籠 遠い日の記憶「 見つけた 」
言われて振り返る少女。
ふわふわと綺麗な髪が揺れる。頭には女の子らしい今流行りの洋風のリボンを付けて、大きな瞳で幸次を見た。
椿の大柄の入った赤い着物で、下駄を履き終えて玄関に立つ姿は、幼いながらにも背筋をしゃんと伸ばして凛としていた。
「遊ぼう」
少年はにっこり笑う。
「…私、と?」
美世じゃなくて?
「うん。香耶ちゃんがいい」
いつも見ていた、『無能』の姉と遊ぶ幼馴染、辰石の子ーー辰石幸次。
今日も庭で見かけた。
あまり表に出ない姉の美世を気遣ってか、いつも迎えに来る。毎日のように飽きもせず遊びに。
「いつも家の中で勉強ばっかり、つまんないでしょ?一緒に外で遊ぼう?ね?」
言われた香耶は大きな目を見開いて驚く。
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