昨日は特別な日、今日からは当たり前の日 す、と目を開けると、力強い腕に抱き締められているような気がした。いや、気がしたではなく、本当なのだ。
「れぇ、くん」
自分でも驚くほどに甘えたように呼んでしまったのは先ほどまでの出来事が原因だ。
零と、身体を重ねた。初めてのことだった。
気づけば好きだった目の前の人と気持ちが通い合って、ただの相棒だけではない、恋人という名前が追加されたのは少し前のこと。
好きな人と心が結ばれて、身体も、と思うのはごく自然のことだった。
薫にとって零は初めての人だった。
今まで恋をしたことがあったと思っていたけれど、実のところきちんと誰かを好きになったのはたぶん、零が初めてだった。
恋をして、気持ちを伝え合って、それなりの段階を踏んで、零から「薫くんを抱きたい」と言われた時、世界中の幸せが零と薫の間に凝縮されたような、そんな心地がした。
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