【イチ桐】ただひとり「ふうー。さっぱりしたぜ」
玄関のドアを開け、フェイスタオルで髪をわしわしと拭きながら。春日は文字通り爽快といった声を上げながら素っ裸で部屋に戻って来た。
シャワーを浴びた後でも汗ばみそうな屋外と違い、部屋の中は冷房が効いていて気持ちが良い。直接体に風が吹き付けているわけではなかったが、春日は冷たい空気を全身で浴びるように腕を広げた。
風呂が外にあるというのは何かと不便があるものだったが、夏場は玄関ドアを開けてひんやりとした空間に入る瞬間が最高だった。そう、それはまるで温泉から上がった直後にビールをガッと喉に流し込むような爽快感――などと想像してくうー! と声を上げると、春日はパッと目を開いてペタペタとサンダルを鳴らし、部屋の奥に干してあるトランクスを一枚取り上げてそそくさと足を通した。
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