Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 95

    瀬名🍭

    ☆quiet follow

    💀♦️

    ##いでけい

    「そういえば、イデアくんそろそろお誕生日なんだって?」
     何がそう言えばなのだ、と突然話を向けられたイデアは固まる。彼は予鈴が鳴るぎりぎりまで別所で時間を潰し、授業が始まる直前に教室へ戻った。恐る恐るといった足取りで、クラスメイトと楽しげに団欒するケイトの脇を通り抜ける際、「イデアくんじゃん!」と親しげに声をかけられる。イデアからするとこの挙動からもう理解が及ばない。陽気な彼らからしたら、自分はただの、ちょっと奇妙な背景に過ぎないと念じて、思い込んでどうにか教室へと足を運んでいるのに。
    「ヒッ、ケ、ケイト氏、どこ情報ソースですか、それ……」
     ケイトと話していた学友の視線も自然と己の顔に集中し、イデアは藪蛇な気持ちだった。拙者、席に座ろうとしただけなのだが……!?
    「誰だったかなー?」
     ケイトは視線を上に上げ、手を口元に当てて考える仕草を取る。イデアの髪の炎の勢いは教室にいる時なんかは特にない。しかし、稀に授業中彼の興味を惹く題材だったのだろうか、頭頂部が勢いよく燃え盛っているのを目にすることがある。すらりとした手足、浮世離れした姿形、筋張った手の甲、デスマスクと見紛う白い肌、周囲を拒絶するように彼を取り巻いて流れる青い炎。イデアくんって映えるよな〜、でもそれ言ったら嫌がるんだろうな。
    「あー、これ言っちゃっていいの? ネタバレにならない?」
    「は?」
     頭脳明晰と謳われているのに、ケイトの会話についていけない様子のイデアを見て、ケイトはからかいたい気持ちになった。歩幅を合わせるどころか、ついておいでよ、とばかりに奸計が走り出す。だって、彼には自分の誕生日を祝う学友がいるという発想すらないのだ。
     オルトくんが兄さんをお祝いしてあげて! って皆に言ってたような気もするし、アズールが用意したプレゼントをマジカメにアップしてたような気もする。ああ、ディアソムニア寮の子がソワソワしてたような?
     でも、それらの証拠どれをも口には出さず、ケイトは笑いかける。
    「イデアくんが愛されキャラって話」
     イデアは一瞬虚をつかれたような表情を浮かべる。そして、漸く予鈴が鳴った。
    「リア充の考えてることは理解できない……」とぶつくさ言いながら、やっと解放されたという風に分かりやすく脱力して自分の席へ戻っていくイデアに、おーい聞こえてんぞと内心苦笑しつつ、ケイトは彼の誕生日当日になったら、構い倒してやろうと心に決めたのだった。イデアはこの刹那的なノリを望んでいないとわかっていながら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💘💖💖💯👏❤❤☺☺☺☺🙏💞💞💞💗☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
    49824