山奥の秘湯にて額に浮かんだ汗をタオルで拭った。
自然豊かな山道を歩くこと二時間弱。
日頃運動不足の体はあちこち悲鳴を上げていた。
「着いたよ」
息一つ切らしていない彼の言葉にのろのろと顔を上げる。
そこには古びた木造の温泉宿があった。
「付き合わせちゃって悪いね。結構歩いたから疲れただろう?」
脱衣所にて隣で服を脱ぐ彼を見やる。
笑うとくしゃっと顔のパーツが下がり、童顔が際立つ。
しかし、そこにはしっかりと年数を重ねたしわが刻まれており、
それも彼の魅力を引き立てていた。
「いえ、行きたいと言ったのは自分なので。それにしてもよくこんな場所ご存じで」
「前に知り合いに教えてもらったんだけど忙しくて行く機会がなかったんだ」
のろのろとシャツのボタンを外すアオキの横で
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