拾い食いの恐ろしさ出かける、と部屋の主が出ていき、かれこれ数時間が経とうとしている。アダムはこれをいいことに部屋を抜け出しホテルの散策に出た。
エクスターミネーションで無惨な死を遂げた後、アダムは天国に舞い戻ることなく、神から見放されて地獄の民へと生まれ変わった。天使の象徴である輪を失い、幸いにも羽まで手放すことはなかったが、生前の物に比べそれは小さくなってしまい、本来持っていた能力をフルパワーで発揮することができなくなっていた。
その状態で地獄の街路を進むとなると、皆異質な目でこちらを見てきた。何を言いたいかは分かる。これまでエクスターミネーションの最前にいた奴のことなんて、皆忘れるはずもなく、恨みで汚れた目をあちこちから向けられた。急に路地裏に連れられ身体中に青痣を作ったこともあった。天国の飯と比べ地獄の飯は泥飯に見え、食欲は湧かず、何も食べないまま途方に暮れていた。
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