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    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

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    瀬名🍭

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    字チャで書いたトジェ(書きかけ)。完成させてから上げようと思ってたけど、尻叩きで上げようと思います
    ※捏造含

    ##とれじぇい

    飽和する泡、真砂の日々トレジェイ お題夜とユートピア 必須要素お湯
     
     今にも雨が降り出しそうだった。放課後、ジェイわドは多重債務者たちの取り立てに回っていた。今日の仕事の内容をそう明かされても、誰もジェイドが悪魔の使いとは気づかなかっただろう。彼は教諭に授業のわからぬ点でも質問しに行くかのように方々の教室へ出向き、購買部で品揃えを聞くかのように、相手の過失を並べて、滞りなく徴収した。どちらかといえば、ジェイドよりもフロイドの方が取り立て人としてはパワープレイで校内に名を馳せ、名を聞くだけで震え上がる者もいたが、アズールはより契約者の状況が繊細微妙な時、つまり、まだ黒か白か判別がつかずどちらへも賽子が転がりそうな時、最後の一押しとしてジェイドを投入した。秘蔵っ子のお目見えはそうするのが常であった。
     トレイはハーツラビュル寮伝統の持ち回りの当番を終え、廊下を足速に歩いていた。普段リドルが隣にいる際は身に刷り込まれた習慣で、いくらか彼の足取りはゆるりとし、隣の冠者に合わせるが、今は誰もいない。加えて今にも頭髪や鼻先に天から雨滴が落ちてきそうで、自然早まった足取りは中庭へ差し掛かった。日中生徒たちが思い思いに過ごす空間も今は薄闇となり、ぼんやりと人影が見える。トレイは心霊の類を信じていない。かと言って人の方が怖いと言うつもりもない。人との衝突を避け、感情を制御できれば、この世は生きやすいと彼は思っている。だから、トレイは見間違えたのだろうと思った。午後五時を回った頃にして辺りは滅法暗く、その中でただキラリと光る物がある。稲光ではない。深淵を覗く金色の目、ジェイドの左目。この時のトレイはまだ知る由もないが、ジェイドがユニーク魔法を使ったのである。真実の言葉をひとつだけ引き出す方法をジェイドは魔法によって手にした。トレイはこの冴えた魔法を知らない。やはり見間違いかとトレイが廊下へ靴を向けた直後、若い男の悲鳴が聞こえた。トレイは心の中でため息をついた。この血気盛んな学園で騒動は日常茶飯事とはいえ、誰の視線がなくてもトレイは足をその中心へ向けてしまう。副寮長であるために。
    「おい! 大丈夫か!」とトレイが声を上げて走り寄ると、誰かが地面へ叩きつけられたのか、男のくぐもった息遣いとうめき声が近づく。トレイが現場へ駆けつける直前、一際派手な動きがあった。暗闇の中で、他寮の乱れた制服が取っ組み合い、流転。着いてみると、そこには意外な光景が広がっていた。大柄な男のすらりと両腕両足がが芝生の上に伸びていて、その襟元を一回り小柄な獣人の学生が握っている。一見、ジャイアントキリングを成したかに見えたが、握られた拳は細かく震え、それを下から見上げる男の双眸は爛々と光っていた。どちらが恐怖しているのかわからない。トレイは組み敷かれた男のその顔、その光芒に見覚えがあると直感した。紺碧の髪に一房流された黒髪、暗がりでも目立つ特徴的な頭髪。ジェイドだ。
    「おい、お前たち何やってるんだ」とトレイは幼子の悪戯を見つけた兄の面で、両者へ向け呆れたように言った。決して威圧的な態度ではなかったはずだが、ジェイドの胸ぐらを弱々しく掴んでいた傍らの学生は我に返ったように、「俺は何もやっていない、やっていない……」と不明瞭に繰言を述べてその場から逃げ出してしまう。ジェイドは即座に追いかけようとするトレイを引き留めた。「いいんです、トレイさん。慣れていますから」
    「慣れるって……」
    「お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
     トレイから差し伸べられた手を取り、事もなげにジェイドは立ち上がった。衣服は乱れていたが、目立った外傷はないようだ。
    「痛むところはないか?」
    「はい」
     制服についた土埃を軽く叩いているジェイドを心配そうに見遣りながら、トレイはどこか心に引っかかるものがあった。先ほどのどちらが主導権を握っているのかわからなかった私闘。組み伏せられているのはジェイドなのに、まるで獲物が手に落ちるのを心待ちにする花のかんばせ。トレイの抱いた薔薇のとげのような違和感を見抜いたか、興味の外か、ジェイドはにこやかにこう告げた。「トレイさん、申し訳ないのですが、シャワーを貸していただいてもよろしいでしょうか?」
     この学園において、部活動によっては部室にシャワーが備えつけてあったが、何でもジェイドが所属している山を愛する会は部員が一名で、正式に部として承認されていない同好会の扱いであるため、野外活動を主としているにも関わらず、気軽に利用できる浴室が外になかった。このまま寮へ帰って身を清めてもいいが、ジェイドの土で汚れた制服を見て、同室のフロイドがどんな反発心を抱くか分からない。そして偶然にも、トレイの所属するサイエンス部は文化部でありながら、取り扱いの難しい薬品を扱い、魔法に有用な草花を収集するフィールドワークも主な活動に含まれていたので、例外的に部室にシャワーの併設を認められていた。サイエンス部の部室のある植物園付近なら寮へと続く鏡舎より現在地から近いし、トレイが同行してくれれば部外者であれ、利用は容易いはずだとジェイドは流暢に言った。
    「トレイ、キミは人を見ているようで見ていない節がある。ジェイドはああ見えて底の知れない男だよ」とトレイは凛とリドルから過去言い含められていたが、先ほどの荒っぽい光景が脳裏にあったのだろう。それともあの一瞬の光の鱗片に目をくらませたのか。
    「わかった。案内するよ。雨が降らないうちに」と部室への鍵を明け渡したのだった。
     サイエンス部部室のシャワールームには三つの個室があって、古びたカーテンが端にゆるくまとめられていた。防水加工の白地の布は落としきれない薬品汚れが目についた。
    「ジェイドは石鹸とか使うか? これはこの間部の後輩が開発したものなんだが泡立ちがいいぞ。こっちの丸いのは香りがいい。エルダーフラワーを使ってる」
    ジェイドが部室を検分している間にどこから持ってきたかしれない石鹸たちをひょいひょいとジェイドの手のひらに載せていく。アズールからは他の学生の魔法によって精製されたものを信用するなと言われていることなど、ジェイドはおくびにも出さず、礼を述べた。
    「いろいろな種類の効用を持った石鹸を開発されているのですね」
    「興味あるのか?」
    「ええ、僕らの寮は訳あって化粧品の開発にも力を入れていますので」
    「手広いな」トレイは話半分に聞いているような顔で、これとこれとと甲斐甲斐しく洗面用具を渡していく。
    「本当に大した怪我はしていないんだな?」
    「はい」
    「そうか、俺はこのまま帰ってもいいけど……」
    と伺うようにトレイはジェイドへ視線を向けた。ジェイドはいつものように微笑んでいた。警戒心を抱かせないような紳士的な微笑。だが、トレイはリドルに釘を刺されていたことを思い出した。この部室には精々まじないの込められた日用品や用途不明のガラクタしか置かれておらず、悪用されるとも思えないのだが。トレイは如才なく告げた。
    「そういえば、この間植えたフルーツの様子を見ておきたいんだった。戸締まりは俺がしておくから。使い終わったら先に帰ってていいぞ」
    「いいんですか。重ね重ねご面倒をおかけします」
     失せ物があったとして、誰が困るわけでもないし、あとからでもわかるだろうと踏んで、部屋の扉を開けるまでトレイは悪天候のことをすっかり忘却していた。
     トレイがシャワールームで説明を行なっている間に、雨が激しく降り出し、地面がしとどに濡れている。置き傘は一本だけ。
    「いいですよ。僕は濡れても」
    「シャワーを浴びるのにか?」
    「シャワーと雨にどのような違いが?」
     その理論でいくと雨を汚れ落としに使って貰ってもいいことになるが、トレイは口にせず、
    「いいよ。丁度この部屋を片付けたかったし、作業しながら待つよ」と苦笑した。
    「ではトレイさんの仰る通りに」
     浴室から水音が漏れ聞こえてくる。それは明らかに雨音とは異なっていた。ジェイドの長い足がカーテンの隙間から覗く。ジェイドは怪我を負っていないと言っていたが、くるぶしに少し赤みが差しているように感じられた。トレイに覗きの趣味はないが、乱闘後ということもあり、つい心配で目をやってしまうのだ。
    「ジェイド、温度の具合はどうだ?」
    「そうですね、少し温かいでしょうか」
     水を止めてジェイドは答える。石鹸を使い始めたようで、ほっとするようなハーブの香りが空気に漂う。ジェイドは片足を上げて、両手で皮膚をさすり泡で包み込むようにした。残念ながら、ボディタオルがなかったので、ジェイドは首から肩、指先、背中と優しく指を這わせて、全身を徐々に白く塗りたてていた。服を着込んでいる時には目立たない筋肉質な腹、引き締まった臀部に、細い腰、そして最後に特別な脚部。人魚であるジェイドに元来存在していなかった部位。薬を飲む間だけ魔法のように姿を変える幻の尾鰭をジェイドは殊更念入りに掌で磨いた。トレイは形だけの片付けを行いながら、シャワールームの床に泡が積もっていくのを視界の端で何とはなしに捉えていた。
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    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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