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    李丘@練習中

    チェンゲの竜馬さんが大好き。隼竜/隼竜隼

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    李丘@練習中

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    続きじゃなくてこれだけ単発。チェンゲのふたり。結婚ネタ。
    フォロイーさんの「無意識に結婚を口走る限界司令と、しれっとOKする伝説さん」からの「ガーデンウェディング」「白タキシード」をどうしてもやりたかった。
    やりたかった・・・
    20240623

    そんなときに出るもの 忙しかったのだ。
     朝から原因不明のエラーでシステムに不具合が出るし、司令室のスタッフが風邪を引いて寝込んでるし、なぜかこんなときにコーヒーのサーバーも壊れるから、普段の息抜きまで奪われていた。
    「神司令、次は」
     声をかけてくるのは自分の優秀な秘書で、細かく言わなくてもこちらの思惑をすぐ読んで動いてくれるから助かるが、終了の報告を受け取る間もないほど次の指示を考えないといけないのは、ゲッター1の修理と渓の負傷が重なって人手が足りないからだった。
    「ゲッター1は」
    「大丈夫です、部品は足りてます」
     冷静に返す口調を聞いて「急がせろ」と答える。
     メインのマシンが動けない状況など、システムの不具合と並んでタワーにとって大きなダメージとなる。
     分かりました、とファイルを抱え直したヤマザキが、
    「それと」
     と控えめな声で言うので目を向けると、
    「ゴウが、医務室から出てこないそうです」
     と小声で言われてうんざりする。
    「放っておけ」
     竜馬がいるだろう、と続けて、頭はもうエラーのマークを表示している画面に向かう。
     忙しかったのだ。


    「馬鹿野郎、いい加減にしろ」
     と竜馬が怒鳴ったのは仁王立ちでそこを動かないゴウに対してで、
    「今はこっちも大事なんだよ。
    テメェも手伝え」
     と言うのにあっさり「嫌だ」と返されるから、思わず拳を握る。
     それを困った顔で見ている弁慶が、
    「ゴウ、ここに居てもお前に出来ることはないぞ」
     とベッドに横たわる渓に目をやって言う。
    「親父も竜馬さんも、いいからもう戻って」
     頭に包帯を巻いた渓が、ため息をつく。
    「私なら大丈夫だから」
     ごめんね、と何回目か分からない言葉を繰り返して、
    「この怪我は自分のせいだって思ってるんでしょ。
    言っとくけど、ただの私の不注意なんだからね」
     と、ぐっと唇を噛んでベッドの脇に立つゴウを睨んだ。
    「そんなことはない」
     ゲッター1の修理を手伝う渓が重たい部品を運んでいると気が付かず、急いで通り過ぎるスタッフとぶつかって倒れ頭を打ったことを、近くにいたゴウは「俺が見ていなかったから」と気に病んでいた。
     ゴウの頑なさを知っている渓に、
    「もう少し休んだら私も戻るから。
    そのときにゴウも連れていくね」
     と言われて、竜馬と弁慶は仕方なく医務室を出た。
     はー、と竜馬が息を吐く。
    「何かの病気じゃねぇのか、あれは」
     廊下を歩きながら、渓のことになると一切の思考が止まるゴウを指して言うと、
    「まあ、パニックになると本心が出たりするからな。
    周りのことなんてどうでもよくなるんだろ」
     あいつは渓を守っていたいんだ、と弁慶が肩をすくめて答える。
     ゲッター1の修理だけじゃない、ゲッター2もほかのマシンも、同じようなトラブルがないかチェックするよう隼人の指示が届いていて、タワー内は稀に見る慌ただしい状況だった。
     そんなときに。
    「さっさと済ませようぜ」
     と足を進める先から、メンテナンス中ののスタッフが図面を持って駆け寄ってくる。
     忙しかったのだ。


    「竜馬の馬鹿はどうしてる」
     持ってきたサンドイッチに礼を言いながら手を伸ばし、画面を見たまま隼人が言うのを
    「弁慶さんとゲッター1の修理にかかりきりのようですね」
     と答えて、手を止めて食べたらいいのに、とヤマザキは思っている。
    「まだ時間がかかりそうか」
    「山は超えたようです。渓ちゃんも戻りました」
     頭の怪我も大丈夫です、と付け加える。
     「そうか」と答えて、様子を見に行きたいがこいつがな、エラーのマークが消えない画面を叩く隼人に
    「少し休まれたらどうですか」
     と言うと、それに被せるようにモニターを見ていたスタッフから
    「神司令、こっちも表示がおかしくなっています」
     と慌てた声が飛んでくる。
     「分かった」とサンドイッチを皿に戻して隼人が立ち上がる。
     ああもう。
     ため息をついて、疲れが滲むように普段より曲がる上司の背中を見る。
     司令室は、まだ混乱が続いている。


    「隼人に来てもらうか」
     と、図面から顔を上げて弁慶が言うのを
    「いらねぇよ。
    あの馬鹿もまだあっちが大変だろ」
     竜馬はにべもなく切り捨てる。
     ゲッター1の修理は順調に終わりが見えてきて、セッティングを変更した箇所について隼人に見てもらいたいと、スタッフが言っている。
    「後でまとめて報告するから、こっちに書くだけ書いておけ」
     と図面を渡して、弁慶は「あっちはどうなってるんだ」とゲッター2に向かう竜馬に目をやる。
    「おい、飯は食ったのか」
     そう声をかけると、
    「そんな暇はねぇよ」
     とこちらも見ずに答えて、竜馬は作業を進めている渓の元に向かう。
     スタッフに指示を出してその後を追いながら、弁慶はこいつがこんなに必死になるのは、仲間がいるからなんだろうなと考えている。
     自己中心的な奴だと思われがちだが、俺よりも現場を俯瞰して見てないか、と感じるときがある。
     凱の腕を信じているから、ゲッター3のほうは気にしていない。
     渓の怪我を、自分のマシンのトラブルが招いたものだと思っているから、医務室までわざわざ様子を見に来るのだ。俺もゴウもいるのに。
    「少しは休めよ」
     と口から出るのは、だからこそお前も自分を大事にしろと、言いたいからだった。
     それに無言で手を挙げて応えて、竜馬はゴウと今の状況を確認している。
     その横顔に、疲弊の影が見える。


     体が猛烈にカフェインを求めているがそれを提供してくれるものがない、という事実に、隼人は絶望的な気分になる。
     システムは何とかコマンドを受け付けるようになって、正常な運行を取り戻しつつある。
     それでもネクタイを緩める指が重いのは、まだ自分の確認と決済待ちの用事が山積みだからで、一息つきたい気持ちが叶わない現実に、椅子に沈めた体がどろどろと疲れを溜めるのが分かる。
     隣に立つヤマザキが、「やっておきました」と渡してくれた書類をめくりながら、目が文字を追えていないことに気づく。
     コマンドの文面が意識から離れていない。
     ああ。
     休みたい。
     ゲッター1はどうなっているのかと、そのパイロットの顔がぼんやりと浮かぶ。


     渓の元気な様子に安心して、凱からゲッター3のチェックが終了した報告を受けて、竜馬はやっと空腹に気がつく。
     何も食ってねぇな。
     だから頭がぼうっとするのか。
     作業の指示を出すのはほとんどが弁慶で、自分はそれに従って動きながらほかのマシンも放っておけなくて、バタバタしているうちにいろんなタイミングを逃している。
     コーヒーを飲みたいが、あれも壊れてるって言ってたな。
     「どうなってんだ」と呟いたら、離れたところに立っていた弁慶が
    「何かあったのか」
     と訊いてくるから、飲みもんはねぇかと返そうとして、目がゲッター1の横で自分を呼ぶスタッフを捉える。
     「何でもねぇ」と弁慶に答えてゲッター1のほうに歩きながら、体を動かすのが億劫になっている自分に気がつく。
     さすがに、休まないとやばいかもな。
     司令室にこもりきりの仲間のことが、ちらりと頭をよぎる。


     タワー内のいろいろなところで起こっていたトラブルは、夕方になって解決と完了の声が集まってきて、ヤマザキはほっとしている。
     ろくに休憩も取らず目を通した書類をデスクに放った上司は、椅子で脱力したまま目頭を押さえている。
     早く終わって欲しいと思っていたら、かかってきた内線は弁慶からで、「隼人は動けそうか」と尋ねてくるのを
    「はい」
     と冷静に答えながら、ほんのわずか苛立ちが走るのを内心で堪える。
     仕方ない。マシンの管理もこの上司の仕事なのだ。
     どうか、いい報告であって。
     そちらに行きますと告げて受話器を戻し、上司に
    「マシンのチェックをお願いしたいと、弁慶さんから」
     と声をかけると、ああと低い声が返ってきて、ふらりと立ち上がる姿は限界を知らせるようだった。
     大丈夫ですかと尋ねるのも憚られて、「私も行きます」と一緒に司令室を出たら、ほかの数名もマシンが気になるのかついてきた。


    「おう、隼人」
     ボロボロだなお前、とつい続けたのは、ネクタイは歪んで髪も崩れていて、いつもの「神司令」とは思えない姿を目にしたからだった。
    「お前もだろう」
     と返されて、耳に鉛筆を挟んだままオイルで汚れた自分を見下ろす。
     皆そうだなと思いながら、隼人が来たことで集まってくるスタッフのなかに、竜馬の姿が見えないことに気がついた。
    「竜馬を知らねぇか」
     と渓に尋ねると、
    「あ、さっきあっちのほうで座ってるのを見たけど……」
     凱がゲッター1を指差す。
     竜馬、とゴウが大きな声で呼んだ。
     マシンの影から出てきた竜馬が、ゆっくりとこちらに向かってくる。



     忙しかったのだ。
     休んでないし、腹は減ってるし、目は対象がどんなものか思い出す力を失ってるし、人と会話をし過ぎてものを考える力は落ちていた。
     これが、ふたりの事情だった。
    「よう」
     そこにいるのが隼人だと、竜馬には分かっている。
    「ああ」
     自分に言葉をかけるのは竜馬で、疲れているのが伝わってくる。
    「終わったのか」
     張りのない声で尋ねてくる竜馬に、
    「何とかな。こっちはどうなんだ」
     と同じく響かない調子で隼人が返す。
    「こっちはお前次第だな」
     竜馬はふうとため息をついた。
     こいつら頑張ったんだ、図面を見てやってくれと言う弁慶に頷いて、隼人がスタッフから渡されたものを開く。
    「よくやった」
     竜馬にちらりと視線をやってから何の気なしにそう言うと、
    「うるせぇよ」
     俺じゃねぇと竜馬は横を向く。
    「疲れたな」
    「ああ」
    「コーヒーのサーバーは直ったのか」
    「俺が知るかよ」
    「休みたいな」
    「ああ」
    「結婚するか」
    「いいぜ」 
     大丈夫だろう、と図面を戻そうとして、先に我に返ったのは隼人だった。

    「……」

     ……何?

    「あ?」
     竜馬が気の抜けた声で隼人を見る。

     視線が合う。

    「……」

     きゃあ、と最初に叫んだのは渓で、それにつられるように周囲にいたスタッフがわあと声を上げて、弁慶は鉛筆を落としたことに気づかなくて、ヤマザキは手にしていたファイルから書類を一枚裏返した。

    「……」

     嬌声と歓声が入り交じる中で、隼人と竜馬のふたりが誰よりも取り残されている。

     忙しくて。
     疲れていて。
     だから。
     これは。

     呆然と立つふたりに、弁慶の声が飛ぶ。
    「ま、パニックじゃねぇが疲れてるときに本心が出たりするからな。
    周りのことなんてどうでもよくなったんだろ」
     お前らふたりとも、と笑った。

     顔を見合わせる。

     渓と凱が、事態をよく分かっていないゴウに「結婚するんだって」と話しているのが聞こえる。

     思考が止まっている。
     ふたりを囲むようにして、スタッフの皆がおめでとうございますと次々に口にする。

    「待っ……」
    「神司令」
     冷静な声で呼ばれてはっと振り向くと、自分の有能な秘書が今日見た中で一番真剣な顔をしてペンを握っている。
    「……」
    「タキシードは白でいいですか?
    ここで、タワーでガーデンウェディングの予定ですが」
     二着でよろしいですね、と隼人が何も答えないうちから書類の裏に書き込む。
     お前、それは俺の決済待ちの。
    「竜馬さん」
     動けない隼人を無視して視線を動かす。
     名前を呼ばれて竜馬の肩がびくっと上がる。
    「タキシードのサイズは神司令と同じで大丈夫ですね?」
     と確認され、よく分からないまま頷くしかなかった。
     さらさらと淀みなく手を動かすその表情が。
     初めて見るようなやわらかい笑顔だったから。


     隼人と竜馬のガーデンウェディングの決定は、その日のうちにタワー内に広がった。
     どうして俺の判なくそうなるのだと、隼人は頭を抱えている。
     竜馬は指輪のサイズを測らせろと迫るヤマザキから逃げ回っている。

     弁慶は。
     それを見てただ笑っている。

     疲れてるときに本心が出るんだろ。
     周りのことなんて目に入らないくらい、お互いのことしか頭にないときに。


     季節は六月で、渓は天気のことを心配する。
     「ジューンブライドって何だ」とゴウが尋ねてくる。
     凱はパーティーの食事のことばかり考えている。


     ふたりの存在を全方位から歓迎する祝福は。
     歓声と紙吹雪が舞う忘れられない一日になる。


    -了-
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    rabimomo

    DOODLEタイトルまんまです
    めちゃくちゃ出来る男な月を書いてみたくてこうなりました
    在宅ワークした日に休憩時間と夜に一気書きしたのでちょっと文章とっ散らかってますので大目に見て下さる方のみ!
    直接の描写はないですが、肉体関係になることには触れてますので、そこもご了承の上でお願いします

    2/12
    ②をアップしてます
    ①エリートリーマン月×大学生鯉「正直に言うと、私はあなたのことが好きです」

     ホテルの最上階にあるバーの、窓の外には色とりどりの光が広がっていた。都会の空には星は見えないが、眠らぬ街に灯された明かりは美しく、輝いている。その美しい夜景を眼下に、オーダーもののスーツを纏いハイブランドのビジネス鞄を携えた男は、目元を染めながらうっそりと囁いた。
     ずっと憧れていた。厳つい見た目とは裏腹に、彼の振る舞いは常にスマートだった。成熟した、上質な男の匂いを常に纏っていた。さぞかし女性にもモテるだろうとは想像に容易く、子供で、しかも男である己など彼の隣に入り込む余地はないだろうと、半ば諦めていた。それでも無邪気な子供を装って、連絡を絶やせずにいた。万に一つも望みはないだろうと知りながら、高校を卒業しやがて飲酒出来る年齢になろうとも、仕事帰りの平日だろうと付き合ってくれる男の優しさに甘えていた。
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