MMラフレオ目尻を通る水滴に思わず目を閉じる。
帽子の隙間から浮き出た汗が一筋落ち、慣れない不快感に帽子を取った。
普段巻いているマスクとは違い頭全体を覆うせいでむしむしして暑く感じる。
パタパタと首元を仰ぎ浮かんだ汗の粒が少しでも冷えてくれるように願うが、それでもまとわりつく熱さは消えてくれなかった。
「レオ、どうした?顔が赤いようだが」
隣で怪訝な顔を浮かべる人間の男に、レオナルドは一層手の動きを加速させた。
「な、なんでもないよトビ―!ちょっと試合に興奮しちゃってるのかもなーあはは」
そう誤魔化してみたところでこの公園では何も試合なんて行われていなかった。
むしろ今日は用事があるからとかなんとかでフィールドにいるのレイフィレットとレザーヘッド、あとジンギスの三匹だけ。
やる気なくキャッチボールを行う光景は興奮とは程遠い。
ミットにボールが収まる音がなんとも間抜けに響いて、レオナルドは誤魔化すように笑うことしかできなかった。
目の前の光景に興奮はできないにしろ、なんだか身体が火照って仕方がない。
もしかして本当に熱でもあるのかも、そう思った矢先首元に触れた感触に驚きレオナルドは飛び上がった。
「うひゃあっ!」
そんな情けない声と共に距離を置くと、驚いたように目を見開いた友人が居て。
その様子を前にレオナルドは今度は両手を前に振った。
「ごごごごめん、びっくりしちゃって!」
「こちらこそ驚かせてしまった。本当に大丈夫か?少し木陰で休もう」
大きな前歯を突き出し、トビーは余裕のある笑みを浮かべた。
友人兼リーダーとしての指南役を担う彼はレオナルドよりもずっと落ち着いた佇まいをしている。
何があっても動じない、マイナスをプラスに変える思考回路、どれもレオナルドには足りないものだ。
大人の余裕とはこういうことを言うのだろう。
今とて、レオナルドだけがずっとあわあわしているが、レオナルドの様子をいち早く察し提案をしてくれる。
人間世界に出るようになって何人か友と呼べる人間はできたが、レオナルドにとってはその中でも一際信頼に足る人物だった。
「そのほうが、いいかも」
レオナルドは差し出された手を取る。
湧き出る何かは衝動なのか、熱なのか。
ともすれば人より力の強いレオナルドは友人の手を握りつぶしてしまいそうなくらいには余裕がなくなってきていた。
叫び出したいような、暴れたいような、それらの衝動は全て熱を放出する為のもの。
ああだめだ、なんか熱くて、くらくらする。
「悪いなトビー、もう門限の時間だぜ」
右足の踵が地面に着く寸前、首に巻き付いた腕がレオナルドを後ろに引いた。
引き寄せられるまま背中に何かがぶつかると、途端鼻腔いっぱいに広がる馴染みのある匂い。
思い切り吸い込んだ瞬間レオナルドの足は力を失くして崩れ落ちる。
「おいレオ!ほんとに大丈夫か?ったく、ドニーの予想大当たりじゃねぇか」
支える腕がなければ、レオナルドは地面に転がっていたかもしれない。
驚いたように見つめるラファエロの顔は涙で滲んだ視界のせいで歪んで見えた。
「らふ、なんか、あつくて…」
「フェロモン測定値がお前のベッドだけ高かったんだってよ、ったく何持ち帰ってきたんだよ」
呆れた調子のラファエロの声が随分遠い。
眼前で踊る指先に頬を擦り付けるとぴくりと指先が震えた。
軽々と抱き上げられたレオナルドは気が付くと視界に映るのはラファエロの背中と地面だけになっていた。
ぶらつく足はラファエロの手でしっかりと固定され、動かせるのは足先だけ。
「見ての通りだ、いいよな」
「ああ、もちろんだ。後は任せてくれ」
そんな声がどこかで聞こえる、どことなくラファエロの声がとげとげしいと思ったのはレオナルドの幻聴だっただろうか。
視界に見える地面の一部が濃くなった。
小さな足の先、増える話し声はレオナルドを心配する内容のものだった。
重力の反転した汗が再度目に飛び込んできて痛い。
「あッッッ!!?」
軽く叩かれた尻に大仰に悲鳴を上げ、なけなしの理性で慌てて口を塞いだがもう遅い。
「……このまま帰るからな」
そう低い声を発し、ラファエロはレオナルドを肩に担いだまま足取り荒く公園を出た。
ズボンの中で顔を出したモノが衣服と擦れて、レオナルドは無意識に腰を揺らす。
意識と本能の狭間で、最後に視界に映りこんだ赤い何かを握りこんだ気がするが最早それも幻覚だったかもしれない。
ここで力尽きました
フェロモン爆弾一生擦れる