03レオドンゆっくりと意識を覚醒していく感覚はあるが、目を開けるのが酷く億劫だ。
瞼は鉛が乗っているのかってくらい重たいし、指一本動かせる気がしない。
それでもどうにか開いたはずの視界には、未だ薄暗い闇が広がっている。
光源のない中僅かに軋むスプリングの感触から察するにどこかの部屋であることは予想がついた。
「ようやく起きたのか」
どんなに身体が重たくても五感は正常に機能していたようで、呆れたような声が耳に届く。
視界に入りこんできた声の主は声色と同様に目を細めてドナテロを見下ろした。
「おはよう……ええと、こんばんわの方が正しいかな?」
時計を見ると短針は7の数字から少しだけ上に上がったところ。
それだけでは今が昼なのか夜なのか判別がつかない。
ぱっと明るくなった部屋に思わず目を覆う。
しかしその些細な仕草で二の腕が引き攣り、痛みに小さく声が漏れた。
反射的に浮かんだ涙の中ようやく状況を把握し始める。
ここがドナテロのではなくレオナルドの部屋だということ。
「あまり無理をし過ぎるの身体に悪いぞ」
たしなめるような口調だが、額に触れる手は穏やかだ。
確かにここ最近のドナテロの記憶を遡っても寝た記憶が無い。
集中力の限界で気絶に近い寝方をした記憶は何度かあるが、自分の意思で布団に入ったのはいつだっただろう。
肩は重いし、頭もぼんやりとしていて、寝ているはずなのに重石が額に乗せられているようだ。
いくらミュータントとて限界がある、今回はそれを突破してしまったらしい。
「うわぁ、久しぶりにやっちゃったねぇ」
幾度目かになる失敗に誤魔化すよう笑いを浮かべるがレオナルドは笑ってくれず、代わりに深い溜息を吐かれてしまった。
今でももう少し色々言いたいのだろうけど、ドナテロがまだこんな調子だから色んな言葉が浮かんでは飲み込んでいるのだろう。
これは元気になった後が怖いな、と思うのだがそれはそれとして。
しかし、ドナテロはどうしてもひとつ気にかかった。
「あのさぁ、レオ………僕たち昨日シたの?」
うっすらと香る石鹸の匂いが身体に纏わりついて清浄感に包まれている。
それに瞼ひとつ動かすのもしんどいくらいの倦怠感。
それだけ揃っていてまだ確信が持てないのは、ドナテロに昨晩の記憶が綺麗さっぱりないからだ。
ドナテロは余程困惑した顔をしていたのだろうか、珍しく吹き出したレオナルドは悪戯めいた笑みを浮かべた。
「もちろんわかるだろう?ジーニアス」
その表情から、レオナルドはきっと教えてくれないだろうということを察した。
彼を宥めすかせるよりも自分の記憶を掘り起こした方が早そうだ。
ああほんと、何かとんでもないことやらかしてなきゃいいけど。
レオナルドがいつになく上機嫌なところから、余計そんな不安が募るのだった。