Valentine*バレンタインなんて…嫌い。
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私は…フラれたのに…。
こんなもの手渡せる訳もなくて。
大会も近くて当日はスケートの練習で渡せず、そのまま休日の今日に至る。
手元にあったのは手作りチョコレート。
「私…何してるんだろ…」
あまり器用ではないが、それなりにラッピングした手元のチョコレートを見る。
はなやさあやたちは当日にみんなに義理チョコを配っていた。
もちろんハリーにも。
「一緒に渡してもらえば良かったな…」
ビューティーハリーの2階。
午後からは練習があるので、みんなより早めにお昼にして、そのまま帰る準備をしていた。
窓から入る日差しは暖かい。
チョコレートをもう一度見て溜息をひとつ。
鞄に入れようとすると。
「何やそれ。バレンタイン?」
不意に後ろから声がする。
「・・・・ハっ!ハリー?!」
驚いて変な声が出る。
「すまんすまんっ!驚かせるつもりはなかったんやけど」
振り返ったほまれがハリーを見る。
彼の顔に、思わず自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
「覗き見?」
「ちゃうって!」
告白が…上手く行かなくても、私たちの関係は何ら変わりなかった。
ハリーが気を使ってくれているのかもしれない。
でも、今の私にはそれが一番嬉しかった。
ほまれはぎゅっとチョコレートの箱を握る。
「それ…ほまれの?」
ハリーがチョコレートを見る。
小さく頷くほまれ。
あの日、もっともっと勇気を出して告白したんだ。
チョコレートくらい…渡せば…きっとハリーは受け取ってくれる。
フレッフレッ私!
ほまれが口を開く。
でも、それはハリーの声に遮られた。
「俺、ほまれからバレンタインもらってへんのやけど」
どこまでが本気でどこまでが冗談なのかわからないけど。
「くれへんの?」
と、呟いて真顔でほまれを見るハリーは、
悔しいけど…
やっぱりまだ、好き。
ほまれはハリーから目を逸らす。
ほんの少し間を置いて、チョコレートを差し出した。
「はい。遅くなったけどバレンタイン」
ほまれは真っ直ぐにハリーを見る。
知っていたんだろうか…?
これが自分の為のチョコレートだって。
「おおきにっ!ありがとう」
チョコレートを受け取ってハリーは満足そうに笑う。
渡せて良かった。
「じゃあ…私、」
言って鞄に手を掛けると。
「ほれ、これも持っていき?」
渡された小さな茶色とエメラルドグリーンの箱。
「チョコミント?」
手渡された箱に驚いて、きょとんとする。
言うと思ったわ…と苦笑するハリー。
「逆チョコや!チョコミントマカロンやて」
思わぬバレンタインに涙が出そうになる。
何で…ハリーはいつも…
そんなに優しくしてくれるんだろう?
「CMでやっててん。ほまれ好きそうやと思って」
驚くほまれを見て笑顔のハリー。
嬉しくて胸ががいっぱいになる。
涙を堪えて笑顔を作った。
「…ありがとう」
ほまれは鞄にマカロンを入れると、足早に廊下に出た。
涙が溢れないように。
ハリーに、涙を見せないように。
「練習終わったら食べるよ」
立ち止まって振り向く。
「送ってこか?」
「いいよ。お店あるし」
「そか…ほな、気ぃ付けてな」
ほまれが手を振り、ハリーも手を振り返す。
「うん、ありがとう。
行ってきます」
「行ってらっしゃい。頑張りや」
End***
みおちゃんがCMしてるチョコミントマカロンだといいな♪