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    りぷでもらったお題そのよん

    杉尾「BREAKDOWNの二人の後日」

    杉尾「BREAKDOWNの二人の後日」 仕事を納め、自宅の最寄り駅へたどり着くと改札前に杉元が立っていた。去年のクリスマスに贈ったウールのコートに、今年贈ったカシミヤのマフラーを巻いて、冷気に磨かれた頬と耳だけ赤い。
    「尾形!」
     喜びを隠さない笑顔に、思わず足が止まった。夜の仕事を辞め、大学生になって三年。杉元は以前よりますます眩しくなった。
    「どうした? 目にゴミ入った?」
    「十分な睡眠とバランスの取れた食生活の重大さを噛みしめてる」
    「ん? ああ、眼精疲労? パソコン沢山使うんだもんな?」
    「はー、どうした。こんな所で」
    「どうしたって、待ってたんだよ。早く帰るって言うから一緒に買いだししようと思って」
    「そうか」
     定時で帰るとは言ったが、何時に到着するかは伝えていなかった。わざわざ外で待っていたのか。久しぶりに出会ったばかりの頃を思い出した。
     杉元は俺の手を取り歩き出した。
    「年の瀬に浸ってる暇なんてないぜ、スーパーと薬局行って、○○が始まる前に帰らないと」
    「録画してないのか」
    「忘れたんだよ。来る途中に思い出しちゃって」
     家へ向かう通りではなく、途中で折れて商店街に入る。師走の街は杉元と同じか、それ以上に眩しかった。皆、一年の終わりを迎える支度と高揚で心なしか足が速く、声も高い。
    「というか週末も買い出ししてなかったか?」
    「お前の休み結構長いだろ。二人分の飯を朝昼晩ちゃんと作ろうとしたら、一回二回じゃ済まねえんだよ」
    「そうか」
    「とりあえず今夜の夕飯は普通の作ってきたから、明日以降だな。天ぷらの具もなるべく新しいの買った方が美味そうだろ。海老とか」
     もっと簡単でいいのにと言いかけて、口を閉じた。俺の左手を握った杉元は、薬指に嵌めたリングを確かめるように撫でる。意識してやっているのではなく、これはクセだ。それだけの時間、俺たちは手を繋いでいる。
     杉元の描く幸せは暖かい部屋でありきたりなバラエティを見て、いつもより少し贅沢な食事をすることだ。叶えてやりたい。
     生鮮品と、ついでに酒のつまみを買ってスーパーを出た。俺は鞄をショルダーにして両手に二つ、杉元は三つも袋を下げている。いくら何でも買いすぎだ。
    「次はドラッグストア寄るぞ」
     数日早く冬期休暇に入った杉元はまだ体力がある。俺は昨日まで仕事を納めようと必死に残業していた。もう腰や肩に赤いランプが点滅している。
    「今日じゃなくてもいいだろ」
    「いや、絶対に買わなきゃならないやつがあって」
     杉元は気まずそうに自動ドアを潜った。思いつく緊急性の高い備品――トイレット-ペーパーを素通りし、奥へ進んでいく。立ち止まったのは、コンドームが並ぶ棚の前だった。
    「ローション、切れてるのに出掛けに気付いて……」
     そういえば先月杉元がプレイマットを購入し、風呂場で盛大にローションプレイをした。二人ともぬるぬるにまみれて組んず解れつ、最後の方は股間だけ俺の潮で粘度が薄れて性感が増し……いやいや。カップルであることを隠さなくなって久しいが、家の最寄り店舗でこの手のものを買うのはさすがに憚られる。
    「いつもどおり通販しろよ。お得意の」
     杉元は唇をとがらせ、小声で言い返した。商店街の一角にあるストアだ。広くない。そこかしこで他の客の気配がする。
    「だって、今から頼んでも最短で明日の夕方だよ。それとも今夜はやめとく?」
    「それは……」
     俺は仕事を納めるため必死に頑張った。規定通りの休日を確保するため、杉元との時間を仕事にあてたから、ローションプレイを最後にヤっていない。
    『残業大変だけど頑張って。休み入ったら外出ないで腰が砕けるまでヤりまくろうな♡』
    『うん♡』
     ベッドでの約束を支えに、帰ったら寝るだけの生活を二週間していたから、今夜出来ないとなると。
    「……外で待ってるから買って来い」
    「じゃあこれ持ってて」
     ずい、と杉元が袋を突き出した。
    「う」
     中身は醤油にだしに酒に味噌に鶏肉、根菜と、重いものばかりだ。これを持って腰をやってしまったら、最悪年明けまで起き上がれない。セックスどころかご馳走も食えなくなる。
    「やっぱり帰る?」
     杉元は杉元で『尾形が休み入るまで、オナ禁するね』と約束した。潤んだ瞳に見下ろされて、業務ですり切れた脳がじりじり焦げる。買い出しの最中、しきりにスマホのメモを参照していた。本当に外出しないつもりで、献立までしっかり組み立てて計画しているのだ。それを無下にするのは……。
     俺は考えることを放棄した。
     もういい。杉元が幸せならなんでもいい。のろのろとローションのボトルを取り、レジへ向かった。
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