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    mee30232362

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    mee30232362

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    初詣吐く息も白くなる寒さの中。
    久しぶりにふたりで並んで歩く。

    ***

    冬休みが終わって最初の休日。
    私たちはビューティーハリーにいた。

    クリスマスにお正月。
    スケートの練習時間もいつも以上にとることが出来て、冬休みも充実した時間を過ごすことができた。

    「そう言えば今年は初詣行ってない」

    何の気なしに呟く。
    家族ともはなたちともタイミングが合わず、冬休み中は神社に足を運べずにいた。
    まぁ、行かなくても問題はないのかもしれないが…。

    「ほんなら、今から一緒に行こか?俺も初詣まだ行ってへんし、買い出しもあるし」

    ハリーの言葉に、みんなが一斉にこちらを見る。

    思わぬ展開に驚いているほまれを他所に、ハリーはさっさと身支度を整えていく。

    「はぐたん寝とるし、ちょっと頼むわ」
    「うん。わかった」

    誰に言うともなくハリーが声を掛け、はながそれに応えた。
    ハリーがほまれを見る。

    「ほな、行くで。ほまれ」
    「え…?あぁ…うん。
    ちょっと行ってくるね」

    コートをとってハリーの後を追った。

    他意はないのだと思うけど。
    でも、2人きりになるのは何だか久しぶりな気がして。
    少し気まずい気持ちもある。

    「いってらっしゃーい」

    はなが笑顔で手を振っていた。

    その横で、さあやが少し複雑そうな、心配そうな顔でこちらを見ていた。





    ほまれを…初詣に誘ってしまった。
    もう初詣と言う時期でもないが。

    さあやの視線が少し痛い…。
    もちろん深い意味はない。

    あの大会の日から、一緒に出掛けていなかったから。
    前は意識もしていなかったけど、2人で買い物やはぐたんと散歩に行ったりしていたのに。

    だからと言って、ほまれは俺を避けたりはしていなかったし、俺もほまれには今まで通り接しているつもりだった。

    でも。

    まだどこかにわだかまりがあるような気がして。

    「やっぱ、全然人おらんな」
    「まぁ、こんなもんだよね」

    たわいない会話をしながら、並んではぐくみ神社へ向かった。

    拝殿に着くと、一礼して、柏手を打つ。
    目を閉じて、願うことは…。

    未来を、みんなを、プリキュアと一緒に守れるように。

    今の俺の願いはそれだけ。

    でも、それからもう1つーー。


    目を開いて一礼する。
    隣を見れば、胸の前で両手を合わせ瞳を閉じるほまれの姿があった。

    整った綺麗な横顔。

    ーー輝木ほまれは
    ハリーが大好きです。

    「俺には、勿体ない言葉や…」

    小さく呟く。

    ほまれが目を開いて一礼する。

    「何か言った?」

    見られていることに気付いてか、ほまれがハリーを見た。

    「何も言っとらんで」

    と、誤魔化す。

    「行こか」
    「うん」

    拝殿に背を向ける。

    「未来にも初詣ってあるんだね」

    静かな境内。
    人はほとんどいない。

    「あるで。昔からの風習は変わらんのかもしれんな」

    少し歩きながら。

    「長々と何お願いしとったん?」

    聞いて教えてくれるものでもない気はしたが。
    何となく会話で聞いてみる。

    「別に、普通のことだよ。毎年大体一緒の願い事だけどね」

    ほまれも気にもしていないように言いながら横を歩く。

    不意に足元の段差に気付いて。
    一段降りて振り返り、何気なく手を伸ばした。

    「・・・・・」

    ほまれが立ち止まる。
    少しだけ俯いたようなその顔を見ると、戸惑ったような、困ったような顔をしていて。

    ハリーは差し出した手の意味を悟る。

    それをひとりぎゅっと握り、そのまま下ろした。

    すまん…と言い掛けたが、ほまれは一瞬瞳を閉じて、はぁとため息を吐くと
    顔を上げた。

    「いつもはね、家内安全とか健康で一年暮らせますようにとか、そう言う普通の願い事してるんだ」

    ほまれがハリーを見て笑う。
    勢い良くジャンプして段差を飛び降りた。

    「でも、今年は決まってるじゃん」

    その笑顔は、あの大会の時と同じで、美しい。

    「イケメンの彼氏が出来ますように、だよ」

    ほまれはそのまま少し歩いて、ハリーに背を向けた。
    ハリーはほまれの後ろ姿を見つめる。


    胸が、チクリと痛んだ。

    ほまれの願い事が本当にそれなのかはわからないが。


    ほまれの想いを受け入れることが出来なかったのは自分なのに。

    いつかほまれが、別の誰かの隣にいる姿を、


    見たくはなかった。



    ーーホンマ、自分勝手やな。


    ほまれの背中を見つめる。
    もう二度と、届くことのないその背中。

    突き放したのは…俺だ。


    「行くよ、ハリー。まだ買う物あるんでしょ?みんなも待ってる」

    ほまれが振り返る。
    もう、彼女の目に涙はない。

    「ああ…せやな。早よ帰らんとな」

    笑うほまれに笑顔で返す。
    たぶん、ぎこちない笑顔。


    前に進むほまれを応援したいのに。
    素直にそれが出来ないのは、たぶん。

    あの言葉に、後悔があるから。
    わだかまりを抱えているのは…ほまれじゃない。

    「で、ハリーは?何お願いしたの?」

    歩きながらほまれが聞く。

    「ん?そらもちろん。商売繁盛やで!」

    笑って見せる。
    そんなん、嘘やけど。


    お願い、せんければ良かったな。

    ーーほまれの願いが叶って、幸せにしたって下さい。

    なんて。




    ***End



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