いつものように墓を手入れしに来ていた。
墓地に足を踏み入れれば、いつも見かける人が墓参りを終えて帰ろうとしていた。名前も知らない顔見知りに挨拶し、先祖のもとへ向かう。
水を汲んできて、荷物を降ろした。
飛んできていた葉っぱや花びらを拾う。申し訳程度に墓石を磨く。打ち水をして、新しい花と水を供える。
この墓に入った人たちのことはよく知らない。好きで世話しているわけではない。親の怪我やら親族の死やらでお鉢が回ってきただけだ。だから好物を供えるなんて気の利いたことはできないし、並べたお菓子もありあわせのもの。
線香に火をつけ、墓石に向かって手を合わせた。
この一連の流れと墓地で会う人は、私の人生に染み込みつつあった。知らないなりに彼らのことを考える時間もできた。
1878