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    mee30232362

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    一粒の幸せ11月22日いい夫婦の日。

    だからって祭日じゃないし。
    朝起きていつも通り出勤して仕事して、保育園に娘を迎えに行って帰宅してご飯を作る。
    残業の日は夫であるジョージさんがご飯を作ってくれたりもするけど、今日は私が作れそうだ。夕飯はオムライスとサラダかな。


    なんて。
    何でもない1日が今日も終わろうとしていた。

    「おやすみ、はぐたん」

    可愛い寝顔のその頬にキスをして、はなは布団から静かに離れた。
    控え目に言っても可愛い娘だが、誰に似たのか活発で好奇心旺盛で。寝かし付けも長いと1時間以上かかってしまう。今日も長かった。

    足音を立てないように歩き、寝室のドアを出る。

    「お疲れさま。はな」

    優しく微笑むジョージは珍しくキッチンに立っていて、2つカップを出してやかんでお湯を沸かしている。

    「疲れたー!やっと寝たー!自由だー!」

    少し抑えた声でジョージの元に近付けば、ローテーブルには見慣れたコンビニの袋があった。

    「ジョージさん、これ何?」

    と、言いながらだが、ジョージの答えも待たずに中を覗くと。

    「わぁ!カップケーキだ!買って来てくれたの?ありがとうっ」

    そこには小さなカップケーキが2個入っていた。ピンク色の生クリームに苺が2個乗っている。

    あれ?苺が2個?

    見覚えのあるコンビニスイーツだけど、普段販売している物は苺が1個だったはずだ。

    「コンビニに寄ったら売ってたんだ。いい夫婦の日限定の商品で、苺が2個乗ってるらしい」

    やかんの湯が沸いて、ジョージは火を止める。
    インスタントの紅茶のティーバッグをカップに入れて湯を注いだ。

    「そうなんだ!苺が1個増えただけで、なんかすごいお得感と幸せを感じるっ♪」

    わくわくした笑顔でもう1個のカップケーキを袋から出した。

    「あれ?こっちは苺1個なんだ」

    苺が1個のカップケーキと苺が2個のカップケーキをローテーブルに並べた。

    「ああ、限定品は人気だからそれがラストだって店員さんが言っていたよ」

    そこにジョージが紅茶を運ぶ。
    2組のカップのソーサーにはスプーンと片方にだけ角砂糖が置かれていた。当たり前のように苺が2個乗ったカップケーキの方に角砂糖付きの紅茶が置かれる。ストレートはジョージ、角砂糖ははなの紅茶だ。

    「いいの?」
    「別に。はなの為に買ってきたんだし」

    言ってジョージはソファに座った。足を組んで、紅茶のカップを口に運ぶ。元々そこにあったのか、いつの間にか手元には本が用意されていていた。

    ジョージはスイーツにあまり興味がない。
    こうして付き合って食べてはくれるが、自分で買って来る事は稀だった。だから、たぶん本当に何とも思ってないんだろう。

    はなはジョージの顔と、手元のケーキを見比べる。
    少しだけ考えてから。
    2個乗っている苺の内の1個をスプーンで切り、ジョージのカップケーキに乗せた。

    「はい、半分こ」

    にっこり笑うはな。
    ジョージは少しだけ目を見開いて驚いたふうだった。そして、ふっと笑った。

    「半分こって…」
    「あ!子どもっぽいと思ったでしょ?」

    はなは口を尖らせる。

    「いや、そんな事は…」

    と、言いながらジョージは笑う。
    はなは笑うジョージを見ながら自分のカップケーキを近付けて並べた。

    「幸せは半分こで、2倍幸せなんだよ!」

    ほら、お揃いだし!と言いながらカップケーキを見た。
    ジョージもはなの視線を追ってカップケーキに目をやる。


    本当に、小さな小さな一粒の幸せ。


    ジョージははなの頭をそっと撫でる。
    はなも笑顔でそれに応えた。

    きっと何でもない毎日が一番幸せだと思う。
    明日も、明後日も。


    「ありがとう」







    End***







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