そのうち両想いになる政略結婚じんまお(前編)「否」
書簡を突き返された男の眉が困ったように下がる。だが、猫猫には関係のない事だ。これ以上言葉を発する労力さえ無駄だ。
「良いのか、義妹よ。こんな機会、二度とないかもしれないぞ」
「否」
眼鏡の奥の細い目が悲しそうに歪む。だが、猫猫には関係ない。むしろ、少しくらいは困って欲しい。
「本当に良いのか……、確か今回の宴では、古今東西から集められた生薬が披露されるそうだぞ」
「え?」
「何でも、千頭の牛を用意してようやく見つかった珍しい石の生薬もあるのだとか」
「は?今なんて……?」
「聞いたことがあるだろう。皇弟は病弱で、あまり公の場に出てこられないと。今回、とある高官が皇弟のお身体を労わる為に宴を開くらしい。まぁ、本来の目的は見合い」
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