絡む薔薇の頭冠『グレゴールへ。このメールを見たら連絡をしてほしい。ぜひ相談したいことがある』
西部センク協会のフィクサーであるムルソーは自室のPCデスクの前に座り、長いこと躊躇った後でメールを送った。
自室に一人きりだった。デスクに備え付けてある、己の姿を映し出している配信用のカメラは電源を落とされて黒いレンズを晒している。もう数日間、日課である配信を行なっていない。
カメラの前に座った時の癖で、つい髪の毛に手をやる。手入れを怠ったことのない黒髪の感触。───そして、太い棘を伴う蔓が指先に触れた。
ムルソーの目元からは、ボルドーの薔薇が一輪咲き誇っていた。花弁は一枚一枚が真っ赤に染まりきり、己を誇示するかのように毒々しい色となっている。眼窩から咲いた花を中心に、数本の太い蔓が這い出していた。
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