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    mee30232362

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    mee30232362

    ☆quiet follow

    変わらない毎日をあの人と。変わらない日常。
    変わらないあの人。

    変わったのは、私だけ。


    ***


    あの一件以来、今まで以上にスケートに打ち込む事にした。
    余計なことは考えず。
    考えず。

    …考えず。

    今はプリキュアとしても、選手としても、ただ前に進むだけ。

    それだけなのに…。

    分かっているはず。
    なのに、心が付いてこない。

    「・・・・はぁ」

    と、ため息ひとつ。
    変わりない日常の中に、私はいた。

    ビューティーハリーショップは今日も盛況で、ほまれはみんなと一緒に接客をしていた。

    時刻は昼時。
    客足も少しずつ途絶え始めて、最後にいたお客さんも扉を閉めた。

    「ありがとうございました」

    頭を下げてそれを見送る。

    ほまれは店内を見渡し、ゆっくりとソファに腰を下ろした。
    いつの間にかその場にはひとり。

    2階からは賑やかな笑い声。
    はなたちが話す声。

    聞きながら目を閉じる。

    変わらない。
    何も、変わってない。

    いつもと変わらない、よね?


    知ってしまった。
    ハリーの秘密を。

    私には辛くて。悲しくて。
    苦しくて…。

    でも私は決めたんだ。
    何も見なかった事にしようって。

    ハリーがいつか、自分の口から話してくれるその日まで。

    それまで続く…日常を、変わらなく過ごすって。


    コト。

    物音がして目を開けた。
    そこには笑顔の彼。
    机にはチョコレートアイスのカップがあった。

    「なっ⁉︎何っ」

    顔が赤くなっていくのが分かって、悟られない様に目を逸らす。

    「どーぞ」
    「な、何?」
    「今日は濃厚チョコレートアイスや」

    いや、分かる。
    それは、分かるんだけど。

    「いつも頑張ってるほまれに、イケメンからのプレゼントやで♪」

    茶化して笑うその笑顔も、変わらないはず。

    それなのに…。

    目が合わせられずにほまれは俯いてアイスを見た。

    「1つしかないさかい、早よ食べ?」

    スプーンをほまれの前に置いて、ハリーは隣に座った。

    「みんなは?」
    「はぐたんとお昼ご飯中や。店番は俺とほまれでする言うて来た」
    「そっか」

    ハリーの顔が見れず、アイスをただ眺めながら。

    私、いつも…
    ハリーとどんな風に話してたんだっけ?

    上手く言葉が出なくて。
    何となくアイスを一口頬張る。

    「疲れた時は甘いものや♪」

    甘い。でも、少し苦い。
    大人な味。

    気を遣ってか、ハリーもこちらを見ないまま。

    「ほまれ…また何か隠してるんやろ?また、何か抱え込んでるんちゃうか?」

    心臓が高鳴るのを感じた。
    胸が苦しい。

    「なん…で…?」

    何でこの人にだけは、嘘を付けないんだろう。

    何でいつも、そんな私に手を差し伸べてくれるの?

    1番大切な人がいるのに…

    それは私じゃないのに…


    ほまれは俯いたまま立ち上がる。

    「何で…っ?違うじゃんっ」

    隠していたかった気持ちが、溢れ出す。
    だってまだ、私はハリーが大好きだから。

    「何か隠してる?私が、抱え込んでるの?私じゃなくて…それはハリーでしょ?!」

    言ってしまった。
    俯いたままハリーを見ることが出来ない。

    頭には、あの女の子がちらつく。
    忘れたいけど。
    無かったことには出来なくて。


    ハリーが立ち上がった。

    怒らせてしまったかな?

    恐る恐る視線を上げてハリーの方を見ると、


    ぽんっ


    と頭に温もりを感じた。
    変わらない、大きなその手で優しくほまれの頭を撫でる。

    「よう分からんけど、ごめんな。
    ほまれにはたぶん、めっちゃ心配かけとる気ぃするわ」

    ほまれは顔を上げる。
    ハリーはいつもの優しい笑顔だった。

    「ほまれは察しもええし、それでいて人への気遣いも出来る子や」
    「・・・・?」
    「俺はそんなほまれに、甘えとるんかもしれん」

    ハリーはバツが悪そうに目を逸らす。

    その瞳に映るものは、何?


    「ごめんな」
    「べ、別に…ハリーも私のこと、心配して言ってくれたのに。なんかごめん」

    やっぱり、今すぐ受け入れるなんて出来ない。

    私、きっとあの女の子に嫉妬してる。
    悔しい。

    ハリーのこと、何にも知らなくて。
    本当はもっと、たくさんハリーのことを知りたいのに。

    きっとハリーは、何も教えてくれないんだ。

    「じゃあ、なんかあったら、最初にほまれに話してもええか?」
    「いいけど」

    ハリーはいつものように笑う。
    私も今、ちゃんと笑えてるかな?

    「そん時はたくさん慰めてーな」
    「ヤダよ」
    「ほまれヒドいっ!」

    ハリーは何も言わないし、私も何も聞かないし。

    何でもない日常の、
    こんな時間を少しずつ。
    あの子の知らない二人の時間を、
    少しずつ、重ねていけたらいいな。

    …なんて。


    少しの間笑い合って、ハリーは少しだけ腰を屈める。
    ほまれの耳元で、

    「ほまれは特別な。
    後でチョコミントもあげるさかい、部屋に取りにきーや?」




    End***



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