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    shirotsume

    雑多に書き散らかしています。イラスト、漫画はありません。文字だけです。

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    天てる「突然始まるラブロマンス」序章

    #天てる
    shine
    #天照
    amaterasu

    序章

     俺はイケメンが嫌いだ。
     イケメンなんて滅びてしまえばいいと常日頃から思っている。だって顔が居言ってだけでモテるし、女の子からもチヤホヤされるし……。もちろんそんなこと思っていても口に出しては言えない。何故なら不幸なことに俺の周りにいる連中はみんな顔がいいからだ。
     なんで俺だけ?
     いや俺だって別にブサイクではないと思う。
     中の下。いや。下の中かもしれないけど。まあそれなりには見える顔なはずだ。
    だけど世の中、凡人には厳しい。
     下駄箱に手紙が入っていたことなんて一度もないし(ちなみに幼馴染みの下駄箱には何とか入っていたのを目撃している)ナンパしても「キモい」の一言で終わりだ。
     ハアッとため息を零す。
     折角の夏休みだというのにデートをする予定もなければ相手もいない。せいぜい姉に付き合わされて出かけるくらいだ。
     元々、俺はアウトドア派じゃないし。超インドアだし。本当はクーラーの効いた涼しい部屋の中でゲームのイベントを走るのに忙しい時期なのに……。
     知ってる? 昨日から夏のイベントが始まったんだよ?
     水着だよ? 推しの水着!
     いいから没頭させてよ!
     しかし俺の訴えは姉の「ついて来い」の一言の前に無意味と化す。何処に行くのかも聞かされないまま、俺が炎天下の中を黙々と歩かされていた。
    「なあ姉ちゃん。これってどこに向かってんの?」
    「いいから、いいから」
    「いいからじゃねえよ」
     姉の橙子が「いいから」と言って、良かった試しなんて一度もない。それでも逆らえないのは小さい時から培われてきたものだ。小さい頃、一つ上の姉は何でも出来た。かけっこだってお遊戯だって、俺が姉に勝てたものなんて一つもない。
     それどころか臆病で弱虫な俺はいつも姉の後ろに隠れていて守って貰っていた。いつの間にか姉よりも遥かに背も高くなり、肩幅も広くなった。力ではきっと負けたりしないだろう。分かっている。だけど俺は未だ姉には逆らえずにいた。
     なんとなく嫌な予感がしつつ、姉に連れられ辿り着いた先は都内でも有名な体育館だった。
     今日、ここで何が行われているのか俺は知っている。
    「え、まさか」
     そういや姉は彼のファンだった。だけど今まで一度も観に来たことなんてないし……せいぜいテレビで観てキャーキャー言うぐらいだったのに……どうして? 驚きの表情を向ける俺に姉がニコリと微笑む。
    「これ」
     そう言って姉が手にしていたのは彼からの手紙だ。
    「なんで……」
     手紙はゴミ箱に捨てたハズなのに。どうして姉がチケットを持っているのか? 中も見ないで捨てから俺は中に何が入っているのかも知らない。まさかチケットだったなんて……。
    「なんで勝手に開けたんだよ!」
     俺は思わずそう叫んだ。声が大きかったので回りにいた人達が驚いたように俺たちを見ている。だけど我慢なんて出来なかった。
    「俺の手紙なのに」
    「でもあんた捨てたでしょう」
    「それは、そうなんだけど……」
     確かに捨てたものだ。捨てた時点でもうそれは俺のものじゃないし、姉が拾ってどうしようと責める権利なんて俺にはない。そう言われてしまえば確かにその通りなんだけど……。
    「私がファンなのは善照も知ってるでしょう」
    「だったら一人で来ればいいじゃんか」
     なんでわざわざ俺を連れて来たの?
     問いかけると姉は綺麗な顔を歪ませる。
     平凡な俺の顔と異なり姉はとても整った顔をしている。おそらく十人居れば十人が姉を美人だと言うだろう。俺もそう思う。だけどそれ以上に暴力的で人の話を聞かない所はなんとかして欲しいと思うけれど。
    「後悔してるみたいだったから……」
    「えっ?」
    「あんたが貰ったもんなんだから、あんたが一緒じゃないと変でしょ。ほら、行くわよ!」
    「ちょ、ちょっと待って! 俺は!」
     俺の主張なんて聞きもせずに、姉がグイグイと背中を押す。 本当に勝手だ。
     我が儘だし、横暴だし、言うことなんてちっとも聞いてくれないし……でもきっと姉だけは俺の本当の気持ちに気づいてたんだと思う。
    「行けない、行けないよ……」
     もう行けない。もう会えない。
     そう必死に叫ぶ。
     だけどもう一人の俺が「本当にそれでいいのか?」と問いかけて来るから……。
     もう一度、もう一度だけ。
     彼に会っても許されるだろうか?
     遠くで見ているだけなら。そっと応援するくらいなら。
     きっと迷惑にはならないはず。
    「照、素直になんなさい!」
     じゃなきゃ本当に取り返しの付かないことになるわよ!
     姉にそう言われ、俺は唇を噛みしめた。
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    PROGRESS天てる「突然始まるラブロマンス」序章序章

     俺はイケメンが嫌いだ。
     イケメンなんて滅びてしまえばいいと常日頃から思っている。だって顔が居言ってだけでモテるし、女の子からもチヤホヤされるし……。もちろんそんなこと思っていても口に出しては言えない。何故なら不幸なことに俺の周りにいる連中はみんな顔がいいからだ。
     なんで俺だけ?
     いや俺だって別にブサイクではないと思う。
     中の下。いや。下の中かもしれないけど。まあそれなりには見える顔なはずだ。
    だけど世の中、凡人には厳しい。
     下駄箱に手紙が入っていたことなんて一度もないし(ちなみに幼馴染みの下駄箱には何とか入っていたのを目撃している)ナンパしても「キモい」の一言で終わりだ。
     ハアッとため息を零す。
     折角の夏休みだというのにデートをする予定もなければ相手もいない。せいぜい姉に付き合わされて出かけるくらいだ。
     元々、俺はアウトドア派じゃないし。超インドアだし。本当はクーラーの効いた涼しい部屋の中でゲームのイベントを走るのに忙しい時期なのに……。
     知ってる? 昨日から夏のイベントが始まったんだよ?
     水着だよ? 推しの水着!
     いいから没頭させてよ!
     しかし俺の 1894

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     イケメンなんて滅びてしまえばいいと常日頃から思っている。だって顔が居言ってだけでモテるし、女の子からもチヤホヤされるし……。もちろんそんなこと思っていても口に出しては言えない。何故なら不幸なことに俺の周りにいる連中はみんな顔がいいからだ。
     なんで俺だけ?
     いや俺だって別にブサイクではないと思う。
     中の下。いや。下の中かもしれないけど。まあそれなりには見える顔なはずだ。
    だけど世の中、凡人には厳しい。
     下駄箱に手紙が入っていたことなんて一度もないし(ちなみに幼馴染みの下駄箱には何とか入っていたのを目撃している)ナンパしても「キモい」の一言で終わりだ。
     ハアッとため息を零す。
     折角の夏休みだというのにデートをする予定もなければ相手もいない。せいぜい姉に付き合わされて出かけるくらいだ。
     元々、俺はアウトドア派じゃないし。超インドアだし。本当はクーラーの効いた涼しい部屋の中でゲームのイベントを走るのに忙しい時期なのに……。
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     イケメンなんて滅びてしまえばいいと常日頃から思っている。だって顔が居言ってだけでモテるし、女の子からもチヤホヤされるし……。もちろんそんなこと思っていても口に出しては言えない。何故なら不幸なことに俺の周りにいる連中はみんな顔がいいからだ。
     なんで俺だけ?
     いや俺だって別にブサイクではないと思う。
     中の下。いや。下の中かもしれないけど。まあそれなりには見える顔なはずだ。
    だけど世の中、凡人には厳しい。
     下駄箱に手紙が入っていたことなんて一度もないし(ちなみに幼馴染みの下駄箱には何とか入っていたのを目撃している)ナンパしても「キモい」の一言で終わりだ。
     ハアッとため息を零す。
     折角の夏休みだというのにデートをする予定もなければ相手もいない。せいぜい姉に付き合わされて出かけるくらいだ。
     元々、俺はアウトドア派じゃないし。超インドアだし。本当はクーラーの効いた涼しい部屋の中でゲームのイベントを走るのに忙しい時期なのに……。
     知ってる? 昨日から夏のイベントが始まったんだよ?
     水着だよ? 推しの水着!
     いいから没頭させてよ!
     しかし俺の 1894