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    mee30232362

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    mee30232362

    ☆quiet follow

    君と未来 1ひとりになると、ふと思い出す。
    いつも見ていたアイツの横顔。

    もう会えない、私の初恋の人。


    ***


    学校も練習もない、休日の午後。

    「ねぇ、ほまれ」

    学年もひとつ上がり、ほまれはスポーツ特進クラスに戻った。

    そのせいか、学校では格段に会う機会が減り、久しぶりに会ったさあや。

    今までと何も変わらないふたり。
    カフェでたわいもない話をして、笑い合う。

    「変なこと、言うかもしれないんだけど」

    少しの沈黙の後、急にさあやの笑顔が消えてが真面目に話し出す。

    「ん?」

    並んだ紅茶と食べかけのケーキ。

    「私…ルールーたちが未来に帰ってから、ずっと気になってた事があるんだ」

    もう懐かしその名前。
    ほまれはそれを聞いて、ケーキを食べていた手を止める。

    「一度だけ、あれは映像みたいなものだったけど。私たちハリーと一緒にハリハリ地区や時間の止まった未来を見たじゃない?」

    ーープリキュア。

    私たちがそう呼ばれていたあの頃。

    クライアス社をみんなで倒し、はぐたんはキュアトゥモローへと成長した。
    そしてルールーと、ハリーと、クライアス社にいたみんなは、トゥモローのミライクリスタルの力で未来へと帰っていった。

    あれから半年。
    私たちには日常が戻ってきた。

    たくさんの思い出を胸に、はな、さあや、えみる。
    それぞれが新しい道を歩み出そうとしていた。


    それはほまれも例外ではなく。

    あれからほまれはもう1つ、大会で優勝を飾った。
    毎日練習を頑張って、自分を磨いて。

    いつかアイツを、見返してやるために。

    あの失恋から立ち直ったと言えば嘘になる。
    でも、ようやく少しずつ思い出を口に出せるようにはなった。

    不意に懐かしいその名前を聞く。
    何度も思い出しては胸にしまった、アイツの名前。

    胸がぎゅっと締め付けられる。

    「あったね。そんなこと」

    ほまれは感情を抑えて、自然に振る舞う。
    さあやは綺麗な顔でまっすぐにほまれを見ていた。

    「のびのびタワーがあったのを覚えてる?あそこは確かに、はぐくみ市の未来だったはず」

    ほまれは少し首を傾げる。

    「そうだね」

    さあやが何を言いたいのかわからない。
    ほまれは静かに続きを促す。

    「ハリーは確か、”ここよりずっと未来”から来たって言ってたよね?」

    その質問には、頷いて返す。

    「ここよりずっと未来の世界って、どの位先なのかしら?」

    言われてほまれはきょとんとする。

    「・・・・?
    わかんないけど。言葉の通り、ずっと先ってことかな?」

    考えた所で途方も無い気がして、あまり気にしていなかった。

    ハリーだけじゃない。
    ルールーも、トゥモローも口にしていた。
    “未来の世界”。

    だって考えたって、もうハリーやみんなは帰ってこない。

    「でも、あの映像の景観は…今のはぐくみ市とそんなに変わらなかった気がするの」

    あまりはっきりは覚えてはいないけど。
    言われてみればそうだった気もする。

    「10年、50年先くらいなら分かるけど、未来って100年とか数百年って単位で言うのなら…のびのびタワーやはぐくみ市は、まだあるのかな?」

    さあやは紅茶を手に取り、一口飲む。
    あのね、とさあやが切り出した。

    「記憶がハッキリしないんだけど、”ここよりずっと未来”、遠い未来の世界って言う感じの言葉を使ったのって…ハリーだけじゃなかったかしら?」

    言われて思い返す。

    “未来”。
    ルールーがよく口にしていた言葉。

    ずっと遠い、未来?

    「どうだったかな…?よく思い出せないけど、そんな気もする」

    でも、だから何なんだろう。
    さあやの言いたいことがよくわからない。

    「1秒先でも未来だし、何百年先だって未来って言葉に違いはないの」

    さあや自身も、考えながら言葉を話す。

    「ハリーは…いつの未来かを、悟られないようにしたかったんじゃないかな、なんて」

    言われて少しだけ、理解する。
    ハリーたちのいる未来がもし、私たちが想像しているより近い未来だったら。

    いつか私たちは、また巡り会えるのかもしれない。

    …と、言うこと?


    「でも、ルールーや、他のみんなも。ハッキリとは未来について話さなかった」

    さあやはケーキ用のフォークを手に取る。

    「何言ってるんだろうね、私。
    何でもない。忘れて」

    さあやはケーキを口に運んだ。

    「うん。美味しい」
    「…うん」


    そんな訳、ない。

    だって、みんなはもう”遠い未来”に帰ったんだ。
    ハリーにはもう会えない。

    でも何故だろう。

    何かがすとんっと、心にハマったような気がした。

    何でかな。

    何か…。


    何か大切なことを、私は忘れているような気がした。



    ***
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