君と未来 4ビューティハリーの外階段で。
2人で静かに過ごす、最後の夜。
「私に伝えたいこと?今更何?」
ハリーは私の想いを受け入れてはくれなかった。
悔いはない。
でも、やはりまだ忘れることは出来なくて。
そんな複雑な気持ちを、勘のいいハリーなら気付いているんじゃないだろうか。
けれど、話は全く違う所にあった。
「俺たちは…ここから6年先の未来から来たんや」
予想外の告白に、ほまれは驚くいてハリーを見た。
「何…言ってんの?だってハリーは、ずっと遠い未来から来たって…」
「言うてない。前にパジャマパーティーしたやろ?あん時、俺は具体的に言うた。でも…」
ハリーはどこか遠くを見ているようだった。
「でも、みんなはすぐにそれを忘れよった」
言われても尚思い出せない。
「わからんけどやっぱり、未来を知り過ぎるんはあかん言うことなんやと思う」
ハリーは少し俯いてから、ほまれを見た。
「せやから、ほまれは今日のことをきっと…忘れると思う。けど、どうしても伝えておきたかったんや」
まっすぐにほまれを見る青い瞳。
「俺は必ず、未来の世界でほまれを見つけ出す。何があっても…必ず」
驚きと、嬉しさ。
でも、きっと忘れてしまう寂しさ。
色んな感情が溢れて、涙になる。
「そん時は…もう一度、俺の想いを聞いて欲しい」
*
ほまれはハリーの腕をそっと握って、静かに降ろした。
一歩後ろに下がって俯き、一呼吸置く。
やはり思い出せない。
けれど、思い出せない思い出があることを、思い出した。
「そっか。また、会えた。嬉しい…」
顔を上げる。
嬉しいのは本当。
でも、たぶん…私は笑えていない。
ハリーはそんなほまれをただ見つめていた。
「はぐたん…キュアトゥモローは?ちゃんと想いは伝わったの?」
聞きたくなかった。
本当はそんなこと知りたくない。
これを聞いたらきっと、今度こそ本当に終わる気がする。
ハリーは少し驚いた顔をしたが、すぐに優しい笑顔に戻って答えた。
「トゥモローには、ちゃんと伝えた。ありがとうって伝えて、アイツと仲間の幸せを…ちゃんと見届けて来た」
今度はその笑顔をほまれに向ける。
「せやから、次は俺の番や。俺が、ほまれに想いを伝える番」
ハリーは少し目を瞑る。
はぁ、と深呼吸をして、ほまれを見た。
「俺は、ほまれが好きや。ずっと、伝えたかった。ほまれが俺を好きや言うてくれて、本当はすぐにでも…抱きしめたかった」
ほまれをまっすぐに見る。
それは、あの日と変わらなかった。
「それが出来んかったんは俺が弱かったからや。俺だけが幸せになるなんて…出来ん思った。本当は諦めるつもりでいた」
ハリーはもう迷いのない顔をしていた。
ほまれもそんなハリーから目を逸らすことが出来なくて。
ただ、静かに言葉を聞く。
「でも、まっすぐなほまれを見て…やっぱりあの日、決めたんや。俺も、ほまれに…想いを伝えようって…」
少しだけ笑顔が見える。
「俺は、輝木ほまれが大好きです」
何度も拭った涙が、また溢れ出す。
「…遅いよ…」
小さく呟く。
忘れようと思ってた。
何度も思い出しては、悲しみを乗り越えて来たのに。
「何年…経ったと思ってるの?もう…待ってる訳…ないじゃん…」
終わった恋なんだ。
甘酸っぱいただの初恋。
何度自分に言い聞かせたかわからない。
「あの日から覚悟はしとった。でも、」
ハリーは笑った。
「何度でも、何度でも、惚れさせたる」
涙でもうくしゃくしゃの顔。
ほまれも笑う。
手を伸ばして、一歩前に踏み出した。
その背中に腕を回して、ぎゅっとしがみ付く。
何度も夢見た、この瞬間を。
「待ってなかったけど…。
ずっと、ずっと大好き…でした」
ハリーもほまれの背中に腕を回す。
もう一度、その頭を優しく撫でた。
耳元でそっと囁く。
「ありがとう。遅くなってごめんな。
愛してる」
End***