育ち育み結ぶもの「おはようございます、ライオス先輩」
春休み明け、登校第一日目。いつもの待ち合わせ場所に彼は立っていた。桜の花びらが舞い散る中嬉しそうに笑う彼は、少し驚くほどに人目を引いた。けれど、俺はそんなことよりもずっと違和感が強くて、いつもなら立ち止まることなく連れ立って歩き出していたはずの足を止めた。
「なんだい、それ」
「どれですか?」
「その言葉遣いだよ」
「ああ……」
彼は得心したようにそう声を漏らすと、両腕を開いて見せた。
「俺も今日から中等部なので、『ライオスくん』は卒業しようかと思いまして」
得意げな笑顔を浮かべて、そんなことを告げる彼の手は大半が袖に隠れている。制服の採寸から帰ってきた彼が、『ライオスくんと同じくらい大きくなるから大きめを注文した』と語っていたのを思い出す。俺も四年前は大きめの制服に着られていたよなあ、ということも。それから、そんな俺を見て、『ライオスくん、かっこいい!』と目をキラキラさせていた彼のことも。
2136