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    mee30232362

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    mee30232362

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    ずっと一緒に。誰もいない静かな森の中。
    大きな木が一本。
    緑が風になびいている。


    ***

    ビューティーハリーショップがあったその場所に、私はいた。

    ほまれは何もなくなったその場所をじっと見ている。

    風がそっと髪を撫でていく。

    瞳を閉じると、昨日のように思い出す、プリキュアとして戦った日々。
    ビューティーハリーでみんなと一緒に店を手伝ったり、はぐたんの成長を喜んだり…、

    ハリーに恋したあの日々を。


    成長したはぐたんとハリーは、未来へと帰って行った。
    それを見て、私は身を引くことにした。

    身を引く、なんてカッコいい事を言えば聞こえは良いけど…
    私はこの想いを、ハリーに告げる事は出来なかった。

    ハリーの横にいたはぐたんは綺麗で可愛くて、とても可憐で。

    私が叶う訳がない。

    でも何より、はぐたんだから。
    私の大好きな、はぐたんだから。

    2人が未来で幸せになってくれたら嬉しい。
    この思いに偽りはない。

    今はまだ思い出すと胸が痛むけれど、きっと素敵な初恋だったと思う日が来るはず。


    カサッと、草を踏む音が聞こえた。
    ほまれは目を開く。
    こんな場所に来るのは、たぶんあの4人の誰か。

    カサカサと足音が近づいてほまれが振り返る。

    「誰?」

    笑顔で振り向くほまれ。
    でもその人を見て、ほまれは息を飲む。

    「・・・なん、で?」

    そこにいたのは、赤い髪に黒いジャケット。
    何度も、何度も思い出しては涙した、その顔がまっすぐにほまれを見ている。

    「なんで?夢…?」

    ほまれの頬を、涙が伝う。

    嬉しい。
    でも、少し複雑で、戸惑いを隠せない。

    「夢ちゃうわ」

    ハリーはそっと、ほまれの頬に手を添え、親指で涙を拭う。

    「ほらな、あったかいやろ?」

    言って笑った。
    ほまれが小さく頷く。

    「色々あって遅くなってもうた。
    けど、決めとったんや。どんな結果になっても、またこの時代に来ようって」

    ほんの数ヶ月離れていたいただけなのに、ハリーの笑顔が懐かしい。

    「またなって言うたやろ?」
    「・・・でもっ、」

    ハリーにとってここは、簡単に来れる場所じゃない。
    またなって言われても、別れは辛いだけだった。

    だって、

    彼女は…?
    ハリーの、想い人。

    ほまれは頬にあるその手をそっと握り、自分の頬から離す。

    彼女に、申し訳ない気がして。

    「はぐたん…は?」

    ほまれはハリーから目を逸らす。

    「はぐたん?はぐたんはもちろん、プリキュアとして未来の世界を守っとるで。まぁ、クライアス社もなくなってもうて、平和なもんやけどな」

    「でも…っ!そうじゃなくて…」

    ほまれが口籠る。

    「・・・・?」
    「でも…っはぐたんは、ハリーの大切な人なんでしょ?!今度こそ、ハリーがちゃんと守ってあげなきゃ…」

    言いながら涙が止まらない。
    諦めたはずの恋なのに…。

    そんなほまれに、ハリーは優しく微笑んだ。

    「はぐたんは俺の恩人や。今でも大切だし、何を差し置いても誰よりも会いたいし、守りたい思ってた人や」

    ハリーは触れたままの手をぎゅっと握った。
    いつの間にか、その顔に笑顔はない。

    「でも、はぐたんはもう何も出来ん赤ちゃんやない。自分の足で未来に歩いていける。俺はもう、必要ないんや」
    「そんなこと…」
    「ビシンもリストルも、自分の足で前に進んどる。せやから、」

    一瞬間を置くハリー。

    「せやから俺も、俺のためにここに戻って来たんや。はぐたんのミライクリスタルの力でな」

    ハリーが握ったほまれの手を自分の方に引き寄せる。
    急に引っ張られて倒れ込むほまれをぎゅっと受け止めて、両腕で包み込んだ。

    「はぐたんは大切な人や。忘れたくても忘れられへん。でも、それは、好きやのうて…憧れで、恩人や」

    心臓がはち切れそうなくらいにドキドキしている。

    「ほまれ」

    名前を呼ばれても恥ずかしくて顔を上げることが出来ない。

    「この時代に来て、最初は誰も信じられへんかった。でも、ほまれが俺を変えてくれた」

    ハリーは腕の中のほまれを覗き込む。
    やっと、ほまれが顔を上げて。

    目が合った。

    「俺は、ほまれと一緒に前に進みたいんや。ほまれと一緒の、未来を見たいと思った。この時代で」

    ハリーは真っ直ぐほまれだけを見ている。
    いつになく真剣な眼差しで。

    「好きやで。ほまれが、大好きや」

    言われてまた、涙が込み上げる。
    諦めたはずの恋だったのに。

    「愛しとる」

    やっぱり、諦められなかった。

    「私もだよ、大好きっ」

    ほまれもハリーの背中に腕を回してぎゅっとしがみつく。

    「ありがとな。
    ほまれはずっと俺の隣におってくれた。これからもずっと、ずっとこんな俺に付き合うてな?」
    「うん、…うん。
    ずっと、一緒に…居た…いっ」

    ほまれが声を絞り出す。

    嬉しくて。
    涙が止まらない。

    そんなほまれの頭を、ハリーはいつものように優しく撫でた。



    たくさん辛いこともあったし、
    これからもたくさん色んなことがあるけど、これからは、ずっと一緒に。
    色んなミライを、2人で。


    まだまだキュンと恋したい。



    End***














    ぽんっ

    と軽い音を立てて、ハリーはハムスターのような小動物に変わる。
    不意のことだったが、ほまれはバランスを立て直してハリーを両手で受け止めた。

    「き、緊張したぁ〜〜〜〜〜」

    ほまれの手の中でぐったりする。

    「ここまで来て、ほまれにフラれたらどないしよー思ったわ」

    急な展開に笑いが込み上げる。
    ほまれは笑顔でハリーの頭を撫でた。

    「ありがとう。
    おかえり、ハリー」
    「ただいま」


    ***
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