新亀ラフドンガレージに戻るなり、愛機に腰かけたドナテロが片手をあげた。
踵を浮かせハンドルにもたれかかり、その肩にはつい先ほどまでラファエロが着ていたジャケットを羽織っている。
「や、おかえり」
家に戻って来るなり聞こえた怒鳴り声、それに応戦している間に姿を消していたドナテロの何でもないような態度に悪びれた様子は一切ない。
もはや怒りを通り越して溜息しか出ない。
「俺を犠牲にして逃げた癖に良く言うぜ」
「えぇ、それは適材適所ってやつでしょ。ほら、ラフの方が怒られ慣れてるし」
右ハンドルに手を乗せると少しだけ傾いた機体分、ドナテロの身体も近づく。
胸板に触れる直前で止まり、揺れたジャケットの袖口だけが肌を擽った。
ドナテロは一瞬目をぱちくりとさせた後で口元だけの笑みを浮かべた。、
意図の見えないその表情に強引に引き寄せたい衝動と、ここで動いたら負けだという意地がせめぎ合う。
「別に隠すことのもんでもねぇだろ」
顔を寄せて吐息が触れ合う距離で、小さく聞こえる笑い声。
どうやらドナテロのお気に召したらしい、気まぐれに触れた唇はすぐに離れていく。
「こういうのは隠れてするから良いんでしょ?」
謡うように嘯く。
ドナテロとのやり取りはいつもこうだ。
煽り上手な上に躱すのも一枚上手。