Rotレオドン何かを学ぶのに自分自身で経験する以上に良い方法はない。
かのアインシュタインの言葉だ。
何事もうまくいく必要はない、反復してより良いものを作ればいいだけだ。
しかし、時にそう切り替えられず惨めな気分になる時がある。
「……さいっあく」
視界が反転した世界でドナテロは深く息を吐く。
両足に巻き付いたケーブルは天井から垂れ下がり、ギリギリ伸ばした手が地面に届かない程度に吊り上がっていた。
引き千切ろうものなら部屋どころかこの家全体の電源が落ちる。
持ち上げられた時にぶつけたチェアのせいでロッドは向こうに転がっていた。
いつもの腕の機器はよりによってメンテナンスの為数分前にテーブルに置いたばかりだ。
足首を締め上げてくるケーブルは次第に肉に食い込み、痛みすら伴うようになってくる。
身体を捻るだけで天井に一瞬稲妻が見えた気がしてそれ以上動けなくなった。
そんな全てが悪手を極めた中だが、大声でもあげれば誰かしら飛んできてくれるだろう。
でもそれはドナテロにとって何よりも最悪の手段だ。
「何してんの?」
これからどうしようかと思考を巡らそうとした時、今一番聞きたくなかった声。
裏返った視界でレオナルドが立っているのが見えた。
「うるさいっ早く出ていけ!」
反射的に叫ぶ。
よりによって一番バレたくない相手だった。
ラファエロなら揶揄いどころか心配という顔で解いてくれるだろう(それはそれで余計惨めになりそうだから嫌だけど)。
けどレオナルドは絶対余計な事を言うに決まっている、それどころか助けてくれるかどうかすら危うい。
近付いてきた身体から離れようとして傾いだ反動で、身体は180度回転した。
ケーブルにも衝撃が伝わったのか一瞬電流が走り、ピリッとした痛みが駆け抜けた。
反射的に強く揺れた身体はケーブルを引き千切らんとばかりに線が強く張る。
振り子になった身体は唐突に何かに止められた。
ドナテロの身体を支えながら、空いた手で器用に拘束を解いていく。
支えなく逆さまに落ちたドナテロ自身もそのまま腕にしっかりと抱えられた。
「はい」
わざわざ足でチェアを引き寄せ、反動が少ないようゆっくりとドナテロを下ろした。
血液が侵食してきていた頭はまだじんわりと熱くて、背もたれに後頭部を預けながら薄く息を吐く。
若干暗くなった視界で覗き込んだレオナルドが頬を叩いて来た。
「……叩くなよ痛い」
「なんだ元気じゃん」
屈託なく笑う表情に嘲りの色は見られない。
ドナテロはちょっとだけ赤い痕が残る足首に視線を落としながら、控え目に口を開いた。
「あ、ありがと……」
喉につっかえながら感謝をどうにか伝える。
予想に反して優しい対応に戸惑ったのは事実だけど、助けられたのは事実だ。
どことなく頬が熱いのはまだ頭に上った熱が収まってないせいだと思う。
くらくらとして若干黒飛びする視界に割り込んできたレオナルドは口元が弓張月よりも湾曲して吊り上がっていた。
「それで、助けてくれたご褒美は?」
前言撤回、そうだよレオナルドがそれで終わる筈ないんだ。
「はぁ……何直して欲しいの」
「えぇ?別に直して欲しいのとか特にないなぁ」
「………じゃあ何」
「ドニーが決めていいよ、何してくれんの?」
そう言いながら地面に座り込んだレオナルドは真下からドナテロを見上げる。
ドナテロの膝に両腕を組ませ顎を乗っけたレオナルドによって再び足は動けなくなってしまった。
蹴り飛ばそうにも足の甲はしっかりとレオナルドの膝が乗ってる。
さっきの拘束なんて優しいもんだ、むしろこっちの方がタチが悪い。
何を期待されているのかわかるが、それを口に出すのが癪で、でも流石に無碍にするには情が無さ過ぎる。
そうやって悩む姿すら愉しそうに笑んで見ている姿に、今度は苛立ちで頭がくらくらする。
今日は本当に最悪な日だ。