花束みたいな恋かもしれない「ご用でしょうか?」
ハン理事に呼び出され、わたしは浴室に入った。
彼は真っ白い陶器の湯船に浸かって、天井を見上げていた。
わたしの方を見ることもなく、低くかすれた声で呟く。
「髪を洗ってくれ」
そんなことで呼び出したらしい。
「かしこまりました」
わたしはハン理事の頭のほうに、スーツのまま、濡れた床の上に膝をついた。
いつも使っているシャンプーとコンディショナーは横に置いてある。
わたしはシャンプーからポンプで中身を手のひらにのせ、ハン理事の髪に触れた。
柔らかな質感の髪に、シャンプーをつけて、泡立てて行く。
なるべく丁寧に、やさしい手つきを心がけた。
シャンプーの、花束のような香りが鼻をくすぐる。
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