巡る未来。はなが急な病で危篤となった。
野乃はなが社長となり創設されたアカルイアス社は、ジョージ・クライが跡を継ぎ、2040年にクライアス社と社名を変更。
そこから世界は坂道を転がるように転落していった。
溢れていたアスパワワはトゲパワワへと変わり、人々がそれに飲み込まれていくのは本当に一瞬だった。
***
何でこんなことになったんや…。
ーー時が止まり。
動かなくなったほまれの頬にそっと触れる。
時が止まって、色のなくなったその頬は…それでもまだ温かい。
クライアス社の本社。
ほまれはさあやとえみると共にそこへ向かった。
『大丈夫。私たちは昔プリキュアだったんだよ』
言って笑ったほまれ。
『はなが選んだ人だから。きっと話せば分かってくれるはず』
ハリーにそう伝えて出て行ったきり、彼女たちは帰っては来なかった。
そのまま、時は止まってしまった。
何故あの時俺はほまれたちを止められなかったんだろう。
プリキュアだったからと言っても、プリハートもない今では…彼女たちはただの女性なのに。
悔しくて悔しくて。
ハリーは握った拳でコンクリートの壁を殴る。
「何で…っ!」
拳からは血が滲み出し、痛みを感じる。
こんなもんやない。
ほまれや、未来への希望が奪われたみんなの痛みは…こんなもんやない。
こんなつもりじゃなかった。
ただ、みんなが幸せになれると…。
ほまれが大好きだったはなが救えるとジョージに言われ…幸せな未来を願っただけ。
だから俺たちは、クライアス社に加担してしまった。
ビシンやリストルは何処へ行ったんだろう。
あの正体の分からない4人のプリキュアたちは…?
ハリーは再びほまれを見た。
「ごめんな…ごめん。ほまれは俺たちを拾ってくれて…たくさん助けてもらったのに…」
溢れる涙を堪えることが出来ない。
ほまれに拾われて、ビシンやリストルともぐもぐと…ほまれと過ごした日々を思い出す。
「ほまれを…みんなを助けられへんかった…」
ぎゅっと奥歯を噛みしめる。
どうする?
…どうすればいい?
どうすればみんなを助けられる…?
ほまれの出会ったアイツなら…
“未来から来たハリー”なら…どうする?
右手に持った白い未来クリスタルをぎゅっと握った。
ジョージのいる社長室に置いてあったものを、こっそり持ち出したもの。
キュアトゥモローは、時が止まったこの世界、クライアス社に1人捕まった白いプリキュア。
本当はハリーも、もう…後戻りは出来ない所まで来ている。
“未来から来たハリー”…。
もうそんなのは…いないんだ。
俺が…。
俺が決めなあかんのや…。
ハリーは涙を拭ってもう一度ほまれの頬に触れる。
温かい頬。
温かいその唇に。
そっと口を付けた。
お伽話やドラマとかでは…これで動き出すはずだけど。
ほまれはやはり動かない。
たぶん、最初で最後のキス。
「絶対、未来を取り戻したるからな」
ミライクリスタルをジャケットの内ポケットに入れて、踵を返すと、ハリーは全力で走り出した。
もう振り返らない。
ここからは俺が選んだ道が…
“未来のハリー”になるんだから。
まずは…
キュアトゥモローの元へ。
俺を助けてくれた白いプリキュア。
マザーの力を受け継いだプリキュア。
彼女は、最後の希望ーー
この世界にもうプリキュアがいないのなら…、過去に行ってプリキュアに助けを求めよう。
ほまれたちか、また別の誰かか…。
その後どうなるかなんて…正直わからん。
でも、
悔しいけど…
俺1人では何も…出来ない。
ほまれを、みんなを助けたい。
トゥモローを助けたい。
「ほんまに未来が輝くって信じてるんか?仲間を失ってもか?」
檻の中にいる白いプリキュアに声を掛ける。
彼女は少し顔を上げ、ハリーを見た。
「うん…約束したの。プリキュアは絶対に諦めないって」
トゥモローの言葉に安心したような…、今から自分が誰かを犠牲にしようとしている不安のような複雑な気持ちが広がっていった。
でも、もう決めたんだ。
彼女を助けて、俺は…俺たちは未来を変える。
ハリーはトゥモローを見て笑った。
「それ聞いて安心したわ」
先に手に入れていた鍵で、その檻の扉を開け、ミライクリスタルを手渡した。
「一緒に行こう。新たなプリキュアを探しに」
***End
補足…
ここから白いミライクリスタルで過去に戻り、はなさあやほまれに助けてもらう…もしくは違うプリキュアに助けてもらいながらはぐたんを育てて行く。そして未来を取り戻した先の時間軸でまたクライアス社が復活して以下ループ。
と、言う救いようのない妄想にお付き合いありがとうございました。