ドローゲーム「ええそれでは。次回のミーティング日程は改めてご連絡させて頂きます。」
爽やかな青年実業家七種茨は深々と頭を垂れ、クライアントの乗り込むタクシーを見送った。
エンジン音が遠のくと、茨は安堵のため息を付き、首元のネクタイを無造作に緩めた。本日の一大イベントを終え、後は凪砂の待つ自宅に帰るだけ。タクシーへ向かおうとした折、こじんまりとした洋菓子屋が目に入った。
以前、凪砂と訪れた店だった。日々樹氏からの勧めと凪砂は期待を頬を色づかせ、茨を同行させた(猊下のお気に入りだという)。
流石猊下の御用達、期待を越える名店だと茨も記憶に残っていた。
磨き込まれたガラスケースの中にピスタチオケーキ、アップルパイ、カスタードプリン。凪砂のお気に入りは言わずもがな、ダークチョコレートでコーティングされた黒い宝石だった。
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