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    mee30232362

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    mee30232362

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    君と未来 2私は何かを忘れている?


    あれから何度目かの冬が来た。

    それは日常の忙しさに埋もれては、不意に思い出す気持ち。

    何かを忘れている、その気持ちさえ忘れてしまいそうになる。


    はなは地元の大学、さあやは医大。
    えみるはシンガーソングライターとしてデビューしながら女子高生をしている。
    ほまれはひとり家を出て、スポーツに力を入れている隣の県の大学へと進んだ。


    プリキュアのこと。
    ハリーのこと。

    全てが大切な思い出で、そのひとつひとつが今の私に繋がっている。

    ハリーは、元気にしているんだろうか?
    …幸せに、なれたんだろうか?

    本当はあまり考えたくはないが、今となってはもう答えもわからない。

    それでいいんだと…思う。

    目を閉じると、今でも鮮やかに思い出す。
    彼の真っ直ぐな青い瞳…、


    ーーまただ。

    また、ハリーのことを考えている。

    もう終わった恋なのに。
    誰もが経験する、甘酸っぱい初恋。
    ただ、それだけなんだ。


    「・・・・はぁ」

    吐く溜息が白く変わる冬の夜。
    ほまれはスケートの練習を終えて、ひとり街を歩いていた。








    「ほまれ?」

    言われて振り返る。
    ビューティーハリーの玄関前にある階段にひとり座っていたほまれは、その声の主に少し顔を赤らめた。

    「何しとるん?もうすぐ春とは言え、寒いやろ」

    言いながらハリーは自分のジャケットを脱ぐ。

    「ほれ」

    差し出されたジャケットに手も出さず、ほまれは首を振った。

    「いいよ。私は寒くないし」

    短く言って視線を戻す。
    ハリーは無言でそれをほまれの肩に掛けた。

    「いいってばっ」

    と、ジャケットを脱ごうとしたが、やはりその手を止めた。
    ハリーの、匂いがする…。

    「相変わらず、素直やないなぁ」

    笑いながらハリーはほまれの横に座った。

    「別に…、本当寒くないし」

    ジャケットをぎゅっと握る。

    ハリーには大切な人がいる。
    たぶんそれは、キュアトゥモロー。

    それなら。
    私の気持ちを知っているのなら、本当は…優しくなんてしないで欲しい。

    でも…、


    ーー今日はハリーが未来に帰る、最後の夜だから。

    今日だけは少し、もう少し。
    ハリーの隣にいたかった。







    白昼夢のように襲われる懐かしい記憶。

    あの日…、
    笑顔で別れようと決めた私たち。

    でも、アイツの顔を見ると、やっぱり堪えることが出来なくて。
    私はそっとビューティーハリーを抜け出した。

    少しだけ頭を冷やしてすぐに戻るつもりだったし、パップルたちもいて賑やかだったから誰も気付かないだろうと思った。

    なのに。

    あの時やっぱり、ハリーは来てくれた。







    ハリーの顔が見れなくて。
    ほまれはジャケットをぎゅっと掴んだ。

    「せっかく逃げて来たのに…」

    ぽつりと呟く。

    「空気読んでよね」

    俯いて、そのまま苦笑する。

    「それはすまんな。でも、ほまれにはどうしても伝えたいことがあって」

    ハリーはいつものようにそっと頭を撫でる。





    ***
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