Queen of the Unbuilt-建たずの女王-
ぼくのかんがえたさいきょうのグエルくんのママンのおはなし
グエルくんの名前の由来なんだけど、グエルくんのママンの結婚前のお仕事は建築家で、ガウディの建造物が好きで、公園や邸宅の設計をガウディに依頼したパトロンの伯爵の名前から取った、というのはどうかな?
グエルママンはザハ・ハデッドみたいに「アンビルトの女王」と呼ばれている、毎回コンペには優勝するんだけど斬新すぎて建築まではなかなか至らない、才能あふれた女性建築家だった。
実家は資産家だけどグエルママンの仕事には否定的で、グエルママンがスランプの時にヴィムとの縁談が来て、建築とモビルスーツの違いはあれど、ヴィムの、ものづくりに対する真摯な姿勢に共感して結婚。
産まれた息子は最初からジェターク社の跡取りと決まっていたので
「いつか私のパトロンになってね」
と、ガウディの最大の理解者だったグエル伯爵の名前をもらってママンが付けた。
ラウダママンとヴィムは学生時代から付き合っていたが、ヴィムの父親(PROLOGEに出てきた白髭のお爺さん)に、身分違いと結婚を反対されて別れ、ラウダママンは別の人と結婚したけど上手くいかず離婚した直後にヴィムと再会。思いがけずラウダを授かる。
ヴィムはグエルママンとのあいだに長く子どもに恵まれなかったが、運命の悪戯か同時にグエルママンもグエルをご懐妊。
当時ジェターク社CEOだった父から
「跡取りは多い方がいい。産ませとけ」
と言われ、生活費や養育費などをジェターク家が援助してラウダを産み育ててもらうことにした。
グエルとラウダ誕生前後にヴィムの父は死去してヴィムがCEOに就任。多忙を極め、グエルママンはヴィムとすれ違うことが多くなる。
ジェターク家の武器商人としての家業と、CEOのファーストレディの役割にストレスを感じるようになり、グエルママンは髪をピンクに染め、幼いグエルを連れてヴィムと別居。
(ちなみにグエルママンはグエルそっくりな長身のグラマラスな美人さん。グエルの突然爆発して出奔するところや愛情豊かなところは母ゆずり。)
長らく空家だった生家の豪邸に住みながら、ピンクに塗装した愛機デスルターを駆って自分好みに増改築を繰り返しているうちに、あきらめていた建築への情熱が復活。さらにそのころグエルと同い年のヴィムの隠し子と愛人の存在が発覚。
グエルママンは昔の仕事仲間から辺境の星域開発に誘われ建築家として参加することを決意。ラウダママンに直接会いに行く。
「私は離婚するからヴィムと子どもたちをよろしくね」
と言うと、ラウダママンは
「私はヴィムと結婚したいわけではない」
と言い出し、ママンふたりはじっくり話し合ううちに意気投合。
ラウダママンはヴィムみたいな強引で押しが強いひとに弱く、経済的な理由でなし崩しに愛人になったことを後悔していた。ジェターク家の家庭を壊したと思い込み、精神的に追い詰められていたが、グエルママンから
「あなたヴィムと一緒になりたいんじゃないの?
…え?そうなの??
…じゃあいっそ、私と一緒に人生やり直す?」
と言われて、その気になる。
ラウダママンはマネージメント能力は高いが自己肯定感は低く、ラウダは自分といるよりジェターク家で育てられた方が幸せだと思い込んでいる。
幼いラウダの無気力さは、いろいろ他人に流されやすいラウダママンとの感情のすれ違いのせいだった。
カリスマ性があるひとに執着しやすいのもママンの血かも。
慌ててふたりの元に駆け付けたヴィムに、
「私たちは建築家とそのマネージャーとして辺境星域開発のためふたりで行く。環境が過酷だから子どもたちは連れて行けない。
だからグエルとラウダは、あなたお願いね」
と告げる。
晴れやかに
「サヨナラ…」
と、新天地に向けて出発するママンふたり。
呆気にとられるヴィムとグエルとラウダ。
「女に捨てられてメソメソするなヨー」
と、涙ぐむヴィム…。
END
《余談》
サグラダファミリアのように増改築を続ける辺境星域の某フロントは、ダイナミックでありながら繊細な外観が話題となり観光名所となっていた。
代表者の女性ふたりの元に、時折訪れる出資者のジェターク社のダブルCEOの映像が、ローカルニュ一スで流れたりするらしい。