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    ブラウン

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    ブラウン

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    カラプラ『婚約者候補シリーズ』3
    初デートに向かうも……前半のカラです。
    余りにもグダグダで申し訳ない気持ちです。
    カラは暴れ馬に勢いで乗ってしまったので視線と同じく心もぐらぐらしています。もうちょっと見守ってくれたらカッコいいカラプラになる予定です。

    プロスペクト1デート当日、秋先の冷たい雨が朝から絶え間なく降り続いている。雨の中王宮から馬車までの短い道を赤いレインコートとブーツをお召になられたプライド様と貴族の装いの私が並んで歩く、が、傘のせいでいつもの近衛騎士として後ろにつくよりも遠くに感じる。近衛騎士としてプライド様に黒く大きな傘を差すアランの方が近いというのも皮肉である。
    行き場の無い感情でアランを見れば苦笑され『今だけだ』と口が動く。同じく近衛騎士のエリックも苦笑いだ。
    お忍びデートということで2人も今日はいつもの騎士団の団服でなく衛兵の格好をしている。
    プライド様は雨の中を歩くのが嬉しいようでずっと笑顔でいてくださるのがとてもありがたく、このまま今日1日ずっと笑顔で過ごされて頂きたい。
    だが私の心もこの雨と同じく全く晴れることはない。
    婚約者候補となって1年が過ぎて、初めてお誘いした場所は城下を少し離れた山の中にある小さな湖だ。自然豊かな場所である為、足場も然程整備されていない所にわざわざ雨の中行くことも無い。当日が雨予報と知った時、場所の変更を申し出たが、プライド様の強い希望により続行になった。
    「大丈夫です!当日は雨仕様でのお出掛けをマリーとロッテが用意してくれています!今から着るのが楽しみなんですっ!」
    ニコニコ顔でプライド様が言えば、強い圧のある笑顔が侍女2人から私に浴びせられ、思わず後退りしかける。私が婚約者候補と知ってから2人の圧が強くなったのは気の所為では無いだろう。
    1年もプライド様をデートに誘いすらしなかった事を責めているのだ。どんな理由があろうと男性側からデートに誘うのがマナーであり、放置してしまったことは失礼に当たる。そこら辺の非難は同じ貴族として礼儀を重んじるマリーの方からヒシヒシと感じていた。
    「それに、カラム隊長のお気に入りの場所を私は1日も早く知りたいです!!」
    えへへ、と無邪気に笑う愛らしいプライド様。
    そう喜んでくれるだろうとお気に入りの場所をデート場所に選んだというのに、天気を考慮する事をすっかりと頭から抜けていた、私のミスだ。
    それでも「雨のお出掛けも楽しみですっ!」と心から楽しみにしてくれている笑顔のプライド様と、わざわざ雨仕様まで考えて下さり、笑顔で圧を掛けてくる侍女2人に、それ以上何も言えなかった。





    ほぼ整備されていない山の道をガタゴトと揺れながらもゆっくりと移動していた馬車がスピードを落とし止まった。
    馬車の中でプライド様の横に座り話すのもままならなかったが、救われた思いだ。今はまともに話すことは出来なかったのだから。今も「着きましたね!」と笑顔の彼女から香るお揃いの香水に頭がクラクラするのだから。
    まだ今日は予測も出来た為何とかなったものの御者が扉を開けてくれた事で香りが薄まった時には本当に心の底からホッとした。
    本当にこの香水は心臓に悪い。
    特に私の香水は、私がボルドー卿として式典で使っている香水を参考に作られている為、私が好んでいる香りをプライド様が着けている事になる。

    つまりそれは直接私の欲情をそそる行為である。

    何度熱が頭をグラつかせたか覚えていない。
    プライド様はその事には気付かれていないだろうが、真横にプライド様がいるというだけでその身体に触れたいと思ってしまった程に私は正常な判断が出来なくなっていた。
    たまにアランとエリックを見ては心を落ち着かせていたものの、今日のプライド様が一段と輝いて見えてしまっているのだから焼け石に水だ。それを楽しそうに見て笑うアランに流石に殺意を覚えたのは言うまでもない。
    少しは隠す努力をしろ!!と声を大にして言いたい。
    エリックも「笑っちゃ駄目ですよ」と窘めてくれはしたが、その顔は苦笑だった。
    プライド様もそんな2人に顔を赤くしてはいたものの笑顔を見せていた。お揃いという恥ずかしさはあるもののそれも含めて楽しんで下さっているプライド様に感謝しかない。


    最初にアランとエリックが降りて周囲を警戒し、私が降り、次に降りるプライド様に足元の注意を促し手を差し出した。
    今日私は騎士ではないので手袋はしていないが、プライド様は気になさらずにお礼を言いながらその細く白い手を私の手に乗せられた。
    騎士では馴れた行為だが、素手で触れられるのといつもと立場が違うだけでとても緊張する。それを悟られないようにお腹に力を込めてエスコートをする事だけに集中する。
    馬車から降りて私の手を離したプライド様は花のような笑顔で持っていた傘を広げられた。「この傘を使いたかったの!」と嬉しそうに。
    広げられたのは美しい湖を思わせる透き通った水色、そして紫色とピンクの紫陽花の描かれた見事な透明傘だった。
    足元が悪くても、泥水が跳ねても大丈夫な様に足首まで覆われた赤いレインブーツにレインコートをお召になったプライド様は全く雨を気になさらずに踊るように華麗にターンをされた。

    真紅の美しい髪とレインコートの裾が広がり雨の中で真紅の薔薇を咲かせる。

    朝プライド様の部屋に迎えに行き、その装いを心から褒めたものの、やはり服というのは適正の場所でこそ映えるものだ。
    太陽が出ていない自然豊かなこの森の中はいつもよりも薄暗く、雨で濡れた黄色や赤に色づいた木の葉は本来の鮮やかさを失い暗いというのに、

    この世界でプライド様の真紅の赤だけは鮮やかさを失っていない。
    プライド様だけがこの世界で唯一彩られている様にすら感じてしまう程に輝いていた。

    この暗い天気の中、雨にも、水色の紫陽花の傘にも、負けない程その赤とプライド様の妖艶な笑みは見ている者の目を奪うには充分だった。
    雨の雫を纏い、そのひと粒ひと粒が光の玉のように彼女を輝かせ、私に向かって花のような笑顔を向けられれば、危ないと注意しようと口を開けたまま固まった。
    美しくも可憐な妖精が目の前に現れたのだと錯覚まで起こしたほどだ。
    私が読んできた幾千もの本ですら彼女の美しさと私の心を表す事は出来ないだろう。

    見惚れてしまう。

    その全てが今日の自分の為に用意されたものであるのだと自覚すればそれだけで胸がいっぱいになる。
    勿論彼女が私に恋愛という甘い感情を抱いているわけでは無い。
    彼女の表情、仕草、声のトーンや目の動き、それらは近衛騎士として接する時と変わらない。
    変化といえば婚約者候補との初めてのデートという高揚感があるだけだ。
    もちろんこの立ち位置は伯爵の次男で一介の騎士でしかない私には勿体ない享受である。本当ならここに立つのは2人のどちらかなのだから。
    だが、今だけは素直に彼女との時間を楽しもう。
    私も男として好きな女性との一時はいい思い出として残したい、これが最初で最後になる可能性は大きいのだから。
    「今日のジャンヌ様は一段と美しいです。まるで色を無くした世界に現れた真紅の薔薇のような美しさに目を奪われました」
    素直な賛辞を直接伝えられる立場を与えてくださったプライド様には感謝しかない。
    「ぁ…ありがとう……ございます──ヴィンス様」
    「〜〜っ」
    お忍びデートと言うことで互いに仮名で呼び合う事にしたのだが、私は兄の名の愛称を拝借した。
    仮の名でもプライド様に様をつけられて呼ばれるのは心臓に悪い。じんわりと頬が熱くなるのを隠すために息を吐いた。
    プライド様も恥ずかしかったのか、赤い顔を隠す様に俯かれた。それでも見えてしまうプライド様の赤くされた顔は、とても愛らしい姿だと胸が高鳴る。
    「ですが、足元が悪い箇所も多い公園ですのでどうか私の手をお取り下さい」
    「ぁ、はい」
    顔を赤らめたまま私の手を取ってくれたが、手を繋げばお互い腕が濡れる事に気付いた。
    いくら自分の腕で傘から落ちる水滴を受けても本降りの絶え間なく落ちて来る雨によりプライド様の手が私の腕を伝って落ちる水滴に濡れてしまう。
    「すみません、このままではジャンヌ様が濡れてしまいますね」
    「あ、そこまでお気になさらず。今日は濡れることを前提に服を用意してます。それに雨の中を歩くなんて嬉しくて燥いでいるほどです」
    「いえ!そういう訳にはいきません!!」
    濡れることが前提であろうと雨に濡れるのを黙っているわけにはいかない。
    騎士としても、婚約者候補としても、何よりも彼女を想う己には許せる話ではなかった。
    「ですのでっ!ジャンヌ様が嫌でなければその傘は私がお持ちします!ご一緒に入らせて頂けますか?」
    「え?ぁ、は、はぃ…」
    私の勢いに圧倒され頷かれた。
    私に下心がないとは言わない。実際先程傘を差していたアランに嫉妬していた自分がいる。
    一度手を離し自分の傘を閉じると受け取る為近くに来てくれたマリーに渡す。
    プライド様から傘をお借りして、プライド様の隣に立ちプライド様が濡れないようにと傘の位置を調節した。
    2人用の大きな傘でないから、濡れる箇所を最小にしようとすると肩や腕や身体が触れてしまう。それだけで心臓が大きく脈打ち、プライド様に聞こえているのではないかと冷や汗が出てしまう。
    「手を繋ぐのは危ないので腕にお捕まりください」
    「え!?あ、はいっ!!」
    プライド様が遠慮がちに私の出した腕に自分の腕を絡めて掴まる。腕を組んだことで更に密着し明らかにお互いの体温や心音が分かってしまった。その上彼女から香る香水が自分の香水と同じだと意識すれば一気に身体の熱が上がる。
    プライド様もとても恥ずかしいのか赤い顔で俯かれている。少しは私のことを男性として、婚約者候補として意識してくれているのだろうか?
    何時もよりも高い体温と早い心音に少しだけ期待してしまう。彼女の心情がこの状況によるものだと分かっていても、香りという本能に直接訴え掛けられれば、私の心は簡単に乱れ勘違いを起こさせる。
    何度か息を吐いて心を落ち着かせる。
    「あの…、ヴィンス様の肩が濡れて……」
    「大丈夫です。私のもレインコートですので中の服は濡れません」
    「そ…ですか……」
    プライド様は赤い顔をし、その目線は私の顔や肩、そして自身の足元を忙しなく行き来されている。
    それは初めての〝デート〟という甘味な言葉、外出という特別な場所、雨という特別な状況、お忍びという非日常、そして婚約者候補と腕を組んで一つの傘の中に収まるという今までにない現状のどれもが彼女を緊張させた上で高揚させているからだ。
    そこに相手が誰、という拘りはない。
    彼女が親しいと思っている人物であるならアランやエリック、最悪はハリソンだとしても同じく彼女は高揚するだろうし、ステイル様とアーサーであればいつもとは違うというギャップにときめくかも知れない。
    出来ればそれを体感して頂きたいと願う。
    本当に好きな人とデートをし、女性として恋をし、唯一人最愛の人から愛される幸せを知って頂きたい。
    その時のプライド様は今以上に美しく可憐で愛らしい表情を見せるのだろう。
    どれだけ美しくなるのか想像も付かないのが悔しいとは思うも僻む気持ちにはならない。
    元々私はアラン達と同じ立場だ。今こうして婚約者候補として並んで歩けるだけでも奇跡と言える。その立場を違えてはいけない。
    手で前髪を押さえ少し目を瞑って今しなければならない事を冷静に分析し素早く順序立てる。
    「足元は舗装されていませんのでお気をつけてください。もし体勢を崩されたときは思いっ切り私の腕にしがみついてください、支えますので」
    運動神経のいいプライド様には不要かも知れない、それどころか今足元が覚束ない事になりそうなのは確実に自分の方だが、それだけは決してしてはいけない。騎士の前に男として、息を吐いて心を整え──
    「はい、カラム様」
    「───っ!!?」
    突然自身の名を呼ばれて心臓が大きく鳴り、止まった。一瞬、本当に止まった。
    驚いてプライド様を見れば、身長差から生じる上目遣いに見上げられ「ごめんなさい、つい」と悪戯が成功した事を嬉しそうに笑われた。
    プライド様から花咲く笑顔で様付けで呼ばれれば、その可愛さは殺人級だと冗談抜きに思う。
    少なくとも今呼吸を意識していなければ心臓が確実に止まることは確実だ。
    何故……突然??
    信じられないと思いながら見つめていると。
    「他に人もいませんので偽名でなくてもいいかなと思いまして……あの、大丈夫ですか??」
    いいえ、心臓が止まりました………
    そんな事を言える筈もなく頭を振り息を意識的に整える事に専念する。
    頭の中でごちゃごちゃと考えていた事が全て消え失せる程の衝撃に今何故こんな状況なのかと現実すら見失っている。

    いやいや正気に戻れカラム・ボルドー!!

    傘と己の肩を叩く雨の音にやっと動けるぐらいは正気を戻してプライド様と向き合う。
    そして改めて周りを見渡せば、思った以上に視野が狭まっていた事にやっと気付いた。
    プライド様が言う通り公園には自分達以外誰もいなかった。
    周りの生暖かな目に気付けば今度は一気に羞恥心が込み上がり頬を染める。
    いくら今自分は貴族令息としてプライド様をデートに誘ったとはいえ、周囲の警戒をしなくてよいという訳では無い。
    もっと言えば彼女の一番側にいる自分はより警戒をし、もしもの場合一番に彼女の身の安全を守らなければならない立場だ。
    (集中しろ!)
    手で前髪を抑え、目を瞑り、眉を眉間に寄せ、一度力を入れた顔を息を吐いて一気に解放する。それから気合いを入れ直し周囲警戒を始める。
    元よりこの公園は城下からも少し離れている景観と涼を楽しむ自然公園であり人気の少ない場所だ。
    休日にはカップルや子連れの平民が散歩している姿もあるが今日は平日、秋先の冷たい雨の日に訪れる者は居ない。
    だが、逆に言えば貸し切りである。
    王族のプライド様が城外を伸び伸びと人目を気にせずに散策される環境はそうそう訪れない。
    景観は残念だが雨の中の自然公園の散策を楽しみたいというプライド様の御心に添えるのならこれはこれでとてもいいもの、かも知れないと自身を何とか説得する。ここには景観を楽しみにして来たプライド様がその景観を見れないなど良い訳がない。それでも楽しみにしてくれていたプライド様を私は楽しませなければならないのだ。
    そして馬車から下りたここに何時まで立っているつもりか、己に呆れてしまう。
    プライド様を見れば不思議そうな顔で私を下から覗き込んでいる。

    愛らしい。

    またしても視野が狭まりそうになりながらも息を大きく吐いて気持ちを切り替える。
    ここへは私だけが楽しむ為に来たわけではない。
    「……失礼致しました。では、プライド様足元が滑りますので気を付けて参りましょう」
    熱が上がっていた頭もだいぶ落ち着き、プライド様を御守りする為にと傘の位置と足元に注意して、私達はやっと歩き出した。



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