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    mee30232362

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    mee30232362

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    赤い髪夢を見た。

    赤い髪の、あすかに似た女の人に助けられる夢。




    目を覚ますと、懐かしい顔が目に入った。
    見慣れた赤い髪の彼女。

    「目、覚めた?」

    言ってペットボトルの飲料水を手渡される。
    まだぼうっとする頭を右手で抑えて、空いた手でそれを受け取る。

    「…ありがとう」

    何か大きな事が確かにあったはずなのに、問題なく進む寝台列車。
    何か…。

    「・・・・・!
     怪我をした人は…っ?!怪物とか…が!」

    百合子が飛び起きる。
    あすかが手を伸ばして、立ち上がろうとする百合子を静止した。

    「大丈夫。誰も怪我してない。
     ちょっと電車が急停車して、揺れただけだったみたいだよ。みんな無事」

    百合子は目を見開く。

    「…そんな…」
    「倒れたのは、誘導してた百合子だけだよ」

    だって、そんなはずはない。

    確かに、見た。
    怪物と戦う、あすかに似た女性を。


    「でもっ、」

    と、言いかけて止めた。
    表情のないあすかの顔が、目に入ったから。

    たぶん彼女は、


    嘘を吐いている。

    “あの時”とは違う、嘘を吐いている顔。


    百合子は目を伏せた。



    「夢を、見たの。貴女が…怪物と戦う夢」

    「…そっか」


    否定もなければ肯定もない。
    彼女の返答。

    寝台列車の個室は静かだった。
    外からは楽し気な声が聞こえる。
    それがより一層、この場所の静けさを際立たせる。

    百合子は目を伏せ、反対側に座るあすかはただ窓を見ていた。
    ペットボトルをぎゅっと握る。


    「変わらないな百合子は、昔から。
     自分よりまず一番に他人を心配するんだ」

    顔を上げると、あすかはいつの間にかこちらを見ていた。

    「そんな事はないわ…」

    そんな事はない。
    そんなに優しい人間なら、私はあの時、貴女を救えたかもしれない。


    あすかが立ち上がる。

    「元気そうで良かった。先生呼んでくる」

    その姿を百合子は何も言わずにただ見ていたが。

    ここまで来て、初めて気付いた。

    あすかが今ここに居ると言う事は。
    つまり、自分が目覚めるまで、ずっと隣にいてくれたと言う事ーー?


    「…待って」


    つい、呼び止めてしまった。
    あすかが立ち止まって振り返る。

    「ありがとう、あすか」

    その綺麗な瞳と目が合えば。
    彼女は笑っていた。

    あの頃と変わらないその笑顔。

    私は、笑えているだろうか。


    「どういたしまして」







    End***










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