Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    mee30232362

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 46

    mee30232362

    ☆quiet follow

    眠り姫久しぶりに、君の顔を見た気がする。




    扉を開けば無機質なその部屋には、点滴のチューブや管、沢山の機械に囲まれ、ベッドで眠るはなの姿。


    ーー止まっていた時は、動き出した。

    他ならぬ、過去のはなの手で。
    未来の世界では時もまた動き出し、此処に居るはなの時間も進み出した。


    「全部終わったよ、はな。ただいま」

    声を掛けても返事はない。
    機械音が規則的にはなの心音を告げている。
    ジョージは眠り続けるはなに近付き、ベッドの横で立ち止まる。

    「幼い君に出逢ったんだ…」

    窓から見える澄んだ青空は、あの時幼いはなと見たものと同じ空。ジョージは手を伸ばして、そっとはなに触れた。
    頭を優しく撫でる。
    柔らかなその髪が少しだけ揺れた。

    「でも君はやっぱり、こんな未来は望んで居なかったね」

    本当は知っていた。
    はなは、永遠なんて望んでいない。

    それを望んで居たのは僕だけだと、知っていた。

    これは、自分勝手な願望。


    「はな、」

    頬に触れれば、時を刻む彼女の肌は温かい。
    いつものように。


    「…キュアエール」

    口の中で小さく呟く。

    「終わったんだ。全部。
     ヒーローは悪を倒して、世界を救った」

    はなの眠るベッドの端に座る。

    「これがおとぎ話なら、眠ったお姫様は目覚める所だよ」


    かさつく親指でそっと、唇をなぞる。
    何度も何度も、重ねた唇。

    その唇に触れて。
    重なれば。

    恥ずかしそうに笑ったはな。


    そんな彼女は、もう笑うことはない。
    どんなに声を掛けても、唇を重ねても、返事はなくて。


    「愛してる…。
     幸せな時を、ありがとう」


    涙が一筋、ジョージの頬を伝う。

    時間が動き出す。
    止まっていたはなの寿命が進んでいく。
    着実に君の最期が近付いてくる。
    別れが、もうすぐそこに。

    これがはな、君の望んだ未来。




    最期の時まで、君の隣で。


    側にあった機械音が不規則に変わり、耳障りな警告音を発する中で。
    彼女は苦しむ様子もなく眠り続ける。



    「おやすみ、はな」

    きっとまたすぐに、逢える。

    「またね」







    End**






    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator