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    あおと

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    あおと

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    雄英一年(体育祭以降 合宿前あたり)
    仲のよろしくないかっちゃんとデクくんに対して、お互いがどう思っているのかを何となく知る、瀬呂くん視点のお話

    #勝デク
    katsudeku

    友人Sの懐古 変、つーか、妙、つーか、拗れてる、つーか。

     正直、よくわかんねぇ。

     幼馴染みってのは後から聞いた話だったけれど、あいつらが顔見知りなのは入学初日の会話ですぐにわかった。更に数日一緒にいれば、どんな関係なのかも自ずと知れ、ついで、それが決して良好なものではないのも理解した。
     まぁ、片や勝気で態度も口も悪く、片や気弱な印象を受けながらも人当たりがよく、その性格は見事に正反対と言える。相性がいいとはお世辞にも言い難い。
     ただ、せっかく同じ学び舎でヒーローを目指す仲間になったのだ。これから先も続くであろう縁を考えれば、今のうちに仲は改善するに越したことはない。けれど、小学校、中学校と小さな集団生活を経て、子供ながらにそれなりに人との付き合い方を覚え、それでもどうしても良好な関係を築くのが難しい相手がいることも経験した。
     だから、別に皆お手手繋いで仲良くしましょうなんて言うつもりはないし、俺としては面白い奴らだと思っているから、あいつらがどれだけギスギスしてようが関係ない。それぞれと友人関係を築き上げていけばいいと思っている。
    とはいっても、一度気になってしまうとどうにも気になり続けるもので。

    「爆豪って、緑谷のこと嫌うわりにいっつも気にかけてんよな」
    「あ?」
     がやがやと賑やかしい食堂に、ほとんど独り言のように零した呟きは向かいに座る相手に正しく届いた。それまで余所を見ていた眼差しがこちらに向き直り、怪訝に眉が顰められる。
     向けられていた視線の先には爆豪が疎んじている級友--緑谷が座っていて、飯田と轟、麗日それに蛙吹と卓を囲い、談笑しながら昼メシを食っている。ちなみに俺たちは席取りを任され、注文に並んだ切島と上鳴が戻ってくるのを待っているところだ。
    「何で俺がクソデクの野郎なんざ気にかけなきゃなんねぇんだよ」
    「いや、だって、現に今だって目で追ってたじゃん」
     席が前後なのを抜きにしても、今日に限らず、何かにつけて視線を投じているのを知っている。
    「あいつがいちいち視界に入ってくるだけだわ。そう見えてんなら眼科行ってこい」
    「ほんっと口が悪いねぇ、おまえ」
     いやいや、思いっきしガン見してたじゃん。
     とは思うものの、まだ半年にも満たない短い付き合いで、こいつの自尊心がエベレスト並に高いことは理解している。わざわざ噛みつかれにいく趣味はないのであえてそれ以上はツッコまずに、俺も緑谷たちのほうへ一瞬だけ視線を投げた。体育祭以降、ぽやっとした面を見せるようになった轟を始め、基本、全員穏やかな気性だからか、心做しかあの辺りだけ空気がほんわかして見える。
    「正直さぁ、爆豪がなんでそこまで緑谷を毛嫌いしてんのかよくわかんないんだよね。気弱なンは確かにおまえとは合わねぇかもしれねぇけど、普通にいい奴じゃん」
     一心不乱にシャーペン走らせて凄まじい速さで独り言を呟いているのを初めて目の当たりにした時は圧倒されたけど、慣れてしまえばどうってことはない。俺を始め、クラスメイトの"個性"を目を輝かせながら褒めてくれるのは単純に嬉しいし、頭の回転も早く、時たま自分では思いつかなかった活用法を教えてくれたりするのは勉強になる。何より自身が努力家で、新しいことにもどんどんチャレンジしていく、見かけによらず貪欲な姿勢はむしろ好ましいと思う。
     最初は、今でこそ徐々に調整できるようになってきているみたいだが、振るえば即自損してしまうほどの超パワーが単純に羨ましくてやっかんでるのかと思ったけど、爆豪自身だって、リスクはあると本人は言うものの広範囲攻撃撃ちまくりの、欠点らしい欠点が見当たらない"強個性"だ。おまけに身体能力とセンスが抜群に高いもんだから、既にクラスでも頭ひとつ抜けたとこにいるこいつが、動作ひとつで大怪我する高リスクの他人のそれを羨むとは考えにくい。
     それに爆豪は他人の長所に気づける視野の広さを持っている。言い方こそアレなこともあるが、それを認める度量だってある。いくら仲が悪かろうと、相手の良さを受け入れられないほどガキでもないはずだ。なのに、緑谷に対してだけは極端なほど狭量となるのは何故なのか。
     緑谷も緑谷で、爆豪に対してだけは普段以上にオドオドするし。あぁ、でも、対人訓練の時はそんなことなかったな。むしろ爆豪のほうが見た感じ余裕がなかった。
    思考を横道に逸らしつつも俺の常々抱いていた疑問に、爆豪の眉間の皺が更に寄った。
    「……別に。特にねぇよ」
    「ねぇの?」
     あれだけ一方的に噛み付いておきながら、特にないはないだろうに。
    「あえてあげんなら、存在そのモンがウザくて気に食わんだけだ」
    「なんつー理不尽な……」
     存在云々なんてどうしようもないものを理由にすぐ罵られたり怒鳴られたりするのは、緑谷が気の毒過ぎる。だったら極力関わらないようにすればいいのに、わざわざ爆豪から突っかかっていく時すらあるのだから訳がわからない。
     あんまりな返答に二の句が継げずにいると、「それと」と爆豪が口を開く。
    「何を勘違いしてんのか知らねぇが」
    「?」
    「ムカついちゃいるが、俺はあいつんことを嫌ってるってひと言も言った覚えはねぇぞ」
     パチクリ、と、ひとつ、ふたつ、瞬きを繰り返す。ついで、よくよく思考を巡らせるべく顎に手を添えた。
     言われてみれば確かに。
     クソデク、クソナード、去ねや、あっちいけ、目障りだ、キメェ、などなど散々な暴言を向けてはいるが、嫌いだと明言したことはない。いや、でも、別にその言葉を使っていないってだけで態度はどこをどう切り取ってもそうとしか思えなくないか。え、爆豪的には違うのか?
    「――ンな単純なもんに括れるもんじゃねぇんだよ」
     首を傾げてこんがらがる頭を捻らせていると、正面からポソりと漏れた呟きが耳朶を掠める。けど、小さすぎてよく聞こえない。
    「ん?ごめん、なんて言った?」
    「なんも」
    「おっまたせ~!」
     ふい、と爆豪がそっぽを向いたところで陽気な声が後ろから耳に届く。振り返れば、湯気の立つ料理を載せた盆を携えた上鳴と切島がこちらへと歩いてきていた。
    「お待ちかねの昼メシ、持ってきたぜ~」
    「遅せぇ」
    「え~?混んでたんだから仕方なくない?」
     盆を机に置いて席に着いた上鳴が唇を尖らせる。「遅くなっち待って悪ぃな」と隣に座りつつ謝る切島に「うんにゃ、大丈夫。あんがとな」と返しているうちに、爆豪が手を合わせて麻婆丼を蓮華で掬う。どうでもいいけど、見てるだけで汗が吹きそうなほど、あんな真っ赤なもんをよく涼しい顔で食べれんな。
     黙々と食べ始める爆豪に続いて切島と上鳴も箸に手をつけたので、話はそこで終わりにして、俺もいただきます、と手を合わせた。

    ***

     帰路につくべく昇降口へ向かう生徒の波を縫うように、教室へと続く廊下を歩く。さっきまでは下校の一団にいたのだが、忘れ物をしたのに気がついて踵を返したのだ。
    「あった、あった」
     バカでかいドアを開いて、机の中を覗きこみ、参考書を取り出す。危ない、これがないと今日の課題ができないところだった。無事用が済み、改めて帰ろうと廊下に出たところで、遠くから二箱連なった、下から制服のズボンを履いた脚を生やしたデカいダンボールが歩いてくるものだから、一瞬だけ驚いて思わず踏み出しかけていた足が止まる。が、ダンボールの向こうから飛び出した備品に紛れて見覚えのあるくせっ毛がぴょこりと覗き、さっき教室に戻った時にでっかい黄色のリュックが残っていたのを思い出した。
    「おーい、緑谷ー」
     呼びかけるとダンボールも足を止める。予想した通り、クラスメイトがひょこりと横から顔を覗かせた。
    「あれ?瀬呂くん?まだ残ってたの?」
    「いんや、途中で今日の課題で使う参考書忘れちまってたの思い出してさ、取りに引き返してきたとこ。緑谷こそまだ帰ってなかったのかよ」
    「あぁ、うん。今日の授業で質問したいことがあったから、エクトプラズム先生のところに質問に行ってたんだ。そうしたら先生に急用ができちゃったから、代わりに準備室まで持ってきますって引き受けて」
    「なるほどねぇ」
     緑谷らしい理由だ。
     これを、と朗らかに笑って軽くダンボールを揺する緑谷の元に寄り、ひょいと上のダンボールを持ち上げる。と、目を丸くさせた緑谷がこちらを見上げた。
    「お、見た目ほど重くねぇのな。で、準備室だっけ?」
    「え?い、いいよ!僕ひとりで持てるし、帰り遅くなっちゃうよ!」
     課題あるでしょ、と手を振れない代わりに頭を振る緑谷に、それはおまえもだろ、と思わず苦笑する。
    「知っててそれじゃ、とはいかねぇよ。それに、あれじゃ視界が悪くて危ないでしょーが。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
     な、と笑いかけてやれば、申し訳ない顔をしていた緑谷だったけれどもややあって眦を下げた。
    「うん、ありがとう瀬呂くん」
    「いいって、いいって」
     それじゃ行くか、と広い廊下を並んで歩き出す。

    「そういや、おまえらって昔からああなの?」
    「おまえら?」
     今日の授業のことや昼休みの話などなど、他愛ない雑談を交わしている途中でふと昼間のやり取りを思い出して問いかければ、緑谷が首を捻る。爆豪、と続けると、あぁ、と微苦笑を零した。
    「う~ん、小学校あがる前くらいからかなぁ。もう少し小さかった頃そうでもなかったんだよ」
    「そうなん?」
    「うん、一緒に虫取りとかボール蹴りとかしたし。って言っても、僕がかっちゃんの後ろにひっついてたって感じだけど」
     かっちゃん昔からなんでもできたんだよ、と和やかに話す緑谷の様子は何かにつけては睨まれ、散々暴言を吐かれ、威嚇しまくってくる相手のことを話しているようには見えない。ので、つい、「意外だな」と口から零れ落ちた。
    「意外?」
    「や、気ぃ悪くさせたら悪ぃんだけど、あんだけ毎日のように罵倒されまくってたら普通嫌になりそうなのにそうでもなさそうだなって思って」
     素直にそう話したら、緑谷がきょとり、と目を瞬かす。不思議そうにこちらを見あげてくるものだから、何か変なことを言っただろうかと逆にこっちが不安になってくる。
    「緑谷?」
    「へ?あ、あぁ、ごめん!びっくりしちゃって。でも、うん、普通そうだよね」
    よいしょ、と緑谷がダンボールを持ち直す。
    「かっちゃんのこと確かに嫌な奴だなって思うことはあるよ?すぐ馬鹿にするし怒鳴るし、中学の頃なんか気に入らないとしょっちゅう爆破してきたし」
    おぉ、思ってたよりズケズケ言う。
    「でも、いつも自信に溢れてて"個性"も凄くて、僕にはないものをたくさん持ってるかっちゃんは本当に昔からかっこよくてさ」
    前を見据える双眸が眩しそうに細められた。
    「オールマイトとは違った意味でずっと僕の憧れなんだ。だから、前にするとついビビっちゃうけど、かっちゃんのこと、嫌いだなんて思ったことは一度もないよ」
     普通はおかしいのかもしれないけどね、と自嘲気味に笑う緑谷を見て、昼間の爆豪の言葉が脳裏を過ぎる。それと同時に、何となく。本当に何となくだけど、腑に落ちた。気がする。
     性格は真反対で、傍目からしたら仲の悪さばかりが目立つ。けれども、互いへ向ける感情はどうも、そう悪いものばかりでもないようだ。むしろ、
    「実は案外良かったりするのかもな」
     もしかしてお互い腹の内を素直に言いあえりゃ結構すぐに仲が改善されるんじゃ。でも、それができてればここまで雁字搦めの、ややこしいことになってないか。
     思ってた以上に難儀な奴らだなぁ、ホント。
    「え?」
    「いんや、こっちの話」
     気にすんな、とひらりと手を振れば、首を傾げていた緑谷だったけれど、唐突に、あ!と声をあげる。
    「せ、瀬呂くん、さっきのかっちゃんには言わないでね。知ったら絶対キモいって怒るから」
    「言わねぇ言わねぇ」
     爆豪だって憧れられて嫌がるわけはないと思いながらも笑って頷くと、ホッと緑谷が肩を下げる。
    「それよか、明日数学教えてくんね?わかんないとこがあってさ」
    「勿論、僕でよければ」
    「ありがとな、助かるわ」
     と、完全下校前を告げるチャイムが鳴り響く。しまった、ダラダラ喋ってるうちにいつの間にか足が止まってた。
    「やべぇ、急ぐか」
    「うん」
     駆けたい気持ちはあったが、廊下を走ってはいけない、とここにいない委員長が脳内で注意してくる。まぁ、危ないしな、と少し歩調を早めるにとどまれば、同じく歩く速度をあげた緑谷と先を急いだ。

    ***

    「――なーんてこともあったなぁ、そういや」
     懐かしいねぇ、と独りごち、くるりと手に持つ往復はがきを回す。宛名には頼もしい同僚であり、元級友たちの名前が連なっていて、内容は結婚式への招待だ。
     お互い歩み寄れば多少なりとも仲は悪くなくなるんじゃとは確かにあの時思ったが、いやはや、まさか生涯の伴侶に互いを選ぶまで改善されるとは。
     正直、多少なりとも驚いてはいるけども、同時に納得してもいる。謹慎以降なんだかんだで喧嘩腰のやり取りは減り、切磋琢磨し合うようになって、共にヒーロー活動をすれば阿吽の呼吸で敵を検挙していく。今やこれ以上最高のバディはないと世間では謳われているくらいだ。そこに私生活もが含まれて、これから先の人生、公私共に並び立って歩いていくって話なだけで、ガキの頃から縁続きの二人からしたらなんら今までと変わらないんだろう。俺からしても、ぶっちゃけ隣り合っていないあいつらなんて今更想像し難い。
     しかし、まぁ、入学当時のあいつらのままだったらまさかこんなことになるとは思いもしなかったろうな、とくつくつと肩を揺らす。
    「人生どうなるかわからねぇもんだよなぁ」
     さてさて、ともあれ大事なダチ二人の門出だ。
     思いっきり祝ってやるかね、と、出席の欄をぐるりと丸で囲んだのだった。



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    あおと

    DOODLEプロヒかっちゃんと大学生デクくん
    飲み会で酔っぱらったデクくんを迎えに行って、ポロりと零された本音の一端を知るかっちゃん
    (出したいなぁ、と書いている原稿の一部より)
     書き終えた報告書を送信し、ノートパソコンを閉じる。少しばかり凝った首を解しながら、どれだけ却下しようともこれは絶対に掛けたいんだと出久が断固として譲らず結局俺が折れたオールマイトモデルの掛け時計へと視線を向ければ、針が間もなく二十二時を示そうとしているのを認めて、眉間に皺を寄せた。

     遅せぇ。

     学部の飲み会だとは聞いている。だが今朝出ていく際、「始まる時間は早いから、二十一時までには帰ってくるよ」と宣言していったはずだ。
     一時間オーバーしてんぞ、おい。
     机の脇に放置していたスマホにも連絡は来ていない。別に自分だって、仕事が長引いて帰りが遅くなることはままある。野郎の帰りが遅いくらい、いちいち気にする必要なんざ本当なら全くないが、ひとりにするとふらりといなくなる前科があるだけに、こと出久に関しては放置し難い。かといってGPSまでは流石にやり過ぎだろうと思い、代わりにお互い仕事であれバイトであれ、予定よりも帰宅が遅れる場合は必ず連絡を入れるよう、同居時のルールのひとつとして設けたのだ。誰の為に決めたルールなのか知ってか知らずか、かっちゃんって意外とそういうところ厳しいよね、なんて呑気かつ無礼な発言をしながらもあいつだってこれまで律儀に守り通してきた。
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