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    mee30232362

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    mee30232362

    ☆quiet follow

    最初で最後の。「よーし!
     明日はみんなで、デートしよ!」

    はなの提案で。
    最後の一日、私たちはみんなで出掛けることにした。


    ***


    一番前にはぐたんを抱っこするはな。
    横に笑顔のさあや。
    それに続いてルールーとえみる。


    そして、私たち。

    なんでいつも…、
    こうなるんだろう。


    気が付けばそばに居て。
    私に笑顔をくれるその人。

    私の、初恋の人。


    楽しい一日はあっと言う間に終わる。

    角を曲がればビューティーハリーはすぐそこだった。
    もうすぐハリーに逢えるこの道が、大好きで。
    わくわくしながら毎日歩いていたのに。

    今は何だか…全ての景色が辛い。


    きっともう今頃、タイムマシンみらいにかえるくんも完成している。


    ーーそんなの、
      完成しなければいいのに。


    なんて黒い気持ちに蓋をして、ほまれは立ち止まる。

    この道を、進みたくなくて。

    気付かずに一歩前へ出るハリーの後ろ姿。
    手を伸ばせば、届く距離にいるのに。


    この後ろ姿を見ることは、


    きっと、もうないんだ。


    ほまれは手を伸ばして、黒い革ジャンをそっと握る。
    ハリーが立ち止まった。
    振り返ろうとする仕草に、ほまれが背中に手を当ててそれを止める。
    力は入れていないが、察してくれたように動きを止めた。

    「ハリー…あのね…」

    背中に触れたまま、小さく呟く。
    みんなは気付いていないようで、少しずつ離れて行った。

    でもそんなの…関係なくて。

    「私、ハリーに告白したこと、
     …後悔してないよ」

    ほまれは俯く。

    「忘れようと思ったの。
     こんな気持ちのまま、お別れなんて…
     辛いから」

    今日一日、ずっと堪えていた涙が溢れる。
    ほまれは両手でハリーの背中のジャケットを握った。

    「でもね、」

    迷惑かもしれないのは、分かっていた。
    だから隠しておきたかったこの気持ち。

    でも、最後だから。
    カッコ悪くったっていい。

    「でも、やっぱり忘れられないんだ…」

    涙が次から次へと溢れる。

    「ハリーに優しくされると…、気持ちがどんどん大きくなるばっかりで…っ」

    ーー苦しい。

    最後の言葉は飲み込んだ。


    ハリーはきっと応えてくれない。

    ーーそんなこと、わかってる。


    「ごめんね…最後なのに…。
     ううん、最後だから、わがまま言いたかったのかも」

    溢れる涙を手で拭う。

     「…ありがとう」

    何も言わないハリーに、
    想いは募るだけ。

    「泣かないって決めたのにね。
     やっぱ、無理だった」

    離れたくない。
    思いが届かなくても…。

    側に居るだけでいいのに。

    もうそれすら、叶わない。


    「大好きだよっ」



    少しだけ間があって。

    不意にハリーが振り返る。
    ほまれが顔を上げると同時に、視界が暗くなった。
    金属の冷たい感触と、ハリーの匂い。
    背中に回った手のぬくもりに、すぐに自分が抱きしめられていると気付く。

    「ほまれ…、」

    小さな声で名前を呼ばれて、心臓が高鳴る。

    「…ありがとうな。
     こんな俺のこと、好きになってくれて」

    状況が飲み込めなくて、頭が真っ白になる。
    恥ずかしくて、顔を上げることが出来ない。

    「けど俺はほまれを、幸せには…出来ない」

    冷静に紡がれる、残酷な真実。

    「俺の帰る未来は…たぶん、
     ほまれの進む未来とは違うから」


    …わかってた。
    何となくだけど、そんな気がしてた。


    『ハリーの帰る未来は、クライアス社の無くなった未来』

    『私たちの進む未来は、クライアス社の存在しない未来』


    きっと、交わることのない、未来。

    「せやから、」

    ハリーがほまれの頭を優しく撫でる。
    小さい子どもの頭を撫でるそれとは違う。
    ほまれの存在を確かめる様に、ゆっくりと優しく。

    ほまれが顔を上げると、ハリーと目が合った。
    寂しそうに笑うハリーの笑顔。

    そっとほまれの額に、唇を落とした。


    「これが最初で、最後」


    もう一度目が合って。

    ハリーはゆっくりと離れて行った。


    「俺のことは忘れて、幸せになるんやで」



    心臓の音がうるさい。


    何で?

    何で、今なの?


    涙が止まらなくて。

    それはつまりーー。




    そんなの、忘れられなくなるだけじゃん。

    「…ばか」



    涙で歪む視界の中、ほまれがもう一度手を伸ばす。
    今度はその手を、ハリーが掴んだ。

    指が絡まる。


    後少し。
    もう、ほんの少しだけど。


    貴方が未来に帰るその時まで、

    貴方の隣でーー。




    End***













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