絹豆腐 @touhu_kinu00 投稿の場をprivatter+に移しています。Twitterフォローいただくか、Blueskyから飛んでいただければ幸いです。 ☆quiet follow Yell with Emoji POIPOI 6
絹豆腐DONE🟩💜香りの行先渓谷に落ちる月光が樹冠の杉葉を鋭利に映し出し、木々の隙間を静寂が満たす。暗い林の内は虫の声さえ飲み込み、立ち込める深い霧は闇を広げんと揺蕩う。青々とした緑葉と土。樹林に漂う濃霧と共に辺りを支配する主の香。 荘厳を讃える伏した無音の闇に一つ、金属の擦れる音が立った。 音ともに現れた淡く朧げな霧は、月光をも飲み込む暗闇の上で柔らかな白を踊らせる。散乱する色は甘やかで神秘的な香りで挨拶を告げた。境界の来訪者に杉は葉を揺らし虫は涼やかに歌い出す。 蝶番の軋む音に白の内より鍵を開けた旅人は土へ足を降ろした。穢れを知らない純白と華やかで涼やかな淡色。背後の藤色を手元のランタンへ焚べれば、周囲の闇は奥へと下がる。 3378 絹豆腐DONE🟩💜愛してると言って 毎朝のルーティンがある。食事や一通りの身支度を終えたら玄関に向かうのだ。そこに外出予定の有無は関係ない。玄関を開けいつもの場所に視線を向ける。用意したおもちゃサイズの木の椅子。今日は利用者がいるようで、小さな恐竜の人形がお座りし、下にはメモが挟まっている。 『おはよう!今日の夏祭りは会場集合だって!14時にそっちに行くよ。』 エイリアンによって置かれた小さな訪問者を胸に抱き扉を閉めた。まだまだ時間には余裕があるが用意を始めよう。去年の浴衣は何処に仕舞ったか。 同じマンションに入居者するエイリアン。彼に出会った時の事はよく覚えている。呪術師という職業柄、不可思議の存在には見慣れていた。なんなら知り合いに竜人や鬼がいるので、エレベーターで一緒になった生き物の頭に角が生えていようが特段驚くべきことではない。しかし、ほとんど反応しなかった筈なのに、相手は目ざとく擬態を見破られたことに気がついた。狭い密室で自分よりも遥かに強いと分かる異形に追い詰められる恐怖を生涯忘れない。 3189 絹豆腐DOODLE💛💜 学パロ朝寒息が白む。朝焼け前の冷涼な空気は火照る身体の熱を奪い、頭から眠気が払われ思考が冴えていく。秋の内、青々と茂った木々か紅葉を始め、葉を落とすこの頃がなによりも好きだ。雪が降るほど冷えきっていな気温は喘息の症状を大人しくさせ、運動に最適となる。 運動のついでに朝食を買うようにと、兄弟より下った図々しい命令も素直に受け入れられる程、今日という休日の気候は心地の良い。それに良い事が起きる予感がする。元々運はいい方だし、不思議とそういう勘は昔から当たってきた。幸先のいい朝はその一つだろう。いつもより好調なペースで進むジョギングに、脚をいつもと違うルートへと進ませる。迷子になることは無いし、時間分配を誤らない限り家族が活動を始める時間には帰ることが出来るだろう。 5123 絹豆腐DONE💛→→(←)💜(無自覚)学パロ嫉妬 蝉がけたたましく奏でる音に掻き消されながらマネージャーがタイムを切る声を上げる。ギラつく太陽に奪われた体力を取り戻すべく、木陰に身を沈めスポーツ飲料水を飲みながら息を整えた。いち早く走り終えたルカは仲間達がゴールを目指す姿を観察する。陽炎が揺れるほどの暑さの中、陸上部は大会に向けた練習に励んでいた。 「カネシロ、またタイム更新してたな。」 「っす!先輩も好調でしたね。」 走り終えた先輩が荒い呼吸を整えながらこちらに集合する。優秀な成績を収めるこの部は、受験を控えた三年もまだ引退すること無く部活に参加している。先輩もとい部長は推薦が来ていると言っていたし、次の大会が進路へ影響を及ぼす以上手を抜くことは出来ないだろう。 4649 絹豆腐DONE💙💜薄明と染まるカチャカチャと物の触れ合う音がする。 途切れた集中に目の前の原稿から顔を上げる。カーテンの隙間から漏れる光が朝の訪れを知らせていた。思い切り伸びをすると固まった筋肉と関節が悲鳴をあげる。疲労にため息をつき、軽いストレッチを続けながら原稿を見やる。ここ最近のスランプが嘘の様に筆が進んだ。この恋物語の佳境は過ぎ、後は終幕に向け畳んでいくのみでプロット通りのものだ。まだオチは決まっていないが、この調子なら締切にかなりの余裕を持って終えられるだろう。早々に提出しようものなら何を言われるかわかったものではないので、ギリギリまで温めるが。 スケジュールの更新をしていれば、食べ物の匂いがほのかに鼻をかすめる。愛しい恋人が活動するには早い時間だが、今日は朝から昼にかけて仕事があると言っていた。会いたいが今行けば朝食を追加で作らせてしまいそうだ。悩みあぐねていればスマホが通知を告げる。『軽食作っておくから、休憩時に食べてね』あまりの人間性に一瞬天を仰ぐも、彼と食事を共にすべく直ぐに立ち上がる。原稿を片付け、カーテンと窓を開け換気を行う。駆け足気味でリビングに向かえば音で気づいていたのであろう、エプロンを着けたシュウがこちらに身体を向け手を広げている。勢いもそのままハグをすれば腕の中の存在は肩を揺らした。 7222 絹豆腐DONE💛→💜紫炎喧騒、怒号、乾いた破裂音。薄汚れたアスファルトに鮮やかな命の色が映える。生み出した作品が温度を失っていく様を、ルカは酷くつまらなそうに見つめていた。マフィアのボスとして君臨する以前から親しんできたいつもの風景。命を狙い狙われるスリリングな日常は、生きる喜びと自信を与えてくれる。そんな愛すべき隣人は今宵、ファミリーの裏切りを携えて心を踏み荒らしに来たのだ。粛清を行うのは初めてではない。それでもこのスパイスは何度経験しても不快感を拭うことは出来なかった。 部下を置いて、未練がましく纏わりつく鉄錆と埃の匂いを振り払い暗がりを進む。街灯も殆ど無いこの場所では、月が姿を隠してしまうと何処まで歩いても明るい場所に出ることは叶わない。苛立ちの原因は排除したのに、気分は汚泥に沈み続ける。 3930 1