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    mee30232362

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    mee30232362

    ☆quiet follow

    変わらぬ愛と永遠の絆。彼と過ごして、何度目の夏だろう。
    ほまれは空を見上げた。
    星の明かりがとても綺麗な、夏の夜。


    ***


    「おまたせ」

    日は沈み空はもう暗い。
    街頭と吊るされた提灯が夜道を照らす。
    浴衣を着た人や子どもが行き交い、いつもとは違う、少し楽しげな雰囲気を醸し出す。

    待ち合わせ時刻に少し遅れてしまったほまれは淡い水色に、大柄な朝顔の涼しげな浴衣。
    伸びた髪は母が綺麗に結ってくれた。
    星形の髪留めを纏めた髪に飾ってある。
    下駄ではなくサンダルを合わせて正解だった。
    小走りに待ち合わせ場所まで駆けてゆく。

    はぐくみ神社の入り口で待っていたハリーは、ほまれの言葉に振り向いた。
    浅葱色の甚平に赤毛の青年。
    初めてみんなでお祭りに来た日と違って手ぶらだった。

    「ごめんね。もう花火始まってるね」

    大会が近いので練習量も自然と増えた。
    はぐくみ市で恒例となったナイトプールは、練習で行けなかったので、今日だけはと思ったけど。
    先程から花火が打ち上がる音が聞こえ、花火の光が道すがら見えた。

    「かまへんよ。ビューティハリーもさっき閉めたとこやし」

    ハリーは笑う。

    「水色も、よう似合うとるで。可愛い」

    言って右手を差し出した。

    「ほな、行こか」

    ほまれがその右手を掴んで、自然と指が絡まる。

    何度経験しても、ドキドキする。
    心臓が煩くて。
    歩きながら、少し目を伏せた。






    屋台で少しだけ食べ物を買って手を繋ぎ石段を登る。

    石段を登り切ると、人はまばらで。
    場所取りをして座る人もいたが、打ち上げ会場ではないので案外穴場なのかも知れないと毎年思う。

    あの日、みんなで話したあの場所で。
    欄干に手を掛けて、空を見上げた。


    何となく、お互い言葉はない。

    花火の音が近くで響く。
    ヒューと言う笛の音に、続いてドーンと爆発音。
    光が綺麗に空中で模様を描き散っていく。

    屋台からも花火は見えるのだが。
    何となく毎年登っている石段。
    たぶん、私たちプリキュアのハリーとの思い出の場所だから。
    はなたちも今日、どこかで花火を見ているんだろうか。




    「なぁ、ほまれ」

    ハリーが呟く。
    花火の音はそれなりに大きいが、すぐ横のハリーの声はしっかり聞こえた。


    「 結婚せえへん? 」


    ほまれが目を見開く。
    ハリーを見れば、彼は優しい眼差しをこちらに向けていた。

    「・・・・・っ?!」

    突然の事に言葉が出ない。
    考えてもみなかった、と言う事はないけど。
    本当は、ハリーは未来に居なければいけない存在で。
    結婚なんて、夢のまた夢だと思っていた。


    2人で居られれば、それで、
    それだけで幸せだった。


    「ダメ?」

    ハリーが顔を覗き込む。
    その顔が、近くて。

    ほまれが首を横に振る。

    「ダメじゃない…けど…」

    ーーびっくりした。

    それが素直な感想だった。
    涙が出そうになるのを堪える。

    叶わない夢だと思っていたから。

    ただ、ただ嬉しくて。

    「沢山考えたし悩んだけど…、でもやっぱり俺はほまれが好きだから。…誰にも取られたくない」

    花火の音が煩いはずなのに。
    周りの音が入ってこない。
    ハリーの声がやたらと響く。
    自分の鼓動が、すごく早い。

    「俺は人間じゃないし、此処に居ていい存在でもない事はわかってる。…だから普通の女の子の幸せを、与えてやる事は出来んかもしれんけど」

    ハリーはほまれをまっすぐに見る。
    真剣に、ただほまれだけを写す茶色の綺麗な瞳。

    「それ以上にきっと、
     誰よりも幸せにしたる」

    甚平のポケットから箱を取り出した。
    蓋を開けると、白っぽい宝石ーダイヤモンドのついたシンプルなデザインの指輪。

    「変わらぬ愛と、永遠の絆」

    ハリーはほまれに身体ごと向き直る。


    「俺と、結婚して下さい」


    涙が溢れる。
    嬉しくて。

    ーー嬉しくて。

    私は、ハリーと一緒に生きて行きたい。
    そう願った。

    …けど。

    一緒にいるだけでいいと、そう信じていた。


    結婚なんて…、夢だと思ってたから。

    そんな言葉を、ハリーの口から聞けるなんて…
    思ってもみなかった。
    こんなに嬉しい言葉だなんて、思わなかった。


    「…はい」

    小さな声で頷くのが精一杯だった。

    ハリーが指輪を箱から取り出して、ほまれの左手を持ち上げる。
    その薬指に、誕生石のダイヤを飾る。


    「 ほまれ、愛してる 」


    ほまれの左手の甲に、優しく唇を落とす。
    まるであの日の、人魚姫の王子様のように優しく微笑むハリー。

    涙が止まらなくて。

    「ありがとう…。幸せだよ。私。
     私も、ハリーが大好き」

    ほまれの背に手を回して、ハリーがぎゅっと抱きしめる。
    ほまれも、ハリーの背に手を回す。

    「あの時、から…ずっと。
     ずっと。大好き」


    花火は変わらず打ち上がる。
    もうすぐクライマックスの大花火。



    でもたぶん、幸せな時間は、


    これからも、ずっと永遠に。








    End***











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