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    mee30232362

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    mee30232362

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    巡る未来。「…はな?」

    声を掛けても返事はない。
    人工呼吸器で辛うじて息をしている。

    「はな…何で…」

    触れる頬はいつもと同じで温かい。

    「何で…さっきまで、一緒にしゃべって…」

    昼に街でランチをして。
    少しだけ散歩して。

    急に、倒れた。

    その頬を撫でても、髪に触れても、もう動かない彼女。

    「我々も手を尽くしましたが…」

    病院の最奥部にある集中治療室。

    「お腹の子は…?」

    「・・・・」

    医師は無言で首を振る。

    「はな…せめて彼女だけでも…っ」


    2040年ーー

    医学は画期的に進歩していた。
    それでも出産は命がけであることに変わりはない。

    医学は進歩しても、人はやはりか弱い。

    「奥様は一命を取り留めましたが…余力はあまり…」

    一人娘のはぐみが産まれて10年以上。
    2人目になかなか恵まれず、それでも明るく生きて来た。

    やっと、お腹に宿った新たな命…だった。


    「何で…何で、はなが?」

    問い掛けても誰も答えない。

    「何で…なん、で?」

    子どものように言葉を繰り返す。

    ーー余力はあまり、ない。

    「僕を…置いて行くのか…はな」

    そんなこと、きっと彼女も望んでいない。

    「はぐみを、置いて行くのか…?」

    涙が一筋、頬を伝う。
    ぎゅっと奥歯を噛み締めた。

    そんなこと、君は望んでいないはず。

    「はな…」

    どうすればいい?

    どうすれば…彼女を助けられる…?





    彼女は時々不思議なことを言う。
    初めて出逢ったはずなのに、

    『やっと会えた』

    と僕に告げた。

    『幸せな未来を、貴方に見せたかった』

    と。

    幸せな未来?


    君がいない未来なんて、

    そこに幸せなんて…ないのに。

    そんな未来なんて、



    ーーいらない。





    「はな、ごめん」

    ベッドの上。
    たくさんの管が付けられたはなの、その頭をそっと撫でる。

    「少しだけ待ってて。僕が、君の苦しみを終わらせてあげるから」


    言って彼は病室を後にした。






    社長室の自動の扉が開かれて、社長秘書が勢い良く掛けて来た。

    「副社長!社長はっ?!」

    副社長と呼ばれたその人は俯き、首を振る。

    「彼女はもう…二度とここには来ない」

    その言葉の意を汲む。

    「そんな…野乃さん…」

    社長秘書の彼は、はなとは古い友人らしい。
    俯いて涙ぐんでいる。

    「僕は彼女を救いたい…」

    はなは、社員からの信頼も厚い。

    「その為に、君にも、皆に協力してもらいたいと思っている」

    社長の為なら、皆喜んで協力するだろう。

    「はい!野乃さん…社長を助けることが出来るのでしたら、喜んで」

    社長秘書の彼も、涙を拭って顔を上げた。

    「今から緊急の役員会議を執り行う。各役員を集めてくれ」

    言われて、彼は慌てて部屋を飛び出して行った。

    社長を、はなを救いたい。
    彼女を失いたくない。


    その為に…、

    僕は今を永遠にする。


    「社長不在の為、今後は副社長である私が社長として指揮を執る。並びに、本日よりアカルイアス社は社名を変更し、クライアス社とする」

    反対する者は、全てクビに。

    「異論は認めない」



    End**


    読んで頂いてありがとうございました。
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