去っていく渓を見送って、竜馬はもう一度ため息をついた。
    浮かれてる、か。
    およそ隼人にあてられる言葉からは遠いが、こちらに手を伸ばすときの顔を思い出すと、そうなのだろうなと竜馬は思った。
    気安く隣に立てる関係になれた。
    以前は、渓と竜馬の物理的な距離が近いことを気にしていたが、今は自分が堂々とそれより深い親密度を手に入れた。
    俺の指に触れてくるのも。
    あんな顔で俺を見るのも。
    俺の名前を呼ぶのも。
    隠さなくてもいい、となった現実が隼人にとってどれほど幸せなことなのか、分かる。
    それは俺も同じだけどよ。
    空のカップをゴミ箱に放ると、竜馬は立ち上がった。
    「触るな、とは言えねぇが」
    いたずらに熱を与えるな。
    優しい力で締めてくるその指先を思い出す。
    どくどくと、小さな鼓動が全身を回る。
    お前が俺の胸に溜める熱は。
    そのうち痛みに変わるんだ。


    竜馬が外で触られるのを嫌がっているのは感じていたが、それでも手を伸ばすのをやめられないのは、自分の独占欲なのだと隼人は思っている。
    ずっと、独り占めしたいと思っていた。
    こうなる前は、自分より笑顔を向けられる弁慶たちに嫉妬した。
    俺とはまともに会話もしないのに、ほかの誰かと軽口を叩いて笑い合う竜馬を見るのが嫌だった。
    渓と顔を突き合わせて話している姿なんかが不意に目に飛び込んでくると、重苦しい鉛が胸に落ちてくるようで目を逸らした。
    ずっと堪えて、我慢して。
    好きだったから。
    これでいいと、みんなと親しくなれる竜馬でいいと、頭では分かっていても感情はそこまで素直に納得しない。
    「神司令」でいることが絶対に必要な場で、常にみんなを守るのが当たり前の立場で、己の気持ちを外に出すことなど出来なくて、湧いてくる激情を捨てることが当然になっていた。
    だから、竜馬が自分を求めてくれるようになって、めまいがするようなその幸せに心がついていけなくて、目を閉じて逃げて、それでも最後は先に「好きだ」と口にしたのは自分の側だった。
    抑圧されてきた思いは恋人となってからも深く大きく育つ一方で、それがある意味で頂点を迎えたのが、渓に知られている事実を聞いたときだと思っている。
    あのとき、迷いなくこの関係をみんなに打ち明ける選択をしたのは、結ばれたのに今度はそれを隠し通さないといけない現実が大きなストレスになっていたからだ。
    もういいだろう。
    それは己に向けた諦めだった。
    「神司令」の、常にみんなの中心であれとする重圧の、孤独の、竜馬すら弾き出さないといけないプレッシャーの大きさを、いい加減持て余していた。
    二人の関係をみんなに話したのは、この生きるか死ぬかの現実が続くなかで、たった一つ、自分に許したかったからだ。
    人を愛することを。

    俺たちの関係は恥ではない。
    それを誰よりも動かさなかったのは竜馬で、自分の選択を二人で一緒にと受け入れるその姿を見て、独占欲は完成した。

    めまいがするようなその醜さを、自分が一番よく理解している。
    嫌がると分かっていて手を伸ばす己の卑しさを、実感しながら乗り越えようと思わないのは、触れられて動揺する竜馬の姿に自分への愛情を感じるからだ。
    こうなって尚、その胸にある自分への光を求めてしまう。
    きらきらと降ってくるその瞬きを、まだ浴びたいと。
    無理をすることを諦めてしまえば、もう隠さなくていい現実に身を置けば、その幸せに狂うのはやはり俺のほうなのだと、昼間の食堂で自分の手をよけた竜馬を思い出しながら、隼人は考えていた。


    「なあ」
    部屋に持ち帰った書類仕事を終わらせて、ソファに戻ってきた隼人にコーヒーを差し出しながら、竜馬が口を開いた。
    「ん?」
    カップを受け取って隼人が声を返すと、呼んだはずなのに少しの沈黙を持ってから、竜馬が言った。
    「外で俺の手とか触るの、やめねぇか」
    喉を通る苦い液体が一瞬絡みつくのを、隼人は感じた。
    「……」
    ゆっくりと、慎重に、カップをテーブルに戻す。
    「誤解するなよ、お前に触られるのがイヤってわけじゃねぇんだ。ただ、落ち着かねぇからよ」
    竜馬は淡々と続けた。
    昼間に渓と話してから、やっぱり言わないとダメだと、気持ちを整えていた。
    「そうか」
    いつか、正面からこう言われるだろうと、分かっていた。
    我慢するような性格じゃないと、知っているから。
    「悪かったな」
    用意していた自分を表に出して、隼人は素直に謝った。
    「……」
    聞いてくれるだろうとは思っていたが、いざ謝罪が来ると次に何を言えばいいか分からなくて、竜馬は黙る。
    隼人の目はテーブルに置かれたカップに向かっていて、いつものように冷静で端的で、やめろと言われた悲しみや怒りは見えない。
    「……二人でいるときなら、いいんだけどよ」
    俺に触りたいと思う隼人を否定するつもりはない。それだけは言わないといけない。
    「ああ」
    落ち着いた声で隼人が答える。
    すまなかったな、ともう一度繰り返した。
    その様子を見て、竜馬は違和感を覚えた。
    「……」
    その素直さは、何だ。
    外で俺がやめろと言っても手を引かないのに、どうして二人きりの今は大人しく聞けるんだ。
    じり、と嫌な煙が心の隅に生まれる。
    「外でああだと、どうすればいいか分からねぇ」
    ぽつんと出た本音は、隼人次第で不意に与えられる熱に戸惑う自分の気持ちだった。
    「……」
    視線を動かさず、隼人は黙っていた。
    「おい」
    こちらを見ない隼人に声色を変えて話しかけると、突然腕が伸びた。
    自分の左手を掴むその力は、見せていた表情と正反対の激しさがあった。
    「おい……」
    「仕方ないだろう」
    被せるようにそう言って、こちらに顔を振り上げた隼人の目は、暗い色をしていた。
    竜馬の息が詰まる。
    隼人。
    竜馬の手をぎゅうと握って、隼人が低い声で言った。
    「ずっと、耐えてたからな」
    そこじゃねぇよ。
    そうじゃないだろう、と竜馬の頭をよぎったのは、隼人が「みんなに話すか」と言ったあのときの顔で、そこには希望があったはずだ。
    望むその現実が手に入っても、自分たちは今までと変わらずここでやっていけるだろうと。
    「俺もそうだけどよ」
    掴まれる左手の痛みを堪えながら、竜馬は今の隼人が不安定になっている理由を考える。
    「変えちゃいけねぇとこもあるだろ。
    人に見られていいなんてことはねぇだろ。
    節度を持てって、弁慶が言っただろ。
    どうしたんだ、お前」
    そう言ってから、吐いた自分の言葉に齟齬があることに気がつく。
    違う。
    俺が言いたいのは。
    「自分の恋人の手を握って何が悪いんだ」
    隼人の息が荒くなっている。
    その瞳の光が曖昧にぶれるのが見える。
    「テメェの勝手な理屈を押し付けてんじゃねぇよ」
    竜馬の語気もつられるように強くなる。
    違う。
    俺が言いたいのは。
    隼人の手から伝わる熱が、心まで伸びてくる。
    どくどくと、小さな鼓動が全身を回る。
    胸に溜まり続けた熱が、ゆっくりと痛みに変わる。
    隼人。
    「竜馬」
    隼人の声が切羽詰まったように前のめりになる。
    「俺は、お前のことが」
    「半端なことをするなって言ってんだ!」
    思わず大きな声が出たのは揺れそうな視界を抑えたいからで、一瞬気圧されたように息を呑んだ隼人の、右手の力が緩むのを、竜馬は感じた。
    「……」
    黙った隼人を睨みつけて、
    「ちらちら触ってきやがって、テメェ、俺がどんな気持ちになるか知らねぇだろ。
    俺だってな、好きなんだぞ。
    お前の気まぐれで放り出されるこっちの身にもなれってんだ」
    一気にそう言って、やっと竜馬は息を吐いた。
    言いたかったのは、知ってほしかったのは、与えられる熱が生むその欲だった。
    そんな触れ方をするから。
    優しくて、でも意思があって、お前が好きだと伝えてくるその動きが、どうしたって竜馬のなかに「もっと」の欲を育てる。
    いいだけ煽られて満たされないまま、くすぶった胸が痛みを抱えることが、竜馬は嫌だった。
    「竜馬」
    隼人の瞳から歪んだ光が消えて、いつもの色が戻ってくる。
    竜馬の気持ちなど、俺は考えていない。
    だって俺のものだから。
    いつだって。
    それは。
    「テメェの好きにしていいもんじゃねぇんだ」
    竜馬は。
    左手を握られたまま、竜馬の体が動いて隼人の顎を掴む。
    ああ。
    俺の。
    被さった唇の、勢いの激しさが、隼人の心にめまいがするような衝動を生む。
    竜馬。
    貪るように求めるのは互いの思いで、言葉はないのに息遣いでそれが分かって、気がつけば竜馬の左手は隼人の指がしっかりと絡みついていて、名前を呼ぶ隙間もないほど、唇は離れなかった。
    竜馬がもう片方の手で隼人の髪を掴む。
    もっと。
    もっと。
    耐えられなくなったのは隼人が先で、そのままソファに竜馬の体を倒しながら、「好きだ」と呟いた。
    いつだって、狂うのは俺のほうなんだ。
    竜馬の瞳にいつもの光が見える。
    お前が好きだと。
    「俺は」
    意図してそんな力をこめていたわけじゃないと、言えない。
    気づいていただろう。されるがままに指を預けながら、竜馬の瞳に欲情の色が滲むのを。
    それを堪えている姿に満足していた自分を。
    竜馬をこう出来るのは自分だけだという醜い独占欲を、俺を求めろと存在をねじ込む卑しさを、知っていたはずだ。
    そんな在り方が、竜馬を幸せにするはずがないのだ。

    「俺を、無視するな」
    掠れた声で竜馬が呟く。

    隼人を愛するからこそ、真っ当な二人でいたいのだと、だからみんなに話すことを決めたのだと、知っているのに。
    誰にも奪われない立場を得て、自分のものだという確信が深くなって、育ったのは抑圧の解放で、結局はこうやって愛する人を苦しめる己の弱さが出る。
    「すまない」
    最初に謝ったときとはまったく違う、強い響きで隼人が言った。
    求めたのはどこまでもその光なのだと、それを独り占めしたかったのだと、湧いてくる言い訳を飲み込んで竜馬を抱きしめる。
    「隼人」
    竜馬がその胸を押し返して見上げてくる。
    瞳に浮かぶはっきりとした欲望の証が、隼人の胸に爪を立てる。
    その欲を抑えていたのは、与えていた自分も同じだったと。
    「責任を取れよ」
    溜めてきた熱を。
    その手を避けるしかなかった痛みを。
    「俺のものなんだろ」
    お前は。
    隼人が黙ってその口を塞ぐ。
    一緒に落ちていく。
    闇も、熱も。
    唇を合わせながら服を脱がせ合って、ベッドに移動する時間ももったいなくて、早くつながりたくて、言葉すら交わせない。
    指が裸の脇腹をなぞる。
    押し付けた隼人の唇が、竜馬の耳元から下りてくる。
    ぞくぞくと震えるような刺激で息が詰まる。そうなるのを分かっていて、鎖骨のくぼみから舌を這わせる。
    ああ。
    愛してる。
    もどかしそうにこちらの腹に伸びるその手を掴んで、隼人が言った。
    「止めないからな」
    それを見上げて、
    「頼んでねぇよ」
    と、竜馬がふてぶてしい声で返した。
    もっと。
    めまいがするようなその歓喜を。
    もっと。


    隼人の唇が、竜馬の左手にはまったリングに押し付けられる。
    自分の薬指にも同じものがはめられているそれに、いつも触れていたかった。
    新しい絆の証。
    完成したのに成就しない独占欲が、このちっぽけな輪に向けられていた。
    俺の元に竜馬を縛り付ける、誰にも侵せない愛。

    「隼人」
    名前を呼ぶ竜馬の声が高くなる。
    止めるなと、自分の腰を掴んでくる指の力が、隼人の心を痛みで灼く。
    お前は。
    俺の。
    「愛してる」
    何度でも繰り返す。
    狂ったままで、いつまでもその心を追いかけて、終わらない独占欲が抱えた足を支配する。


    めまいがする。
    二人で沈んでいく、底なしの思いの丈。


    -了-
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