Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    gaf

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 57

    gaf

    ☆quiet follow

    聶藍ネタメモ(ツイッタ妄想呟き長い版みたいなもの)です。漫画に起こすことはないかなと思ったのでこちらにポイ。

    #nielan

    道侶密かに道侶の契りを交わした夜。
    我が夫殿は、満足してさっさと実家に帰ってしまわれた。元よりとっくの昔に関係を持った仲である、三拝など今更のことだ。

    思い人を射止めたことで満足してたのは己だけで、相手は不安であったらしい。衣を乱すことすら恥ずかしいと目を閉じる男が、一度開けば朝まで離さぬのだから。同じ男としては、同等に求められることは嬉しい限りだったのだが。ただただ不安がゆえのことだった。
    とうとう耐えかねた「約束が欲しいのです」という掠れた声。己を中に閉じ込めたままで言われたのだから、堪らない。

    さて。
    我が父上と、夫の父は親友だ。その弟の藍先生とも昔から親交がある。特に成人もまだの若造が宗主を継いだ当初は、それはもう大変に世話になった。
    その甥の曦臣とも、幼馴染の仲である。
    昨日までは恋人で、昨夜からは夫だ。
    可愛い甥っ子が事前報告もなく道侶を得たなどと知れば、一悶着はあるだろう。叔父っ子の彼が報連相しないわけがないのだ。
    そう思い迎え撃つ覚悟を決めてたのだが、とんと音沙汰がないままに。そのうち時代の波にいっしょくたに呑み込まれてしまった。



    事実曦臣が藍先生に報告していたと知るのは、次に意識が浮上したときだった。
    死んだし、切り刻まれたし、封印された。
    それはいい。今は、置いておこう。

    取り急ぎ目の前の「孟瑶」である。
    正しく聶に居た頃の「孟瑶」の姿である。最期に会った時は金氏の校服だったように思うが。
    「そういう貴方も随分と若い」
    言われてみれば、己も聶氏の校服である。宗主の頃ではない、弟子と同じもの。これを着ていたのは、宗主になるまでのことだ。つまり青春時代。
    それでいて孟瑶は聶氏に居た頃なのである。時代がちぐはぐだ。
    「この方は、この時代の私が良かったらしい」
    隣を見上げれば、衣装から肌から青白い相貌の男。無表情のその男は、自身の叔父に睨まれていることで、辛うじて立っている様子だった。弟の方ではない。間違える筈がない。
    意識が浮上する前、確かに名を呼ばれた。

    封棺大典。身体は囚われ、中身はこの男に呼応する。
    我が実弟の立派な姿をみれたのだ、この状況も悪くはない。悪くはないが、原因の彼には我々の姿が見えないようで、呼んでも応えることはない。
    今は宿ですやすやとおやすみだ。

    そのまま穏やかに忘れたらいい。
    十何年も前に死んだ夫など、忘れてよい。思い出させたのかもしれないが、死んでいるのだ。もう、死んでいるのだから。

    とはいえ。
    早くに死ぬだろうことは、覚悟の上でも辛いものだった。
    何時かは手を放すから、幸せを掴んだらいいと綺麗事を思う。
    死んでも、一生を縛り付けたいと思う。
    後者が己の本音だと思っていたが、死んでみたら諦めがついていた。
    名を呼ぶ声にも、もう私は応えてやれないのだから。



    「約束が欲しいのです。心だけではなく、身体だけでもなく、一生残るものを」
    天に誓い、祖先に誓い、互いに誓う。契りを交わす。
    愛しい貴方が望むなら、幾らでも。



    手に火傷を負い驚く。
    やはり藍先生は怒っていた。
    曦臣に触れようとした手に、ぺしっと貼られた札の熱いこと痛いこと。
    「どうせ触れはしないのに!」
    口に出てしまったのは、姿が子供に戻っているからだろうか。
    孟瑶は枕元、ただ寝顔を見詰めていたのでお咎め無しだ。
    「おまえは、曦臣の望みを聞いただけだと思っていた」
    静かな声は、胸に重い。
    「悲しむ前に、別れてくれるだろうと思っていた」
    父同士は親友で、藍先生はその弟である。家同士の付き合いにすると長い。薄っすらと事情を知る人物だった。

    「叔父上、誰と話しているのですか」

    目が覚めた曦臣は、しかし顔色の青白さは変わらなかった。
    「あまりに賑やかで、呼応したのでしょう。夢をみました」
    明玦殿と阿瑤が賑やかに話しているのです。聶に居た頃の阿瑤と、ずっと若い頃の明玦殿。時代がちぐはぐでした。
    しかし少し笑った表情はするりと落ちる。
    「夢だ」
    そしてまた深い眠り。

    欲しい時に欲しい愛情を貰えなかった子供は、どんなに愛情を注いでも、割れた器の様に零れて満たされない。優しいだけの月一の母。叔父は親代わりだが親でなし。恋人とは頻繁に会えない。
    そのうち時代の波にいっしょくたに呑み込まれてしまった。
    焼けた故郷と、その復興。何があったのか閉関した弟。あの頃の曦臣に、私とも別れてくれとは言えなかった。置いていくだろうとわかっていても。



    曦臣の周囲に札を貼り終えると、藍先生は伝令蝶をどこかへと飛ばす。余程に触られたくないらしい。相当のお怒りだ。触れない、と言ったのに。

    翌朝、藍先生は封棺の確認に出ていく。入れ替わりに、藍の先輩方がやってきた。伝令蝶の飛んだ先だ。
    「一人で帰れるのに。迎えを寄越すなど」
    恐縮する曦臣の背後で、先輩方は印を切っていた。
    「背後をとられましたね」
    孟瑶の暢気な声。今にも倒れそうな者が、何をするというのか。母の様に、父の様に、何か「間違い」を起こすというのか。

    「孟瑶、おまえ曦臣に何をした」
    「まるでご自身に責任はない様な言い方をする」

    誰も彼もが、曦臣を残して消えたのだ。
    優しいだけの月一の母。見捨ててしまった父。殺してしまった夫。義弟は連れて行ってはくれなかった。
    夢もみたくなるだろう。

    藍先生が封棺に何かしたのか、曦臣の目が覚めたのか、去る背中を見届けたのが意識のある最後だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏😭💞💞😭😭😭😭🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works