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    mee30232362

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    mee30232362

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    君と私。ノックをしても返事はなくて。
    キィと軽い音を立ててcloseの看板がかかったビューティーハリーの扉を開く。


    ***

    「ハリー?さあや?はなー?」

    声を掛けても帰ってくることはなかった。
    さあやとはなは先に着いてるはずなのに…。

    不思議に思ったが、まぁ用事で出ているんだろう。


    クライアス社がなくなった。

    ルールーやハリーたちとの別れももう目の前。
    トラウムが今製作している汽車型のタイムマシンが完成すれば、ハリーたちは未来へ帰る。

    完成…しなければいいのに…。

    ーーなんて。

    考えてしまう私は、きっとプリキュア失格だ。
    せめてみんなには、こんな暗い気持ちがバレないように、と。
    努めて明るく振る舞う。



    とんとんとんっと、階段を軽快に駆け下りてくる足音が聞こえた。

    やっぱり、誰かいたんだ。

    顔を上げると同時に、階段から降りてきた彼と目が合った。

    「なんだ。またアンタか」

    興味なさ気に呟くビシン。
    ほまれを気にする訳でもなく、そのままカウンターの席に座った。

    「何してんの?」

    ほまれも何となくソファーに座ると。
    ビシンがほまれを見ていた。

    「何って…別に」

    ビューティーハリーの入り口にはcloseの看板が掛かっている。
    お客さんも来ないし、ただみんなと…ハリーと残り少ない時間を一緒に過ごしたかったからここに来た。

    「ハリーに会いに来たんでしょ?残念だね、誰もいなくて」

    含みのある言い方をするビシン。

    「別にいいよ。その内帰ってくるでしょ」

    まぁ買い出しかはぐたんの散歩か、といった所だろう。

    「それに、ビシンもいるし」

    少しビシンとも話したかった。
    もう時間もないし、ビシンは相変わらずハリーが大好きだし、私に機会はないと思っていた。

    ほまれの言葉にビシンが少し驚いた様に見える。

    「は?何言ってんの?」

    短く答えたビシンの言葉。

    「言ったでしょ。私はビシンのこと、嫌いじゃないって」

    言われてきょとんとするビシン。
    少し考えて、ぷいっとほまれから顔を背けた。

    「何で?普通、嫌いになるでしょ。いっぱい…酷いことしたし」

    言われてほまれは苦笑する。

    何でだろう?
    あまり考えたことはない。

    「何で…かな。分からないけど…」

    話す、と言ってみても別段話したい内容がある訳でもない。
    ほまれは目線を逸らしたままのビシンをまっすぐに見た。

    「人を好きになることに、そんなに意味なんていらないでしょ」

    少し意味合いは違ったかもしれないけれど、同じ人を好きになった彼。

    「ただちょっと、ビシンがどんな子なのか気になっただけ」

    私もプリキュアである前に、1人の人間。
    彼と私の違いは、たぶん仲間だったり置かれた環境だったり。
    彼なりに色々あっただろうと思う。

    「まぁ、好きになって欲しい訳じゃないけどね。押し付けはしないよ」

    笑って見ると、ビシンがちらりと横目でほまれを見た。
    目が合うと、またすぐに目線を逸らす。

    「別に…嫌いじゃないけど…」

    呟くビシン。
    でも、すぐに顔を上げて不服そうにほまれを見た。

    「まぁ、好きでもないけどっ」

    ビシンの態度に思わず笑みがこぼれる。

    「…何笑ってんの」
    「素直だなぁと思って」

    弟がいたらこんな感じなのかなぁと思う。
    素直になれない私とは、やっぱり似てないかもしれない。

    「はぁ?アンタって…」

    言い掛けたビシンを遮る。

    「私はほまれ」

    自分も使うから、アンタって言われるのが嫌な訳じゃないけど。

    もうそんなに時間もないから。
    ただ、伝えておきたかった…私の名前。

    「輝木ほまれ」
    「かがやき…ほまれ…?」

    ビシンがほまれを見て小さく呟いた。

    「ほまれでいいよ」

    もしかしたら、知らなかったのかもしれない。
    それ程に興味もなかったのかも。

    「私はビシンのこと、きっと忘れない」

    色んな意味で誰よりも忘れられない存在となったビシン。

    でも今、私は彼の前で笑っていられる。
    すごく不思議だったけど、それも何だか嬉しい。

    ほまれを見て、ビシンがやはり短く言葉を紡ぐ。

    「勝手にすれば」

    明後日の方を見ながら言われて、ほまれは笑う。

    少しだけ怖いと思ったこともあったけど。
    案外彼は自分の気持ちに素直なだけなのかもしれない。

    ほまれは立ち上がって窓に近付き、外を見た。
    まだ、ハリーたちの姿はない。


    「仕方ないから…僕も覚えててあげるよ。ほまれのこと」


    小さく呟く声が聞こえた。

    振り向くと。

    ビシンがほまれを見ていた。

    「ありがと」

    ほまれはそれに笑顔で返す。
    ビシンも少しだけ、笑った気がした。


    ーー未来で。

    どんな未来が待っているかはわからないけど。
    ビシンともまた、未来で出会うことが出来れば。

    また違った関係が築けるのかもしれない。

    その時は、きっとーー、



    End**

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