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    mee30232362

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    mee30232362

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    ネズミさんと狼さんと。「はぁぁぁぁ〜〜〜〜」

    と、ハリーは盛大に溜息を吐く。



    ***

    最近、はぐたんの夜泣きが酷い。
    夜泣きは成長してる証だと思ってはいるが、実際の所やはり眠れない日々が続けばなかなか辛い。

    世の母親はほんまにすごい。

    「はぁ…」

    ビューティーハリーショップは思いの外盛況で、1人の時間は事務仕事があったり、はぐたんのお世話をしたり。
    疲れた顔をしていたつもりはなかったが、たまたまハグマンで会ったはなのママさんが、はぐたんを一晩預かりたいと申し出てくれた。

    「何してるんやろ、俺」

    はぐたんをはなの家に預けた帰り道。
    とぼとぼと街を歩く。

    はぐたんを元の姿に戻したい一心で過去に来て、生活の為にビューティハリーショップを開いて、はなたちプリキュアや街の人に助けてもらいながらはぐたんと生活して。

    それなのに素直になれなくて。
    みんなを信用し切れなくて。

    空を仰ぐと、すっかり日は暮れ丸い月が輝いていた。


    ーーマジでキツい時はひとりで抱え込まないで。


    不意にその顔が浮かぶ。

    ・・・ほまれ。

    最近スケートの練習が忙しくてなかなかビューティーハリーに顔を出さない。

    と、言うのはたぶん何かの口実で。
    俺をちょっと避けている…気がする。

    抱え込まないも何も、相手がおらんかったら意味ないやんけ。

    「その言葉そっくりそのまま返したいわ」

    ほまれが今の俺を見たら、どう思うだろう。

    って、何でほまれやねん!!

    「やっぱ、なんか疲れとる…
    今日は早よ帰って寝よ…」


    一人で歩きながら、ふと近視眼を覚えた。
    まだ知らないことも多いこの街。

    でも、この道には覚えがあった。
    この先には、確か公園がある。
    雨宿りが出来る、大きな滑り台のある公園。

    ハリーはそのまま歩いた。

    ほら、公園が…。


    柵越しに滑り台を見ると、暗い公園に電灯が灯り、見知った顔があった。

    「ほまれ…?」

    それともうひとつ、意外な顔。

    「チャラリート?」


    咄嗟に身を隠す。
    でも、目を離すことが出来ない。

    確か今日も、ほまれは練習でビューティハリーには来れないと言っていたはず。

    それなのに何で?
    何でよりによってチャラリートと?

    だって俺は、ほまれに避けられてるのに…?


    頭の中が真っ白になる。

    「・・・なんやねん」

    悔しいような、腹立たしさ。
    怒るのはお門違い。

    ほまれは素直じゃない所があるが、基本誰にでも優しい。

    ほまれの交友関係は、俺には関係のないこと。

    何や2人、こんな時間に何してるんや〜って、いつものように笑えばいい。
    ただそれだけ。
    それだけなのに、前に進むことが出来ない。

    じっと見ていると、すぐに2つの影に動きがあった。
    笑い合う2人。
    声は聞こえないが、ほまれがチャラリートに手を振っているのが見えた。
    ほまれは踵を返して出入り口に向かう。

    ・・・・っ!

    チャラリートと目があった気がした。


    ***

    少しだけ下がって、公園からは見えない位置にいた。
    たぶん、ほまれはこっちに来る。

    逃げる…?否…
    それも変か。

    色々と考えながら、暗がりからほまれを見ていた。

    今まで味わったことのない感覚。感情。

    逃げたいような、でも、会って話がしたい。
    俺がここにいることを、伝えたい。

    出入り口で少し立ち止まっていたほまれが振り返り、ハリーに気付く。

    「ハリー…なんで…?」

    不思議そうに、こちらを見ている。

    「はぐたん、今日ははなん家にお泊りやから連れてったんや」

    ハリーはゆっくりとほまれに近づく。
    いつものパーカーに制服のスカートだが、少しだけ雰囲気の違うほまれ。
    髪には星の髪飾りがあった。
    綺麗なほまれの髪によく似合う。

    でも。

    それも、これも。

    全部が気に入らない。

    腹の虫が治まらない。


    「・・・・?」

    何事もないようにこちらを見るほまれにイライラする。
    それを必死に隠して口を開いた。

    「今日は練習やなかったんか?」
    「・・・?練習の帰りだよ」

    キョトンとした顔でハリーを見ている。
    ほまれは言葉を続けた。

    「少し散歩してただけ。
    今ね、そこでチャラ、」

    言いかけたほまれの腕を、ハリーがぎゅっと掴む。

    今、ほまれの口からその名前を聞きたくなくて。

    「・・・っ?!
    痛いよ、ハリー?」

    少し驚いたような、困ったような顔のほまれ。
    言われてハッとする。

    ほんま、何してるんや…俺は。

    「すまん…、なんか力加減間違えてもうたわ」

    ハリーは掴んだ腕の力を緩める。
    目を閉じて、小さく息を吐く。

    そして、反対の手でそっと、星の髪飾りに触れた。
    少し見覚えのある髪飾り。

    「お祭りの時のやんな?やっぱ、よう似合とる」

    精一杯、笑ってみせた。
    恥ずかしそうにほまれが目を逸らす。

    「送ってくわ」

    普段は素直やない癖に。

    「うん。ありがとう」

    時々そうやって可愛い顔を見せる。

    ハリーは掴んだままの腕を滑らせて、ほまれの手を握った。
    ほまれがアイツの所に行かないように。

    疲れから?
    否、たぶん…違う。

    ただ、今はもう少しだけ一緒に居たい。

    でも、

    今は上手く笑える気がしなくて…。

    ほまれの手を引っ張りながらハリーが少しだけ前を歩く。

    「あのさ…ハリー。その…やっぱ何かあった?」
    「何もあらへんけど」

    俺にはまだ、やることがある。
    ほまれにも、隠してることがある。

    何か…あったらあかんのや。

    でも…
    今日は、後少しだけ…。

    「あと少しだけ、散歩付き合うてくれへんか?」

    背を向けたままのハリーの言葉に、ほまれが笑顔で返す。

    「うん。少しだけね」

    手を繋ぐ帰り道。
    月明かりが静かに、歩く2人を照らしていた。



    End***



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