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    mee30232362

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    mee30232362

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    女の子逃げ回るほまれを追いかける。
    幼くすばしっこい彼女は、フィギュアスケートで身体を使う為か、同じくらいの子どもよりも足が速い。ぐるぐるとあちこち、公園の遊具や木、車止めを駆使して駆け回る。
    身体の大きい分、ハリーには不利だ。

    「だぁー!もうっ!!」

    大人気なくイラついてしまう。足を踏み込んで遊具を乗り越え、ほまれの前に立つ。

    「……っ?!」

    ぎゅっとその小さな腕を掴んだ。

    「もう、逃げられへんで」

    肩で息をしてほまれを覗き込む。



    やっと見つけたほまれは、公園のベンチでぽつんとしていた。追い回したのは、はなやなぎさや、俺たちだけど。
    ハリーを見付けたほまれはすぐにその場を駆け出していく。




    ほまれは目に涙をいっぱい浮かべていた。
    でも、口を一文字に結んで小刻みに震え、泣くのを我慢している。

    「…おうち、かえりたい…」

    俯くほまれ。

    「パパは、どこ?ママはどこ?」

    パパと言う言葉に小さく違和感を覚えた。
    何かがハリーの胸を掻き回すような、複雑な違和感。

    小さな身体が震えている。
    逃すまいと握ったその手を、ハリーは思わず離してしまった。

    「………っう、っ」

    ほまれは逃げる事なくその場に座り込んだ。
    うずくまって、肩を震わせる。

    「ままぁ、ぱぱぁ…」

    そんなほまれに、触れる事が出来なくて。
    伸ばしかけた行き場のない手をゆっくり下ろした。


    自分が、彼女を…抱きしめて良いのか、

    正直わからない。



    はぁ、と溜息を吐く。
    泣きたいのはこっちや、と頭を抱えるけれど。

    ここにいるほまれはきっと、何も知らない…ただ、家に帰りたいだけの幼い女の子。
    お化けや知らない人間に追い掛けられて、泣くことしか出来ない。

    ただの、女の子。

     


    「あぁ、もうっ!」

    ハリーはしゃがんで、ほまれの目線に合わせた。
    極力自分の焦る気持ちを隠して、笑って見せる。

    「俺は、ハリハム・ハリーさんや。よろしゅうな」

    手を差し伸べると。
    小さな少女は、涙でぐちゃぐちゃになった顔をゆっくりと上げた。

    「怖がらせてごめんな。俺は、ほまれのママさんの友だちやねん。一緒に、ママさん捜したる」

    口をへの字に曲げた少女は、精一杯の強がりを見せる。

    「知らない人に、着いてっちゃいけないんだって、先生が言ってた」

    袖で涙を拭いながら、少女は呟く。

    「せやから、俺はハリハム・ハリーさんやって」

    ほまれは首を傾げる。

    「はりはむ、はりー…さん」

    彼女が少しでも安心できるように、笑顔を作る。

    嘘は得意だから。

    「ハリーでええで?」

    「ハリー?」

    笑顔で頷くと、ほまれは微かに小さく笑った。
    ポニーテールの長い髪が揺れる。

    「ハリー」

    「…せやで」

    はい、とポケットからハンカチを出して渡した。ほまれは素直にそれを受け取る。

    「ありがとう、ハリー」

    その笑顔に少しだけ胸が痛むのは、気のせいではない。

    「よっしゃ!じゃあ、ママさん探しに行こか」

    ハリーは小さなほまれを抱き抱える。片手でも抱えられるくらいの小さな身体。小さな手足。
    いつものように、ぽんぽんっと頭を撫でた。

    ほまれはきょとんとした顔で、ハリーを見ると。

    「ハリーの手、パパみたい」

    笑う彼女の笑顔は、いつものほまれと同じ。

    「パパ…か」

    「うん。パパの手は、大きくて、温かいんだよ」

    少しだけハリーは俯く。
    調子が狂って仕方がない…。

    掛ける言葉を考えて。
    やっぱり、嘘を吐く。

    「せやな。パパさんも一緒に探したる」

    「うんっ」

    抱えた笑顔のほまれを、そっと抱き寄せる。
    彼女の顔を見る事なく、小さく呟いた。
    それはたぶん、ほまれにとって残酷な質問。

    「会いたいか?パパさんに」

    「うん。会いたい」

    「…そっか」


    その頭に、唇を寄せて。

    この少女の小さな幸せを、ただ願った。






    End***















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