新亀レオドン「怪我したのか?」
背後からかけられた声に不振り向く暇もないまま、手を掴まれた。
肘よりすぐ下に巻かれた包帯をまじまじと見つめたまま、レオナルドはその上に手を滑らせる。
「ああ、ちょっと作業中手が滑っちゃって」
苦笑交じりにやんわりとその手を解こうとしたのだが、手の甲から強く握りこまれて強い拒絶の意思が見える。
「こんなところがか?」
いぶかしげな様子で問うているようで、ドナテロを射貫く目は鋭い。
誤魔化しもなにも効かない雰囲気に、思考を巡らせようとしたところ肘を軸に回転させた身体はいとも簡単に壁に背中を打ち付ける。
「っ心配してるにしてはちょっと乱暴すぎない?」
そのまま顎に肘を押し付けられると身動きが取れなくなり、僅かに呼吸が圧迫された。
「ドニーは頭がいいから、時間をかけすぎると逃げられるからな」
そう言いながら、握ったままの手を滑らせ綺麗に結われた包帯の袂に辿り着く。
片手で器用に解きするすると落ちていく白布の下から剥き出しになった傷跡に小さく息を呑む音が聞こえた。
血が滲む程に深く食い込んだ歯型に気付かないなんて、夢見事でも思えないことだ。
せめてもの現実逃避で目を閉じることしか、言い訳のしようがない状況から逃げる術はない。