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    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

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    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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    瀬名🍭

    PROGRESS年が明けても出られない
    とじぇ続き 約束の日、リドルたちは鏡舎で落ち合い、オクタヴィネル寮へ渡った。
     オクタヴィネル寮は偉大なる海の魔女アースラの居城を模して造られた。辺り一面が海に包まれた同舎は海底に眠る遺跡のよう。寮舎と水底を繋ぐのはシードラゴンの遺骨だ。獲物に齧り付かんとあんぐりと口を開け、鋭い牙を見せつける在りし日の勇姿そのままに、背にした本殿を守らんと外界を威嚇する。ガーゴイルや東方の神使狛犬のように建築物として再現された今となっては魔除けの意図も込められているかもしれない。しかし、真なる祖グレートセブンの御代にあってはただ彼女の威光を彩る蒼樹として機能した。
     シードラゴンが気閘室(エアロック)の役割を果たし、巨大なテーブルサンゴが美しい段丘となって、最奥のパレスへと接続している。本宮の丸屋根には背びれの骨を思わせる、ほぼ垂直な棒状の彫像があった。緩やかに捩れた彫物はもとは人物を象っていたのかもしれないが、悠遠の合間に食まれて今や人の形をしていない。像の先端からは薄いベールがたなびく。リボンに似た薄膜はそのシンプルな彫刻(スカルプチュア)を中心にして下方へ発条(ばね)状に渦巻いていき、風向計の役を果たした。波間に旋風(つむじ)を起こしている。その半透明の被膜が途中で切り離されて、オクタヴィネル寮の舎屋にくるくるとまとわりつき、日が落ちると青白く発光した。
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    瀬名🍭

    PROGRESSあずーるが出るまで出られない部屋から出られない…
    続とじぇ エース達と別れ、オンボロ寮へ帰る道すがら、監督生はグリムとホリデイ前の楽しい予定について話し合った。オンボロ寮は豪奢でアバンギャルドな造りのハーツラビュル寮とは打って変わって、いつ崩壊してもおかしくないような建て付けだ。夜の室内は暗くうっそりとしてたまに隙間風が吹く。しかし、これでもこの仮宿に住み始めた頃よりは大分設備も修繕されたのだ。自寮に帰り着いた監督生は、備え付けの照明では心もとないため、机に置かれた蝋燭に火を灯した。談話室の大きな明かり取りの窓の外は暗く、高やかなカーテンが引かれてある。長年ぞんざいな扱いを受け、埃を被っていため、往時は真白だったろうカーテンはすっかり薄汚れている。日に焼けて傷んではいるが、所々に刺繍が施されており、もともとは値が張る代物なのだろう。縮れたレースが、どこかから忍び込んでくる風に揺れている。監督生はその少々寒々しい景色を素通りして、暖炉のそばに置かれたシンプルな造りの安楽椅子に腰掛けた。暖炉に薪を焼べる。乾いた楢の燃える音を聞きながら、ケイトから譲ってもらったモストロ・ラウンジの広告を広げると、思わず涎が出そうな鮭の香草焼きや大皿に載ったバカリャウなんかが目に飛び込んでくる。
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    瀬名🍭

    MAIKING誰かの結婚式で再会するとじぇが見たいなって思って妄想し始めたらりどが結婚する話になりどっちかというと脳内でふろ→りどやふろじぇになったいつもの性癖の書き出し
    Insignis blue 薔薇の王国の古い詩に、次のようなフレーズがある。

    Something old, something new,
    something borrowed, something blue,
    and a sixpence in her shoe.

     花嫁は婚礼に際し、古いもの、新しいもの、ひとつ借りたもの、青いものを用意すると幸せが訪れるという。そして、靴の中に6ペンス銀貨を忍ばせるのを忘れずに。仕事師のアズールに言わせれば、これは過去の文化がブライダル関連事業の販促キャンペーンとして持て囃されているに過ぎない。が、古き伝統を重んじる家格の秩序正しい家に生まれ、自らもその体現者となり、晴れて当主の座を継ぐリドルの目にはこれらの可憐な祈りも四つの絶対的なルールとして遵守せねばならぬ金科玉条に映った。NRCでのオーバーブロット事件を始めとして、数々の通過儀礼を経験した彼は依然母親を苦手としているものの、一廉の紳士となった今では対等に議論を交わせるような関係を構築していた。とはいえ、結婚式を目前に控え、余裕を損なわれているのか昔ながらの四角四面な少々性質が表れているらしい。
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    瀬名🍭

    PROGRESSとれじぇ 味の玉手箱やぁ〜
    とじぇ続き「ジェイドは草花が好きなんだな」
    「好き、と言いますか。愛していますね、山を」
     テーブルをセッティングしながら二人は軽口を叩いている。ジェイドは前回と同様トレイを客人として扱おうとしたが、トレイは進んで手伝いを引き受けた。薄紫のテーブルクロスの布の端に白いタッセルが並んで風に揺れている。その上にアラベスク柄を刺繍したベビーピンクのトップクロスがテーブルの天板に対し菱形になるように掛けられた。薄いピンクの布は端が雑草に埋もれそうなくらいたっぷりとした長さがあった。
     卓の中央にはジェイドがこの荒れ果てた庭園から拝借したらしき花が生けてある。ナプキンや茶器、カトラリーと見慣れた品が並ぶ中で、テーブルフラワーの横に置かれた銀の給茶器がトレイの目を引いた。本体は円錐形で上部には装飾の施された取っ手が二箇所についており、下部にはドリンクサーバーよろしく、これまた草木を象ってめかしこんだ蛇口がついている。コックのついた優勝トロフィーと言えば想像しやすいだろうか。最上部には台座のついた蓋が被せられている。台の上にティーカップを置き、保温する目的がある。この給茶器はサモワールと呼ぶのだとジェイドが教えてくれた。何でも彼は紅茶の文化に惚れ込み、多様な茶器を収集しているのだと言う。それらは普段モストロ・ラウンジの運営に役立てられている。陸に恋した人魚、というと口が過ぎるかなとトレイは胸の内だけに留めた。
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    瀬名🍭

    MAIKINGとれじぇ/途中 お題:solty lovers
     魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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    瀬名🍭

    TRAININGPlay A Love Song/まゆあか赤司らはスカイダイビングに必要な全ての資格を有していた。健全な肉体と熱に浮いた魂、約束された未来に、凍てついた戦場(カトラリー)。二人で一つの放物線。
     搭乗した航空機が規定の高さに達して、彼らは地上へ向け、飛び降りた。風を切る音が峻烈に聴覚を覆い尽くす。体が目まぐるしく数度回転するも、気絶している暇はない。ややあって体勢が安定した。まるく地平線が伸び、四方へ煙草を吹きかけたように雲海が横たわっている。彼のズボンの裾が激しくはためいているのが見えた。揃いの赤い髪が強風で逆立ち、額がつるりと日差しを反射した。頭上に日暈。あと一分もしないうちにこの気ままな自由落下(フリーフォール)は終わる。似姿と魂を等分してもなお一つだけ二者で切り分けられない物があった。早く取り交わさねばならない。上空四千メートルから時速二百キロで滑るように地表へ下降していく、この空の旅が終わる間に。だが、
    「それはアイツにくれてやるといい、僕には不要のものだ」
     彼は片目に陽光を宿して、わずかな目くばせの後、パラシュートを広げ、「お先に」と下降していった。麗かな春の午後、眼下には紺碧の大海が広がる。それはどこにもない風 793

    瀬名🍭

    TRAININGれーりつ/普通に別れてる。頭いい子が情にまみれてぐるぐるしてたら可愛いなと思った。見つけたところで終わった方がよかった気がするし若干うーん?ってなってて書き直しそうな気もするけどまあいいや彼女との結婚が決まり、一人住まいの部屋の整理をしていた時のことだ。実家を出てから物はあまり持たなくなったし、定期的に不要な荷物は捨てていたから、どこか出張にでも出掛けるようにすんなりと片付けは終わった。が、部屋を出て行く前日だったか、書棚と壁の隙間から書籍が転がり出てきた。長らくひっそりと僕の生活の影に潜み、埃をかぶっていたその本の往生際の悪さは持ち主の資質を思わせた。それは霊幻さんの私物で、「お前にやるつもりだったんだけどなー」とか本気だか冗談だかよくわからない戯言をぶつくさ言いながら、絨毯に這いつくばって隣のスチールラックやベッドと床の合間に目を凝らしていた後ろ姿を昨日のことのように、思い出すことができる。結局初めての贈り物という彼の企みは失敗に終わり、どうにもかっこつかない恋人のそんなどうしようもないところを僕は好ましく思っていた。
    「まさかこんなタイミングで現れるなんてな……」
    中身をパラパラと捲ってみると意外にも詩集だった。記憶が確かなら彼が学生時代によく読んでいたという。僕の情操教育に役立つなどと保護者顔でおどけていた様子が脳裏に甦り、僕は少し顔を顰めたがそれだけだった。僕 1522

    瀬名🍭

    TRAINING貘+ハル 最終巻バレ有り お題:愛せるなら愛してみろ永き眠りから覚めた創一が病室で耳にしたのは驚くべき知らせだった。嘘喰いの訃報。悪徳が栄える彼の地で、賭けに敗れた彼は凶弾に斃れ、司令塔を失った賭郎は今再び切間の血を必要としていると。外界に対し緩慢な反応を示す創一の意識が真に覚醒したのはこの瞬間だった。歩行は勿論のこと会話も難しいだろうという主治医の見立てを裏切り、創一の認知機能、身体機能の回復は目覚ましく、医者は舌を巻いた。退院を控えた創一の元に、黒スーツを纏った配下が厳かに集う。創一の背には死地から帰還した凄味があった。彼は悪を飲み込む巨悪として、アイデアルの資産という餌で誘き寄せた更なる邪悪を喰らうため、悪徳の蔓延るこの都市に甦ったのだ。側に控えた壮健なツーブロックの男性が花束を携えて声をかける。「お屋形様、ご退院祝いが届いております。差出人は……」
     メッセージカードには小数点以下四桁を含めた八桁の数字が印字されていた。
     当夜、創一は都内某ビルの屋上で夜風に煽られながら佇んでいた。カードの数字は緯度、経度の乗算でありこの場所を示していた。しかしながら、創一は仮に簡単な暗号が付記されていなくとも差出人の意図を理解していたし、果た 983

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    TRAININGれーりつ 「貴方はれーりつで『来世でもよろしく』をお題にして140文字SSを書いてください。」 勢いでかいたら伸びた僕が街を離れて数十年が経った。街並みは寄せ集まっては瓦解して、早送りの羽化を見るようで帰るたび知らない顔を覗かせた。その中で意外にもしぶとく相談所は居座り続け、商い主の葬儀に人々は列をなしたが肝心の霊幻さんだけが彼の人徳を示すこの光景を知らないのだった。後年数多の証言により一廉の霊能力者として名を残すのは確実だった。彼がそう望んだかは定かでないが、斎場に例の彼特有の妙な気配は感じられなかったので悔いなく成仏したのだろう。
     兄は終始気丈に振る舞っていた。霊幻さんは彼を慕う人々に囲まれ穏やかに晩年を過ごしたと聞くが、一番の友人を失った兄の胸中の悲しみはいかばかりか想像がつかない。二度と戻らない半身。柄になく熱いものが込み上げてきたので、ハンカチで目元を押さえていると、祭壇の花に囲まれるようにして中央に置かれた彼の写真に静かに微笑みを向けられた。目尻に笑い皺を深く刻んでいる。
    「俺の伝記を書いてくれないか?」いつ交わしたのか全く思い出せない台詞がふと耳に蘇る。おそらく僕がまだ十代だった頃だ。たまに兄の代理で相談所へ顔を出していた。理由はただそれだけだった。
    「イヤですよ」
    「即答だな。まあ 1724

    瀬名🍭

    TRAININGれーりつ。うっかり一ヶ月以上間が空いてたのでメモ帳で眠ってるのを引っ張り出したが当時想像したオチを忘れた。時刻は午後五時を回っていた。今日は兄さんの代理で受付に座り、簡単な案内役を務めている。指に沢山の指輪をはめ、ゆったりと腰を揺らせて歩く妙齢のご婦人、日を浴びれば消え去ってしまいそうな生っ白い肌の二、三十代、覇気のない男性、怒りを示すのがライフワークになり自らも怒気の芸術品になってしまったかのような、肩をそびやかしてやって来た中年男性、と本日のお客様の様子を、僕は手にした本に目を落としながら、時折まるでお菓子をつまむみたいに盗み見た。対応するのにやや手腕が問われると思われる客人も、依頼が終わるときには皆何かしら手応えを得た顔つきで会計を済ませていくのだから、この店の主人はなかなか上手くやっていると言えた。
    「何読んでるんだ?」
     マッサージ療法を終えた霊幻さんは肘の所まで捲り上げたシャツの袖を指でつまんで、手首まで下ろしながらこちらへ近づいて来た。僕が答える前に表紙を見て「はー」と唸る。「もうそんなの読めちゃうんだな」
    「年は関係ないですよ」
    「まぁな。出だしかっこいいよな」
     既読なんだという小さな驚きと新雪に足跡をつけられたような微妙な感情がそのまま顔に出ていたのだろう。霊幻さんはし 1032